波長222nmの遠紫外線照射効果~歯周病菌の殺菌だけでなく歯周病菌が形成するバイオフィルムの破壊にも有効
発表のポイント
- 波長222nmの遠紫外線が、歯周病菌の殺菌並びにバイオフィルムの破壊に有効であることを示しました。
- 歯周病菌の殺菌に有効なエネルギーの10倍量の遠紫外線をマウスの舌に照射しても異常は認められず、安全性が確認されました。
- 本研究の成果により、遠紫外線歯周病治療器の開発が促進されることが期待されます。
概 要
山口大学大学院医学系研究科 基礎検査学講座の西川 潤 教授らは、消化器内科学講座、臨床検査・腫瘍学講座、歯科口腔外科学講座およびウシオ電機株式会社(本社:東京)との共同研究により、遠紫外線が歯周病の殺菌に有効であると報告しました。波長222nmの遠紫外線は様々な細菌に対して殺菌効果を持つ一方で、人体への安全性は高いため、大変注目されています。この遠紫外線を歯周病菌に照射したところ、人体へは悪影響を与えないエネルギーで殺菌が可能でした。また、遠紫外線は歯周病を治りにくくしている、歯周病菌と菌体外物質から構成されるバイオフィルムを破壊する効果もありました。下図は歯周病菌にバイオフィルムを形成させ、遠紫外線を照射前後のバイオフォルムの状態を観察したものです。上段の共焦点レーザー顕微鏡の写真では、緑色のごつごつして厚いバイオフィルムが遠紫外線照射によって破壊され、薄く剥がれているのが観察できます。下段の走査型電子顕微鏡写真では、遠紫外線照射後の歯周病菌はバラバラになり死んでいることが分かります。また、ハムスターの歯周病モデルを用いた検討では、遠紫外線を照射することで歯周病患部の細菌数が減少することも示しています。安全性の証明のため、これらの効果を示す10倍のエネルギーの遠紫外線をマウスの舌に照射していますが、肉眼的、組織学的に全く異常が現れていません。今後はさらに歯周病モデルに対する遠紫外線の治療効果を確認していく予定です。
歯周病は人類最多の感染症であり、ギネス記録として登録されています。それに加え、大腸癌や糖尿病、不整脈や認知症にも関連すると言われており、難治性の歯周病に対する治療法の開発は重要性を増しています。本研究の成果を基に、遠紫外線歯周病治療器の開発を目指していきます。
本研究成果は、2024年8月8日付で「J Microbiol Immunol Infect.(IF 7.4)」に掲載されました。
発表論文の情報
- タイトル:Far-ultraviolet irradiation at 222 nm destroys and sterilizes the biofilms formed by periodontitis pathogens
- 著 者:Nishikawa J, Fujii T, Fukuda S, Yoneda S, Tamura Y, Shimizu Y, Yanai A, Kobayashi Y, Harada K, Kawasaki K, Mishima K, Watanabe K, Mizukami Y, Yoshiyama H, Suehiro Y, Yamasaki T, Takami T.
- 掲載誌:J Microbiol Immunol Infect.
- 掲載日:2024年8月8日 Volume 57, Issue 4, August 2024, Pages 533-545.
- D O I:https://doi.org/10.1016/j.jmii.2024.05.005
謝 辞
本研究は、JSPS科研費 JP22K07985の支援を受けて行われました。
お問い合せ先
大学院医学系研究科(保健学専攻)基礎検査学講座
教授 西川 潤
E-mail: junnis@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)