山口大学農学部 農学部

本学への寄付

月刊農学部長 第20-32号(2020年4月-2021年3月)

月刊農学部長 第20-33号(2020年4月-2021年3月)

月刊農学部長 第32号(2021年3月)

 

2月 論文審査発表会

 この時期の農学部のメイン行事は、博士、修士および学士の学位に関する発表審査会です。それぞれ、3名、33名および102名の学生さんたちが登壇しました。今年は会場での密集を避けるために、入室者の人数制限を行い、遠隔配信も併用する形式が採用されました(写真)。最近の学生さんはパワーポイントの扱いにも慣れていて、人前で話すのが苦手な学生さんはかなり少数派になったように思います。それでも、質疑応答になると途端にトーンダウンする学生さんはしばしば見られます。そこは本人の勉強量が直接反映される部分ですから、「調べていません」とか「わかりません」で済ませてしまった学生さんは大いに反省をしてください。近い将来、仕事で同様な場面に直面したら、発表の背景から質疑応答まで全責任が取れるようにしっかりと準備をして臨んでください。

 さて、昨年度は急遽中止となった卒業式と入学式ですが、今年度は午前午後分割および無観客(WEB配信)形式で実施されることが決まりました。応援団の演舞や吹奏楽の演奏など、大学らしいハイクオリティーの演出が無いのは寂しいところですが、コンパクトな式典となる予定です。私は、初めて壇上から見ることになりますので、ちょっと楽しみです。

 

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月刊農学部長 第31号(2021年2月)

 

1月 静かなキャンパス

 例年、年明けから2月末まで、キャンパスはとても静かな雰囲気になります。それは、色彩豊かな花も咲かず、にぎやかにさえずる鳥も少なくなるなど、生物界全体が不活動になることが一因です。また、大学特有の事情として、後期の定期試験、大学共通テスト(昨年までは大学センター入試)・前期個別試験等、様々な試験が行われることも影響しているかもしれません。特に今年は、コロナウィルス感染拡大防止のために、賑やかなことはほとんど自粛対象になっており、一層サイレントな感じが漂っています。1月9日(金)は、記録的な低温で日中も雪が溶けず、まさにそんな静かな一日でした(写真1:農学部中庭)。

 そんな中、農学部の4年生および修士2年生の学生さんたちは、2月中旬の締め切りに向け、卒業論文および修士論文の作成に追われています(写真2)。手を動かして実験しているときは何かしらの進歩が目に見えるのですが、文章を書くという作業は全く前進しない時間を何回も経験することになります。これは、指導する側の先生たちも同じで、みんな過去に何度も苦しい思いをしてきました。動画・画像が氾濫していて、表面的な理解が感覚的にできてしまうこの時代に物事を深く理解するためには、文章にまとめる作業が最も効果的だと思われます。人工知能(AI)は画像や音声データを処理するのはかなり得意で、すでにヒトを超えているかもしれませんが、言葉や文字を理解して創造的文章を自作する作業には今なお苦戦しています。これは、文章にまとめるということが、最も頭を使う作業であることの証明かもしれません。非常につらい作業ですが、是非、就職前に自分の言語中枢をフル活動させて、AIに勝る本当の人間らしい力を少しでも高めてください。社会人になったとき、間違いなく役に立つ能力です。

 

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月刊農学部長 第30号(2021年1月)

 

12月 クリスマスツリーと門松(with はぎのさぎり)

 COVID-19に振り回された1年が終わろうとしています。思えば、昨冬に感染拡大が始まったころはまだまだ呑気なもので、学務委員長としてタイのカセサート大学に海外出張にも行きました。春になり、卒業式と入学式が中止になった時にはさすがにただ事ではないと感じましたが、「ゴールデンウィークまでには気温も上がって、紫外線がやっつけてくれるかも」と楽観視していました。夏に第2波が来た時には、ちょっと長期戦は覚悟したものの、今年中には収まるだろうと思っていました。結局、農学部の少人数クラス(60人以下)は3密を回避しながら対面授業ができましたが、100名以上の共通教育等は遠隔のまま年末を迎えています。そんな中、ゼミ活動(卒論・修論の研究)および就職活動には、それほど大きな影響がなかったことは幸いでした。就職活動に関しては、面接等が遠隔になり、ムダな移動費を使うことなく助かったという声も聞かれました。今後、地方大学の学生にとっては、むしろありがたいシステムとなるかもしれません。

