国立大学法人 山口大学

本学への寄付

ワクチン接種意向を基礎づける心理学的要因は何か?-イスラエルと日本、ハンガリーの比較研究-

 

 山口大学人文学部高橋征仁教授は、英国Warwick大学のRobin Goodwin教授、イスラエルAriel大学のMenachem Ben-Ezra教授らとともに、新型コロナ感染症のワクチン接種意向に関して、イスラエルと日本、ハンガリーの3ヶ国の比較調査を実施し、その心理学的要因を明らかにしました。
 現在、新型コロナ感染症の流行を抑制する方法として、世界中でワクチン接種が提唱されています。しかしながら、どの国でもワクチン接種に対して一定の忌避傾向が存在していることも事実です。そこで本研究では、ワクチン接種の先進国イスラエルと、ワクチン接種に出遅れていた日本・ハンガリーの3ヶ国を取り上げ、ワクチン接種の意向を基礎づけている心理学的要因を探ることにしました。
 それぞれの国の調査時点でのワクチン接種意向は、イスラエル74%(2021年1月)、日本51%(2021年2月) 、ハンガリー 31%(2021年4月)でした。年齢や性別、学歴等を統制したうえで、これら3ヶ国で共通にみられたワクチン接種意向の心理学的要因は、感染や重症化に対する不安ではなく、「政府に対する信頼」と「ワクチンを接種しなかった場合の後悔」でした。また、ワクチン接種をめぐる迷信は、それぞれの国で大きく異なり、日本で特徴的だったのは、「ワクチンを接種すると新型コロナに感染したことになる」という生ワクチンとmRNAワクチンを混同した迷信でした。これらの分析結果は、各国のワクチン接種キャンペーンのあり方を再検討するうえで非常に示唆に富んだものといえます。
 この研究成果は、2021年5月25日から健康科学のための出版前サーバーmedRxivにおいて公開されたのち、2022年1月10日にNature社のオープンアクセス誌Scientific Reportsに掲載されました。

研究の詳細はこちら

図1.ワクチン接種意向の要因に関する生態学的モデル
(掲載論文の図1を高橋が翻訳)

 

表1.ワクチン接種意向に関する層化多母集団のロジスティック回帰分析の結果

 

論文情報

  • 論文題目:Psychological factors underpinning vaccine willingness in Israel, Japan and Hungary
  • 著 者:Robin Goodwin, Menachem Ben‑Ezra, Masahito Takahashi, Lan‑Anh Nguyen Luu, Krisztina Borsfay, Mónika Kovács, Wai Kai Hou, Yaira Hamama‑Raz & Yafit Levin
  • 掲 載 誌:Scientific Reports (2022) 12:439
  • D O I:10.1038/s41598-021-03986-2

謝辞

 この研究の一部は、日本学術振興会の科学研究費補助金基盤研究(C) 18K01963の助成を受けて実施しました。

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