先端がん治療開発学(消化器・腫瘍外科学関連共同研究講座)
先端がん治療開発学(消化器・腫瘍外科学関連共同研究講座)

教授名 | 硲 彰一 |
講座メンバー | 硲 彰一,徳光幸生,中上裕有樹 消化器・腫瘍外科学兼任:恒富亮一, 徐 明 共同研究員(東洋鋼鈑株式会社):大場光芳,平山幸一 高光恵美,永田伊知郎,吉村 翠 |
医学科担当科目 | 臨床腫瘍学「生物学的療法」 |
居室 | 総合研究棟(医明館)7階 |
TEL | 0836-85-3186 |
FAX | 0836-85-3187 |
cancertm@yamaguchi-u.ac.jp |
講座の紹介
本講座は2016年4月に東洋鋼鈑株式会社と日本電気株式会社の寄付により、消化器・腫瘍外科学関連寄付講座として山口大学医学部に設置されました。また、2019年4月からは東洋鋼鈑株式会社、サイトリミック株式会社並びに日本電気株式会社との共同研究講座となりました。本講座では、直接患者さんの診断・治療に役立つシーズを育て、がん個別化医療、がん複合免疫療法、がん再生細胞療法、新規がん免疫薬剤等の開発を行うことを目的としています。
臨床的観点寄りの研究を推進するため、大学院医学系研究科消化器・腫瘍外科学など臨床分野の講座との連携、さらにトランスレーショナル研究を推進するため、基礎医学講座並びに創成科学研究科とも連携して研究を進めてまいりました。豊富な臨床検体と臨床情報を背景に、基礎的に深化させたトランスレーショナル研究の中心的役割を担い、山口大学における先端がん治療開発の拠点となることを目標に努力いたします。
主な研究内容
(1)世界的に望まれている個別化医療を実現するために、薬剤の効果や毒性予測に有用なマーカー遺伝子を搭載した体外診断用医薬品を新たに開発・製造し、山口県から世界に販売することで、個々の患者の薬効予測や副作用予測を可能にし、最も有用で副作用のない治療を提供します。すでに東洋鋼鈑株式会社との共同研究により、「DNAチップキットUGT1A1」が2016年12月12日に製造販売承認、2017年9月に保険適用・検査料収載されています(図1)。新しいシーズを探索するため、次世代シーケンサーにより全ゲノム解析を行い、さらに多検体にてvalidationを行い、薬効又は副作用発現の違いを規定する遺伝子多型や遺伝子変異リストを作成し、創成科学研究科との共同研究で遺伝子マーカーもしくは診断・判定アルゴリズムとして特許化し、東洋鋼鈑株式会社の有するDNAチップ体外診断薬技術によって産業化を目指します。
(2)本邦のがん死亡総数は増加の一途であり早急な対策が必要です。我々はペプチドワクチン療法の効果を予測するバイオマーカーの探索・同定と新たな複合癌免疫療法を開発してきました。また癌局所の微小環境では宿主要因と癌細胞の相互作用により様々な免疫抑制性機構が構築されていますが、これを解除して免疫療法の有効性を飛躍的に高めることが可能です。本講座では消化器・腫瘍外科学講座、免疫学講座などと連携して、豊富な臨床情報と検体の解析から負の免疫機構の解析を進めると共に、山口大学が有するシーズを臨床応用するためのトランスレーショナルリサーチを進め、臨床的に医師主導試験の構築を行います。さらに、日本電気株式会社の最新のエピトープペプチド探索技術を用いてマルチHLA(HLA-A*2402, -A*0201, -A*0206)結合性ペプチドの同定を行い、産学連携により新薬の創出を目指します。
すでに特定臨床研究としてYNP01 試験「進行・再発固形癌に対するHSP70由来ペプチド+GPC3由来ペプチド+IMP321+Hiltonolの複合免疫療法としての第I相臨床試験」を行い、有望な結果を得ています(図2: 2017ASCO、2018SITC発表ポスター)。現在はYCP02試験「根治切除可能肝細胞癌(HCC)に対する周術期補助療法としてのHSP70由来ペプチド+GPC3由来ペプチド+IMP321+Hiltonolを用いた複合免疫療法の第I相臨床試験」を行っており、ステージⅡからⅣaの患者さんを対象としています(図3)。