 最後に、山口大学正門のクリスマスツリーと卓上門松(背景は附属農場の見島牛:はぎのさぎり君)の写真を掲載しておきます。来年が穏やかな1年となりますように祈念しながら、月間農学部長2020を終了したいと思います。ありがとうございました。2021年もよろしくお付き合いください。

 

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月刊農学部長 第29号(2020年12月)

 

11月 キャンパス内の並木と石碑

 総合移転から50年たった吉田キャンパスには見事な大木がたくさんあり、並木と呼べる木々も何か所かあります。最も長いのが農学部本館から東門に向かって伸びるまっすぐな道路沿いの楓(カエデ)並木でしょう。200m以上の直線に楓の木が約5m間隔で43本並んでいます(写真1)。農学部周辺には欅(ケヤキ)、コブシなど黄色から赤茶色の紅葉樹が点在していて、この季節なかなかの景観です。

 

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 この楓並木に本数では負けていないのが農場周辺のメタセコイアです。防風林として植えられたようで、狭い間隔で30本ほどが立ち並ぶ場所が3か所(農場・牧場周辺、果樹園内部)あります(合計100本以上)。頻繁に刈り込まれているのであまり大きくありませんが、本来は、正門を入って真っ先に目に入る3本の巨木のように高さ25mぐらいまで成長する木です(写真2)。この3本のうち1本は、20年ほど前に強風(雷だったかも)によって、半分ぐらいの高さで折れてしまいましたが、その後2本の側枝が垂直方向に成長して、今ではほとんどそん色のない三角錐形になっています。

 この3本のメタセコイアは、たぶんキャンパス内で一番高い木なので、多くの山大関係者が認識していると思うのですが、その根元にある石碑に気づいている人はどのくらいいるでしょうか?実はこの石碑は40年以上前に息子さんを交通事故で亡くされたご遺族の方が設置されたものです。かつて構内の車両規制がなかったころ、バイクに乗っていた学生さんが、学外者の車とこの交差点で衝突して、命を落としてしまいました。その学生さんは農学部・農芸化学科(現生物機能科学科)の所属だったと聞いています。

 皆さん、これから気ぜわしい季節になりますが、この3本のメタセコイアが目に入ったら、石碑のことを思い出して、「安全運転に努めよう」と気を引き締めてください。それが遺族の方の思いに応え、この石碑の意義を高めることになると思います。よろしくお願いします。

 

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月刊農学部長 第28号(2020年11月)

 

10月 キャンパスの甘く切ない香り

 この季節、キャンパスのあちらこちらからキンモクセイ(金木犀)の甘い香りがします。週末にジョギングしながら数えてみたのですが、大小合わせて50本ぐらいはありました。その中で最も大きいのは、農学部と中高温微生物研究センターの間にある高さ8m、幅5mぐらいの木でしょう(写真1)。東から風が吹いているときは、30mぐらい離れた図書館駐輪場にも香りが届きます。漢字を見て気になるのは、サイ(犀)という字が入っていることです。直感的に花弁の形がサイの頭部みたいだからと思ったのですが、ネットで調べると「幹の色と模様がサイの皮膚に似ていることに由来」と説明がありました。中国起源の植物のようですが、あまり納得できません(写真1右下参照)。もっと合点がいかないのは、日本には雄株しかなくてすべて挿し木で増やしているという事実です。そうすると、受粉を媒介する虫を誘引するための甘い香りは、いったい何のためなのでしょう。甘さの中にちょっと切なさも感じてしまいました。

 

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 農学部では、後期になってほぼすべての授業が対面形式で行われています。写真2は私が担当する講義の風景です。窓と入口が開放されていること,前2列が空いていること,席が一つ置きであること,皆がマスクをしていることなどがいつもと違いますが、かなり通常の授業風景に近づいてきました。このまま感染者が発生することなく、コロナ騒動が収束することを願っています。

