固形がんに対して極めて治療効果の高い免疫機能調整型次世代キメラ抗原受容体発現T細胞『Prime CAR-T細胞』の開発
山口大学大学院・医学系研究科免疫学講座の玉田耕治教授らの研究グループは、免疫機能をコントロールする能力を付与した次世代CAR-T細胞(Prime CAR-T細胞)の開発に取り組んでおり、今回の研究では、IL-7と呼ばれるサイトカインとCCL19と呼ばれるケモカインの両方を同時に産生する能力を有するCAR-T細胞を新規に開発しました。
キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法は、がん免疫療法のブレイクスルーの一つとして近年高い注目を集めていますが、血液がんには著明な治療効果を発揮する一方で、がんの多くを占める固形がんに対しては効果が乏しいなどの課題が残っています。
Prime CAR-T細胞は、従来のCAR-T細胞では効果の得られなかったマウス固形がんモデルに対して強力な治療効果を発揮し、この治療効果は投与したCAR-T細胞のみならず、投与を受けた宿主側の免疫細胞も協調して作用していることや、がんに対する長期の再発予防効果を誘導できることも明らかになりました。
従来のCAR-T細胞はがん細胞を直接殺す機能ばかりに注目が集まっていましたが、今回のPrime CAR-T細胞技術は、生体にもともと備わっている免疫機能をコントロールする分子の「デリバリーシステム」としての役割も担っており、これまでのCAR-T細胞の概念を大きく変えるパラダイムシフトと言えます。
Prime CAR-T細胞技術は、CAR-T細胞療法の適応範囲を大きく拡大させ、画期的な固形がん治療法につながることが期待されます。
この研究成果は『Nature Biotechnology』(IF=41.667 (2016))に3月5日付でオンライン掲載されました(doi:10.1038/nbt.4086 )。