お知らせ
大学院創成科学研究科(工学系)国土・環境デザイン系分野の赤松良久教授らが第29回日本水環境学会シンポジウムにて優秀発表賞を受賞しました
(令和8年10月30日掲載)
2026年9月16日〜17日に開催された「第29回日本水環境学会シンポジウム地域水環境行政研究委員会セッション」にて、大学院創成科学研究科(工学系)国土・環境デザイン系分野の赤松良久教授をはじめとする今村史子氏(日本工営株式会社)、中尾遼平准教授(山口大学大学院創成科学研究科(工学系)国土・環境デザイン系分野)、小澤段氏(株式会社ジオプラン・ナムテック)の研究グループが、優秀発表賞を受賞しました。
受賞対象となった発表題目は、「人工DNAトレーサーを用いた下水道における不明水・漏水起源の検出手法の開発と現場実証」です。本発表は、赤松教授、今村史子氏、中尾准教授、塚田繁氏、小澤段氏、陣内恒平氏の共同研究成果として行われました。
近年、下水道施設の老朽化や集中豪雨の頻発化などを背景に、雨水や地下水などが汚水管へ流入する「不明水」が深刻な課題となっています。不明水の流入は、下水処理場やポンプ場の処理負荷の増大、維持管理コストの上昇、溢水リスクの増加につながるため、発生箇所や流入経路を効率的に把握する技術が求められています。従来の調査では流量や水温等を用いた方法が一般的ですが、広範囲の調査には多くの時間と労力を要し、浸入経路や原因箇所の特定が難しい場合がありました。
こうした課題に対し、本研究グループでは、人工的に設計したDNAをトレーサーとして利用し、水の移動経路を直接追跡する技術の研究開発を長年にわたり進めてきました。人工DNAは配列を変えることで複数種類のトレーサーを作製できるため、異なる地点からそれぞれ別のトレーサーを投入し、複数の流入経路を同時に識別できることが大きな特徴です。さらに、天然乾燥海綿を利用したパッシブサンプリングを組み合わせることで、流下時間が分からない環境下でも高感度にトレーサーを検出する手法を開発しました。
実下水道を用いた試験では、人工DNAトレーサーが約10km流下し、約350万〜400万倍に希釈された条件でも検出可能であることを確認しました。また、現場実証では、5地点に投入した異なるDNAトレーサーを下流側の汚水管でそれぞれ識別することに成功し、複数の雨水桝から地下を経由して汚水管へ至る浸入経路を把握できることを示しました。これにより、本技術が不明水発生箇所の広域スクリーニングや原因箇所の特定、さらには下水道の維持管理の高度化に活用できる可能性が示されました。
本研究は、山口大学と日本工営株式会社が長年進めてきた人工DNAトレーサーに関する共同研究を、実際の下水道維持管理に応用させた成果です。基礎的な検討から現場での実証へと研究を積み重ね、社会インフラが抱える具体的な課題の解決につながる技術として今回の成果に至りました。
受賞にあたり、赤松教授は、「このたび優秀発表賞をいただき、大変光栄に思います。本研究は、日本工営株式会社をはじめとする共同研究者の皆様と長年にわたり取り組んできた人工DNAトレーサー研究を、実際の下水道が抱える課題の解決へと発展させたものです。基礎研究から現場実証まで研究を積み重ねてきた成果を評価いただいたことを大変うれしく思います。今後も産学の連携を深め、本技術の実用化と社会実装に向けて研究を発展させてまいります。」と述べています。
本学は今後とも活発な研究活動を推進してまいります。