 

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 10月31日(土)は毎年恒例の山口大学Home Coming Dayです。今年はオンライン開催“あっとホームカミングデー”となっており、大学トップページから入ることができます。農学部では10コンテンツをオンデマンド配信しています。オープンキャンパスで公開したコンテンツもありますので、OB・OGのみならず、受験生およびその関係者の皆様もぜひ訪問してみてください。

 

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月刊農学部長 第27号(2020年10月)

 

9月 キャンパス内の木の実

キャンパス内で多くの野鳥が見られる理由の一つに、彼らの食料が豊富であることも挙げられるでしょう。その中には我々が食べても結構おいしい物もあります。例えば、初夏の野イチゴ(共育の丘)、桑の実(農学部中庭)、グミ(農場周辺)などです。これらの食べ物は、小さいころ山の中でおやつ替わりに食べていた記憶があり、おいしいというより懐かしさを楽しんでいます。また、においが強烈であまり拾う人もいませんが、正門駐車場付近には銀杏もたくさん落ちています(写真1)。

この季節、私の一押しは、キャンパス内ではありませんが、椹野川沿いにある“オニ胡桃(クルミ)”です。上流の宮野湖から下流の小郡まで約20kmの中に50本ぐらいはクルミの木が点在しています。中には中州にあり近寄ることもできない木もありますが、多くは川の側道沿いにあり(写真2)、簡単に実を採ることができます。市販の胡桃(ペルシャグルミ系)とはちょっと種類が違うので硬くて中身を取り出しにくいのですが、外側の果皮を剥いだ後(写真3左)、堅果を電子レンジで1-2分加熱すると割れ目ができ、そこから細いフォーク等を入れて割ると(写真3中)実(子葉)が取り出せます。この実が加熱することにより独特の風味を出し、“香ばしい”そして食感のいい食べ物になります(写真3右)。縄文時代以降の遺跡には堅果が多数出土されるそうで、保存性に優れ栄養価の高い食材としてたいへん重宝されたようです。手間をかけた割には、ちょっとしか実がないのが残念ですが、ぜひ一度試してみてください。

 

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10月1日からは、後期授業が始まります。幸い、農学部は1学科50人前後と小規模なので、ほとんどの講義が対面形式で展開されます。三密回避、手指の消毒、マスク着用など細心の注意を払いながら、教職員と学生さんが一体となって、普通の大学生活を取り戻す予定です。

 

 

 

 

月刊農学部長 第26号(2020年9月)

 

8月 キャンパスの野鳥(その2)とオープンキャンパス

 前回に続いて、キャンパス内で観察できる鳥の運動学です。鳥はもちろん飛ぶことができる点が最大の特徴ですが、中にはうまく飛べない鳥もいます。身近なところではニワトリ、動物園の常連であるダチョウなどが該当します。その他、南アフリカに出張した時にホテル周辺の野原を走り回っていて驚いたのですが、ホロホロ鳥なども飛ぶのは苦手なようです。彼らの共通点は、体重が重くて羽が短いことで、体を浮かすための浮力を自力で得ることが困難です。代わりに、大腿部(もも肉)が発達していて、走るのが得意です。ダチョウは時速70kmの記録があるようですし、ホロホロ鳥も時速30kmぐらいでは走っているように見えました(左下写真)。

 そこまで速くはないですが、キャンパス内の野鳥で一番走るのが得意なのは、たぶんハクセキレイです(右下写真)。ニワトリやダチョウと違って、飛ぶのも普通に得意ですが、とにかく走行時のピッチが速い。ビデオ撮影してカウントしてみると1秒間に17歩ぐらいはピッチを刻みますので、ヨチヨチ・ピョンピョンと歩く他の鳥とはだいぶ様子が違います。見通しのいい平らな場所が好みのようで、かつては水辺の鳥だったようですが、今では人間社会に適応して駐車場の鳥として有名です。実測値が他にはないので適当な推論ですが、小鳥の中では最速のスプリンターかもしれません。

 

