国立大学法人 山口大学

本学への寄付

骨髄間葉系間質細胞が細胞外小胞中のmicroRNAにより肝硬変の進行を抑制する機序を発見

 

発表のポイント

  • 骨髄間葉系間質細胞が分泌する細胞外小胞には、肝星細胞の線維産生を抑制する働きを持つmicroRNAが含まれ、これにより肝硬変の進行を抑制することを発見しました。
  • これまでの報告とは異なり、複数のmicroRNAの協調作用が明らかとなったことで、この知見は間葉系間質細胞の品質評価法や合成microRNAを用いた次世代肝硬変治療法の開発へと繋がる可能性があります。

概要

 山口大学大学院医学系研究科消化器内科学講座の高見太郎教授、松本俊彦講師、川本大樹大学院生(研究当時)らの研究グループは、骨髄間葉系間質細胞の分泌する細胞外小胞に含まれるmicroRNAが肝星細胞の活性化を制御し、肝硬変の進行を抑制するメカニズムを解明しました。
 同講座では、進行した肝硬変に対する新たな低侵襲治療法として、骨髄間葉系間質細胞を肝動脈から投与する「自己完結型肝硬変再生療法」の開発を進め、金沢大学および澁谷工業株式会社と協同で医師主導治験を実施してきました。
 本研究では、間葉系間質細胞が分泌する細胞外小胞中のmicroRNAに着目した検討が行われました。治験参加肝硬変症例の間葉系間質細胞が分泌する細胞外小胞と肝星細胞のmicroRNA発現プロファイルを網羅的に比較し、細胞外小胞で高発現かつ肝星細胞で低発現のmicroRNAを抽出しました。さらに、これらのmicroRNAを組み合わせて肝星細胞に導入し、線維化関連遺伝子(α-smooth muscle actin, collagen I, elastin)の発現を抑制する5種のmicroRNA(miR-204-3p, miR-1237-5p, miR-5787, miR-6089, miR-7977)を見出しました。
 これら5種のmicroRNAを組み合わせて肝星細胞に導入しパスウェイ解析を行うと、アクチン細胞骨格のリモデリングを制御するRhoAシグナリングが抑制されていました。肝星細胞においてRhoAシグナリングは活性化や線維産生の促進に働くことから、その抑制が骨髄間葉系間質細胞の細胞外小胞を介した作用機序と考えられます。そして、5種のmicroRNAの作用点は多岐にわたり、サイトカイン分泌やその受容体、細胞内シグナル伝達の抑制により、肝星細胞の活性化に関与するTGF-βシグナリングとRhoAシグナリングの双方を協調的に抑制することが明らかとなりました。
 以上の結果から、骨髄間葉系間質細胞が分泌する細胞外小胞に高発現する5種のmicroRNAは、肝星細胞においてRhoA活性を抑制することにより線維化関連遺伝子の発現を制御し、抗線維化作用を発揮することが示されました。
 本研究成果については特許出願中であり(特願2023-189942)、2026年2月17日に国際科学誌「Stem Cells」に掲載されました。

論文情報

  • 論文名:Extracellular vesicle microRNAs from human bone marrow MSCs suppress fibrogenesis of hepatic stellate cells by downregulation of RhoA signaling
  • 著者:Daiki Kawamoto, Toshihiko Matsumoto, Tsuyoshi Fujioka, Shuhei Shinoda, Koichi Fujisawa, Tsuyoshi Ishikawa, Naoki Yamamoto, Taro Takami
  • 掲載誌:Stem Cells
  • 掲載日:2026年2月17日
  • URL:https://doi.org/10.1093/stmcls/sxag006

 

お問い合わせ先

  • <研究に関すること>
    山口大学大学院医学系研究科消化器内科学講座
    講師 松本 俊彦(マツモト トシヒコ)
    Tel:0836-22-2241
    E-mail:tm0831@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)
  • <報道に関すること>
    山口大学医学部総務課広報・国際係
    Tel:0836-22-2009
    E-mail:me268@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)
TOP