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創成科学研究科循環環境工学分野の佐伯隆教授、貝出絢准教授が企業との共同研究の成果をもとに作成した『セントラル空調システムの水循環用配管抵抗低減剤の性能測定方法』が、経済産業省が所管する日本産業規格(JIS)として制定されました

(令和7年6月3日掲載)

 創成科学研究科循環環境工学分野の佐伯隆教授と貝出絢准教授は、周南水処理株式会社(山口県周南市)との共同研究で開発した「抵抗低減剤」を使用し、ビル空調システムの省エネルギー化を進めています。抵抗低減剤とは、各種施設、ビル、工場設備の水循環系に添加することにより、流れの抵抗が激減し、循環ポンプの省エネルギー化を達成できるものです。抵抗低減効果に関する基礎研究は、1960年頃から開始され、最近では計算シミュレーションも行われていますが、実用化に取り組む研究は限定的なものでした。佐伯教授は1997年から山口大学のシーズ技術である抵抗低減効果を実用化するため、エルエスピー協同組合との共同研究から着手し、「省エネができる水処理薬品」として商品化しました。その後、組合の事業を引き継いだ周南水処理株式会社とともに、これまで200件を超える実用化を進めています。この間、抵抗低減技術の応用や開発した添加剤に関する技術の特許も取得しましたが、特許権の存続期間が満了し、以前よりあった効果が不十分な他社製品が市場に出回ることが懸念されました。
 このような状況下で、佐伯教授は抵抗低減剤の性能を客観的に評価する方法を標準化する必要性を感じ、2022年に周南水処理株式会社とともに経済産業省の「新市場創造型標準化制度」に応募し、採択されました。これにより、一般財団法人日本規格協会(JSA)のもと、佐伯教授を委員長としたJIS原案作成委員が発足し、JISの作成業務が進められました。202542日に行われた経済産業省産業機械技術専門委員会でのプレゼンと質疑応答の後、520日にJIS B 8703として制定(官報公示)されました。佐伯教授は、「これまで大学の研究で得られた知財は、論文や学会発表、特許取得で世に送り出してきましたが、標準化も技術の発展に寄与できる有力な方法であると考えています。JIS制定に裏付けされた技術の普及、用途拡大にこれからも力を尽くしたいと思います」とコメントしています。貝出准教授は、JIS原案作成委員の分科会メンバーとして参画し、研究室の博士後期課程環境共生系専攻2年の立川敬史さんJISの利用者という立場から委員として会議に加わりました。なお、佐伯教授にとって、今回のJIS制定は2018年(JIS B 8702)に続く2件目になります。
 本学では今後とも活発な研究活動を推進してまいります。

写真1 出版発行されたJIS規格票

写真2 抵抗低減剤とその応用研究のメンバー(広島県三次市 ミサワ環境技術株式会社に設置した装置の前で)  
写真左より、貝出准教授、田中さん(ミサワ環境技術株式会社)、永坂さん(新日本空調株式会社)、
佐伯教授、松村社長(周南水処理株式会社)、寺田さん(周南水処理株式会社)

 

参考URL
経済産業省プレス:日本産業規格(JIS)を制定・改正しました(2025年5月分)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun-kijun/jiskouji/20250520001.html

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