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 8/30(日)はオープンキャンパスでしたが、こちらもオンラインです(写真2:ZOOM画面)。ビデオによる学部・学科紹介や、デモ講義・実験、授業ライブなど様々なコンテンツがありました。生物機能科学科の責任者である片岡先生(写真中央)は「どれぐらいの視聴者がいるのか、例年のオープンキャンパスに比べて反響はどうなのかなど、興味深い試みです」とコメントされていました。でも、やっぱり直接生徒さんたちに会いたいなーと言うのが我々の本音です。参加してくれた高校生の皆さんありがとうございました。近い将来、山大・農学部で会えることを楽しみにしています。

 

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月刊農学部長 第25号(2020年8月)

 

7月 キャンパスの野鳥&前期試験

 キャンパス内で常に見ることができる野鳥もたくさんいます。カラス、鳩、雀、ツバメなどはもちろんですが、農学部周辺の木々には、ムクドリとヒヨドリがしょっちゅう群れをなして留まっています。そんな中、私のおすすめはモズです。この写真は農学部北側の木立で撮りました。丸っこいかわいい頭の小鳥ですが、実は最も身近な猛禽類です。確かに口ばしと目つきには、鷹的な鋭さを感じます。また、見ることはできなくても耳を澄ませは確実に近くにいることがわかるのが、ウグイス、ホトトギス、キツツキなどです。この季節、毎朝のようにホトトギスの鳴き声が理学部の方向から聞こえ、歩いて探しに行きましたが、全く発見できませんでした。

 一方、ちょっと散歩して農場周辺に行くと、シラサギ、アオサギはかなりの確率で見ることができます。とても用心深いので、10mぐらいまで近寄ると、たいてい飛び立ちます。この飛び立つ瞬間が、生体力学的には興味深いと感じます。重たい飛行機が飛び立つのは、時速300km近い水平スピードで大きな揚力を得るからと理解できますし、数グラムしかない蝶が風の力を利用して舞い上がるのも納得がいきます。しかし、体重数kgはありそうな大きな鳥がほぼ無風状態の中で、ほぼ垂直に飛び立つのはとてもハイパワーな出力が必要だと思われます。せわしく羽を動かして浮力を得ているのは確かですが、最初の一瞬は相当な脚力が必要だろうと思われます。脚の先端は細くて棒のようですが、体幹に近いところは、体重の割には結構大きな筋肉があるのでしょう。20年ほど前に獣医の先生に頼まれて、鳩の大胸筋を調べたことがありますが、ハイパワーの出力を有する特定の筋細胞がとても肥大しているのに驚きました。

 今から1~2億年ほど前の化石から、キリンほどの体高があり、体重が200kg以上もある翼竜がいたことがわかっているようですが、どうやって飛び立ったのでしょうか。化石から復元された大型翼竜は、首が長くて体幹の後方に羽が位置する形態のようですから、このシラサギの体型と飛び方が参考になるような気がしています。

 

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 7月末になり、対面の試験もはじまりました。例年以上に、しゃべらない、間隔を空けて座る、終わったらサッサと帰るなどの注意事項を遵守しながら、試験が行われています。この日、3年生に対する「土壌微生物学」の試験を実施した横山先生は、「テストがいつものように対面でできてホッとしています。後期は対面講義ができるといいのですが、、、」と感想を述べられました。この他、オンラインでの試験も行われています。いつも以上に、静かなテスト週間です。

 

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月刊農学部長 第24号(2020年7月)

 

6月29日 キャンパスの花&学生実験

4月初めの「月刊農学部長」で、キャンパス内の桜が満開であることを紹介しました。その後、正門周辺の里桜、つつじなど続々と開花しましたが、多くはピンク系の華やかな色調でした。現在は、藤、桐、花菖蒲、アジサイなどブルー系の花がたくさん咲いています。

