国立大学法人 山口大学

本学への寄付

共同研究講座「血液脳神経関門先進病態創薬研究講座」の開設

 

 国立大学法人山口大学(本部:山口県山口市、学長:岡正朗、以下 山口大学)は2021年11月1日に複数の国内製薬企業と共同研究講座「血液脳神経関門先進病態創薬研究講座」を開設しました。本講座は、山口大学大学院医学系研究科臨床神経学講座の独自技術である生体に近いin vitro ヒト血液脳関門(BBB: Blood Brain Barrier)モデルをもとに創薬開発研究コンソーシアム体制を構築し、BBB等血液臓器関門を通じた疾患・創薬研究開発の世界的拠点となることを目指しています。

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【血液脳関門(BBB)とモデルの役割】(図1)

  • 不要な物質を脳内に入れないための強固なバリアです。そのためアルツハイマーなどの治療薬開発では、このバリアをどう通過させるかが大きな課題となります。
  • 脳や中枢に関する薬剤開発では、実際にヒトで確認することが難しいため、ヒトの条件に近いモデルを使って化合物をスクリーニングすることが不可欠です。
  • この「ヒトに近い」モデルを実現する上で、脳以外の臓器にもそれぞれの臓器特性に応じた血液臓器関門が存在(臓器差)することや、また、他の動物のBBBはヒトのBBBの特性や機能とは異なる(種差)ことから、「種差」と「臓器差」を克服した内皮細胞とBBBを再現した細胞実験モデルであることが求められます。


図1 ヒトの血液脳関門(BBB)の構成

血液脳関門(BBB: Blood Brain Barrier)は、3層の細胞で構成される(血管内皮細胞、ペリサイト、アストロサイト)。細胞種別により増殖スピードが異なり、機能を維持したまま3層培養をすることは通常困難です。
BBBの2大機能は、1)バリア機能による有害物質の流入阻害と2)炎症細胞浸潤制御です。
<注>アストロサイト、ペリサイト
これらの細胞は血管内皮細胞とBBBを構成するのみでなく、最近の研究で、物質輸送を介して周辺の様々な条件を調節する機能が注目されています。

 

【山口大学のin vitro ヒトBBBモデル】(図2)

  • この共同研究講座の中核技術であるin vitro BBBモデルは、上記の「種差」「臓器差」を克服し、ヒトBBBの3層構造の再現性が高く、医薬品候補化合物の透過性評価性試験に適しています。 

図2 山口大学のin vitroモデルの優位性

<従来型in vitro BBBモデル>

・ヒト以外の細胞を使用(げっ歯類やサル)

・他の既存in vitro BBBはバリア機能が不完全

アストロサイトエンドフット層が再現できない

 

<山口大学の新規in vitro BBBモデル>

・ヒト由来の血管内皮細胞、ペリサイト及びアストロサイトを使用

・温度感受性不死化・成熟分化により高度のBBB特性を保持

・生体に近いBBB構造、バリア機能を再現

 

  • in vitro BBBモデルの市場規模は世界的に数千億円の規模が想定され、本モデルは完成から数年で世界中の製薬企業、研究所から多数の共同研究のお申し込みがある状況となっています。

 

【本共同研究講座での取り組み】(図3)

BBBを通じた疾患・創薬研究開発の世界的拠点となることを目指し、3つの研究開発に取り組みます。

  • 創薬スクリーニング用のin vitro BBBモデル等特別Kit量産化・提供
  • ポストiPS細胞となる組織特異性研究領域の確立
  • 組織特異性を保持した血管・臓器モデルによる各疾患の病態解明と新規治療法開発

 

共同研究講座の概要

  • 設置機関:国立大学法人山口大学
  • 講 座 名:「血液脳神経関門先進病態創薬研究講座」
  • 参画機関:企業名は当面非公開
  • 開講期間:2021年11月1日~
  • 担当教員:竹下 幸男(研究代表)、根本 壌(特命助教)
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