医学部附属病院第2内科不整脈班が、山口県初の「皮下植込み型除細動器植込み術」を実施
本学医学部附属病院の第二内科不整脈班は、平成28年3月1日(火)に山口県初となる「皮下植込み型除細動器植込み術」を行いました。
新しい皮下植込み型除細動器(以下「新除細動器」という。)の植込み術は、平成28年2月1日(月)より厚労省の認可を得て、日本不整脈心電学会が認定した全国の39施設で実施が可能となった施術で、現在までに、19施設において実施されています。本学医学部附属病院での施術は、中国四国地方では岡山大学に続いて2施設目、山口県内では初となります。
「植込み型除細動器」は、致死性頻脈性不整脈(心室細動・心室頻拍)が発生したときに、除細動器が察知して自動的に除細動を行うことにより、正常な脈に戻す装置で、平成8年より我が国でも植え込まれるようになりましたが、これまでの除細動器は、電極リードを血管内に挿入する施術であったため、重篤な感染や手術でのリスクがあることが課題となっていました。リードから感染が起こった場合には、全身感染の予防、または治療をするために、外科的に開胸してリードを抜去する必要がありました。また、断線が起こった場合には、新たにリードを追加して血管内に何本ものリードを挿入していました。
今回の新除細動器は、電極リードを血管内に挿入せずに、皮下に留置する施術のため、全身感染のリスクは抑えられ、リード断線があっても、比較的簡単な外科的処置で交換が可能です。従って、生涯に渡りリードを長く留置する必要がある若年者にはメリットが大きいと思われます。また、血管内にリードという異物を入れないため、従来の施術より低侵襲であり「植込み」に対する患者さんの抵抗も少ないと思われます。ただし、この新除細動器は、すべての患者に適合するわけではないため、適合の有無を術前に確認する必要があります。
本学医学部附属病院で行ったこの度の手術は、上山剛講師(第2内科)執刀のもと、大野誠診療助教(第2内科)、鈴木亮助教(第1外科)及び藤田陽診療助教(第1外科)による補助並びに指導のために来訪した米国の医師の協力を得て、ハイブリッド手術室(手術台と心・血管X線撮影装置を組み合わせた手術室)において行われました。
患者は、ブルガダ症候群(ぽっくり病などといわれ、心室細動により突然死を起こす病気)の30代男性で、心電図で本疾患と診断され、失神歴・家族歴があることから突然死予防のために新除細動器の植込み術を希望されました。手術は1時間半程度で無事に終了しましたが、施術の最後に人工的に心室細動を起こし、新除細動器が自動的に感知、除細動して正常の脈に戻すことを確認しました。術後の経過も良好です。
この新除細動器が適正に使われることによって、より多くの患者の突然死を予防できることが期待されます。