花菖蒲は、ちょっと目立たない場所ですが、正門を入って右手にある「長州五傑記念碑」のある小さな公園の池にたくさん咲いています(写真1上)。私のおすすめは、さらに地味ですが、農学部付属農場の桐の花です(写真1中央)。桐は高級タンスの材料として有名ですが、セサミン、タンニンなどの成分が含まれていて抗菌性に優れていること、多孔質(ミクロの小部屋が多数存在)で、保温効果が大きく、吸湿性が高いなど多くの要因があるそうです。まだまだタンスになるほどの巨木ではありませんが、牧場周辺に3本の桐の木がひっそりと立っていて、6月初旬まで淡い紫の花が咲いていました。色と形は藤の花と似ていますが、花が垂れ下がって咲く藤(写真1下)と異なり、桐は花を上向きに伸ばして咲かせます。ちょっとWebで調べてみると、桐は鳳凰の止まる木として古代中国で神聖視されていたことに倣って、桐の花紋は日本でも菊紋章に次ぐ格式のある紋とされ、足利尊氏や豊臣秀吉の頃から「政権担当者の紋章」という認識が定着したと記載されていました。確かに、尾の長い鳥が止まるには、葉っぱが少ない桐が最適かもしれません。現代でも、総理大臣が記者会見するときの机の前面に桐花紋が入っているのをテレビで見かけます。

学生のみなさん、桜に始まりアジサイまできたキャンパス内の花の変化を、来年はぜひ自分の目で確かめてください。意外とキャンパス内のマイナーな草花がきれいですよ。

 

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写真1 上:山大の花菖蒲、中央:山大農場の桐、下:山口市仁保地区の藤(車と比べると大さがわかる)

 

前回、一部の学生実習がスタートしたことを写真とともにお伝えしましたが、今月はさらに学生実験が本格的に対面化されました。一人一人が単独で行うタイプの実験内容が多い状況ですが(写真2)、だいぶ普通の授業風景が戻ってきました。この日、3年生を対象にした応用実験を担当していた小崎先生と木股先生は「感染対策に十分留意しながら、久しぶりに大学にて皆と顔を合わせての学生実験を行いました。体調を崩している人もなく安心しました。」とコメントされていました。実験開始前に体温測定を行ったり、三密防止に配慮したりとまだまだコロナ対策は続きますが、例年並みの授業内容が確保できるように工夫を凝らして実験が展開されています。

 

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月刊農学部長 第23号(2020年6月)

 

5月28日 野鳥観測&実習スタート

前回お話したように、山大周辺の川辺では多様な動物たちを観察することができます。哺乳動物たちにはたまたま出会うという感じで、お互いにびっくりすることが多いのですが、鳥類には狙って会うことができます。今年になってから見た鳥類を大きい順に挙げると、タカ(ノスリ?)、キジ、ヤマドリ、フクロウ、アオサギ、シラサギ、カワウ、マガモ、カワセミ、ヤマガラ、・・たぶん20種類ぐらいは挙げられます。

先週は、堂々と路上を歩いていた雄キジ(写真1)が川に向かって飛び立った後、アオサギのすぐ上をかすめ飛ぶ瞬間を写真に収めることができました。その直後に、土手の草むらに完璧な保護色で隠れていたパートナーの雌キジ(写真2)が飛び立つ瞬間も撮ることもできました。キジは体が重くて翼も短く飛ぶのが苦手なので、約30mの飛距離はほぼ全力飛行です。2羽は仲良く同じ場所に着地しましたが、きっと草陰で一緒にゼーゼー、ハァハァしていたことでしょう。キジが出てくる桃太郎のお話は、室町時代に原型が作られたらしいのですが、その頃から最近までとてもポピュラーな鳥だったようです。今では野生のキジを見たことがない人もたくさんいるようですが、日本の固有種で、何と言っても「国鳥」(1947年制定)ですから、一度は観察する価値があると思います。

野鳥観察のガイドブックやスマホの写真や鳴き声情報を参考にして、野生動物たちを同定するのはなかなかに楽しいものです。山大生ならではの本当に贅沢なアクティビティーとしてお勧めします。

 

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さて、政府の緊急事態宣言も5月25日に全国的に解除されました。山口大学を含むほとんどの大学では、クラスター発生を警戒して、講義の多くは今なお遠隔形式で実施されています。一方、ゼミ活動や学生実験・実習については規制が一部緩和され、少人数での対面授業がスタートしています(写真3)。この日、農場での実習を担当した荒木先生・藤間先生・佐合先生は、「多くの学生が真面目に“stay home”していたとのことで、久しぶりの晴天下、初めての農場での作業で“気持ちいい!楽しい!”と喜びを表していました。私たちも嬉しかったですね。」とコメントされました。徐々にではありますが、普通の大学生活にもどりつつあるようです。

