国立大学法人 山口大学

本学への寄付

黒潮がつくる海底生物群集の分布構造を解明 ―紀伊水道における貝形虫群集から海洋環境の特徴を読み解く―

 

 山口大学大学院創成科学研究科の岩谷北斗講師、竹内美優氏(研究当時、現・UICコンサルタント株式会社)、産業技術総合研究所の天野敦子研究グループ長、島根大学総合理工学部の入月俊明教授らの共同研究グループは、紀伊水道の海底堆積物中に生息する微小甲殻類「貝形虫(かいけいちゅう)」の群集構造を解析し、黒潮由来の外洋水と沿岸低塩分水との相互作用が、海底生物群集の分布構造に大きな影響を与えていることを明らかにしました。

 本研究では、紀伊水道の表層堆積物から計116種・4,000個体以上の貝形虫を分析し、海域内に3つの生物相が形成されていることを示しました。これらの群集は、塩分や泥質堆積物の分布と対応しており、黒潮の影響を強く受ける湾口部ほど、多様性の高い群集が形成されていました。
 一方、隣接する大阪湾では、富栄養化や貧酸素化によって生物多様性が低下していることが知られています。本研究は、紀伊水道が比較的自然環境が保たれた海域であり、黒潮による海洋環境の影響が明瞭に表れていることを示しました。
 さらに、本研究では、亜熱帯性貝形虫 Neomonoceratina delicata を紀伊水道北部の現世堆積物から確認しました。本種はより南方の暖海域に分布する種であり、日本列島周辺の現世堆積物における北限級の記録となることから、黒潮による暖水輸送や海洋環境変化との関連が注目されます。
 貝形虫は環境変化に敏感であり、殻が堆積物中によく保存されるため、過去の海洋環境復元に有効な指標生物として知られています。本研究成果は、黒潮変動と沿岸環境変化の関係を理解する上で重要な基礎データとなることが期待されます。

 本研究成果は、2026年5月17日付で「Estuarine, Coastal and Shelf Science」にオンライン公開されました。

図.研究対象海域と貝形虫生物相の分布
左図は、日本周辺を流れる黒潮と研究対象海域である紀伊水道の位置を示す。
右図は、紀伊水道における貝形虫生物相の空間分布を示しており、海域内に特徴の異なる3つの生物相が形成されていることが明らかとなった。

研究支援

 本研究は、JSPS科研費(23K03564)および、産業技術総合研究所沿岸域プロジェクトの支援を受けて実施されました。

論文情報

  • 論文名:Kuroshio-driven structuring of modern ostracod biofacies in the Kii Channel, Japan
  • 掲載誌:Estuarine, Coastal and Shelf Science
  • 著者:Hokuto Iwatani, Miyu Takeuchi, Atsuko Amano, Toshiaki Irizuki, Jun Arimoto, Yoshiaki Suzuki, Takuya Itaki
  • 掲載日:2026年5月17日(オンライン公開)
  • URL:https://doi.org/10.1016/j.ecss.2026.109979

 

お問い合わせ先

<研究に関すること>
  • 山口大学 大学院創成科学研究科(理学系学域)地球科学分野
    講師 岩谷 北斗(イワタニ ホクト)
    TEL:083-933-5748
    E-mail:hokuto_i@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)
<報道に関すること>
  • 山口大学 総務部総務課広報室
    TEL:083-933-5007
    E-mail:sh011@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)
  • 島根大学 企画部企画広報課広報グループ
    TEL:0852-32-6603
    E-mail:gad-koho@(アドレス@以下→office.shimane-u.ac.jp)
    TOP