そんな中で一番苦労しているのが、4年生及び修士2年の就職活動中の学生さんたちです。例年だと、半数以上の学生さんが何らかの形で「内々定」をもらっている時期ですが、今年は採用活動が何度も順延され、今から開始という企業、公務員試験も多いようです。そもそも経団連所属企業による就職協定では、確か2020年までは「3年次3月に就職活動解禁、4年次6月に採用選考解禁」となっていたはずです。コロナ感染拡大のせいで、図らずしも就職協定通りに企業が採用活動を行っているわけです。そう考えると、就活生も少しは気が楽になるのではないでしょうか。

就活生のみなさん、あせらずに、今やるべきことを見失わずに頑張りましょう!!

 

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月刊農学部長 第22号(2020年5月)

 

4月29日 COVID-19特別対策期間

今年に入ってからずっとニュースの主役は「コロナウィルス(COVID-19)」です。直径は100-200ナノメートルぐらいだそうですから、髪の毛の直径の1000分の1ぐらいの大きさです。

なかなか手ごわくて、簡単には克服できそうにないですが、きっと近い将来に科学の力も利用して封じ込めることができると信じています。たとえば、同じコロナウィルスのSARS(重症急性呼吸器症候群)は21世紀に入ってすぐ流行しましたが、患者さんの検体採取から病原体が特定されるまでに2か月を要したそうです。一方、今回の新型コロナは1週間程度でウィルスが特定され、その数日後にはインターネット上にCOVID-19の遺伝子データが公開されました。これらの基礎データは、きっと新薬の素早い開発につながることでしょう。皆さん、COVID-19との戦いは、もう少しの辛抱であると信じて、不要不急の外出自粛に努めましょう。

ところで、多くの大学では5月の連休明けまで授業を開始しないなどの措置が取られました。山口大学でも、4月13日から5月6日まで、いわゆる普通の講義(対面形式)は禁止され、遠隔講義のみが実施されています。多くの遠隔講義は、教壇に立つ教員と数十名~百名程度の学生を修学支援システムあるいはZOOMを利用してつないで、実施しています(写真1)。この時、誰もいない教室で熱弁をふるっておられた松井教授は「学生さんの反応が見えないのでやりにくいのは確かです。東進の先生方はすごい」とコメントされました。また、研究室単位の活動は、研究室の教員と自室に居る学生さんをつないで、もっと小規模で実施しています。私の場合、週2回のペースで8名の学生さん(4年4名・修士4名)とモニター上で対面しながら英語論文紹介等を行っていますが、だいぶ違和感がなくなってきました(写真2)。残る最大の問題は、実験・実習をどうやって実施するかです。

不要の外出を控えることは大切なことですが、ジョギングや散歩は必要な運動として自粛の対象外とされていますので、人が少ない所を一人で散歩することぐらいのことは許されています。むしろ、学生さんのメンタルヘルス的には、大学周辺(山口盆地)のウォーキング、ジョギング、サイクリングをお勧めします。周辺の小川はもちろん山口盆地の中心を流れる椹野川の水はとても澄んでいて、たくさんの野生動物を見ることができます。私がここ数年間に遭遇した哺乳動物を大きい順に挙げると、イノシシ、ニホンザル、タヌキ、イタチ、テン、ヌートリア(写真3)・・・と10種類ぐらいはすぐに出てきます。実は、鳥類はもっと多様です。県庁所在地にある大学周辺で、こんなにたくさんの野生動物と会えるのはなかなか珍しいのではないでしょうか。ぜひ、身近な野生動物の生態を観察してみてください。きっと彼らの本能、賢さに感動しますよ。

 

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月刊農学部長 第21号(2020年4月)

 

4月14日 対面授業禁止

4月9日に、「保護者の皆様、ご安心ください、4月13日から普通に授業が開始されます。」と書きましたが、本日「吉田キャンパスにおいては4月14日から5月1日までを特別対策期間とし、対面授業を実施せず、遠隔授業のみとする」という大学の決定が通知されました。先週末に、山口市でも感染経路の分からない感染者が発生したこと、山口市教育委員会が市内の小中学校の臨時休校を決定したこと、等による苦渋の決断だったようです。

共通教育・専門教育ともに、いくつかの遠隔講義は実施されますので、学生の皆さんは山口に留まり、大学あるいは農学部からの連絡を待っていてください。大学から割り当てられた公式メールアドレスおよび大学HPに最新情報が送られますので、毎日チェックするようにしてください。新型コロナウィルスへの対応は、まさに今が勝負の時と言われています。教職員とともにこの難局を乗り越えていきましょう。

コロナウィルスの危険性、感染拡大の防止策に関して、以下のyoutubeアニメーション(10分弱)がとてもよくまとめています。日本語訳も的確に表示されますので、是非一度参照してみてください。

https://youtu.be/BtN-goy9VOY

 

 

 

月刊農学部長 第20号(2020年4月)

 

4月9日 大学スタート

山口大学でも卒業式(3/24)と同様に入学式(4/3)も中止となり、ちょっと寂しいスタートとなってしまいました。結局、新入生にとって最初の大学行事は、農学部の大講義室で行われた農学部オリエンテーション(4/6午前)となりました。例年は2学科合同で約100名の新入生を対象に行うのですが、今年はなるべく接触を避けるために間隔を空けて座ってもらい、学科別(52人)に分けて2回行いました。私もマスクをして、学生との距離を隔てて「あいさつ」をしましたが、思ったより違和感がありませんでした(写真1)。

少々バタバタした感じでスタートしましたが、保護者の皆様、ご安心ください。その後はいつものように、履修登録の説明(4/6午後)、健康診断(4/7)パソコン説明会(4/8)などを経て、各自がPCやスマホから履修登録を行い、4月13日から普通に授業が開始されます。1年生の前期は、1日に平均3~4コマ(1コマ90分)の授業がありますが、8割方は共通教育科目ですので、多くの時間を他学部の学生とともに共通教育棟周辺で過ごすことになります。

ウィルス感染拡大という予想外の事態が生じましたが、みなさんがスムーズに大学生活に馴染めることを願っています。

 

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4月3日 自己紹介

本年度から農学部長を務めます宮田浩文です。よろしくお願いします。

1960年に鹿児島県で生まれ、小学校から高校までを鹿児島市内で過ごしました。その後、国内外の大学・研究所および山口大学教養部を経て、 1996年4月から農学部に所属しています。研究分野は「応用生理学・神経筋生理学」で、運動健康科学(共通)、環境適応生理学(学部)、分子細胞機能科学(大学院)等の授業科目を担当しています。

学部長のノルマの1つに「月刊農学部長」があります。前学部長がHP委員長に促されて始めてしまった「悪しき(?)習慣」です。それでも毎月読んでいるうちに、HPが賑やかになるし、大学教員や学生の様子が垣間見えるのも悪くないと思うようになりました。前学部長のように気の利いた文章や写真を掲載することは到底できませんが、農学部の日常を知ってもらう一つの機会になれば幸いです。

さっそくですが、この季節の定番である「さくらの風景」を紹介します。山口大学の吉田キャンパスは、市内の亀山地区(サビエル記念聖堂付近)から総合移転して約50年が経ちました。その頃に植えたと思われる桜が結構な大樹になり、今が全盛期ではないかと思われるほどキャンパス内のあちこちで咲き誇っています。卒業生を送り、新入生を歓迎するこの時期に、欠かせない風景になっています。その中でも、農学部から歩いて1分もかからない所にある本部(学長室のある建物)広場は桜の密度が高い場所の1つです。写真2のように、桜の中に設置されたテーブルが、研究室やサークル単位での昼食や懇親会に利用されています。今年は例年に比べると、コロナウィルス感染拡大の影響で利用する学生が少ないようです。

 

2020-4-1.jpg 写真2

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