小児・思春期の精索静脈瘤に対する早期手術が、成人期の造精機能を守ることを10年以上にわたる長期フォローアップにより実証
―20歳までの長期追跡調査により、小・中学生期の手術が精巣発達と精子数維持に極めて有効であることを解明―
発表のポイント
- 小児・思春期に精索静脈瘤手術を受けた患者を、成人(20歳以上)になるまで最長11年間にわたり毎年追跡し、精巣の発達と精液の質への影響を明らかにした画期的な研究です。
- 小学生または中学生の段階で早期に手術を行うことで、高校生になってから手術を行うよりも、成人後の精巣容積が大きくなり、総運動精子数も有意に向上することが分かりました。
- 手術により92%の患者で左右の精巣の大きさに差がなくなる「キャッチアップ成長」が確認され、保存的治療(20%)を大幅に上回る治療効果が実証されました。
研究概要
山口大学大学院医学系研究科 泌尿器科学講座の白石晃司教授らの研究グループは、小児・思春期に精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)と診断された患者さんを対象に、20歳到達時まで年1回の継続的な経過観察を行う長期コホート研究を実施しました。
その結果、顕微鏡下精索静脈瘤手術を受けた患者は、保存療法(経過観察)群と比較して精巣の発達(精巣サイズ)が有意に増加し、20歳時点での精巣容積および総運動精子数が著しく高値であることを実証しました。さらに、高校生期よりも小学生・中学生期の早い段階で手術を実施した方が、成人期における精巣発達および造精機能の維持・改善効果が高いことを解明しました。
本研究成果は、2026年5月1日に、米国泌尿器科学会の旗艦誌「Journal of Urology」(Impact Factor: 9.7, Q1)に掲載されました。
研究背景
精索静脈瘤は、精巣から心臓に戻る静脈の血液が逆流して静脈が網目状に腫れる疾患であり、思春期男子の約20%に認められます。静脈血の滞留により精巣内の温度が上昇し、精巣の発達障害や将来の男性不妊症の最大の原因となります。
小児・思春期における精索静脈瘤では、左右の精巣容積に20%以上の差がある場合などに手術適応とされますが、「何歳(どの発達段階)で手術を行うことが、成人後の造精機能を最も保護できるか」という最適な手術タイミングについては、成人期までの長期追跡データが世界的に乏しく、長い間議論が続いていました。
研究の成果
研究グループは、2011年から2022年に登録された精索静脈瘤の小児・思春期患者125例を対象に、20歳到達時まで毎年継続して精巣容積や再発の有無を超音波検査等で測定し、20歳以降に同意を得た82例に対して精液検査を実施しました。
顕微鏡下精索静脈瘤手術を受けた群では、左右の精巣容積差が20%未満へと改善するキャッチアップ成長が92%の患者で確認され、保存療法(経過観察)群の20%という結果を大幅に上回る治療効果が示されました。
20歳到達時点における左精巣容積(17.9 mL対15.8 mL)および両側合計精巣容積(36.0 mL対32.3 mL)は、手術群で統計学的に有意に大きく保たれていました。また、20歳以降の精液所見における総運動精子数は、手術群で約2.8倍と顕著に高く、正常な造精機能が維持されていることが実証されました。
手術を実施した時期別の解析を行った結果、高校生になってから手術を受けた群と比較して、小学生・中学生のより早期に手術を受けた群の方が、成人期到達時の精巣容積および総運動精子数が有意に優れていることが明らかになりました。
今後の展望

本研究は、小児・思春期における精索静脈瘤に対する早期の微小外科的介入が、思春期における精巣の正常な成長を促し、将来(成人期)の造精機能を長期間にわたり保護することを科学的に証明した意義深い成果です。
近年、白石教授らは小児科学・泌尿器科学・生殖医学を統合し、生涯にわたる性成熟と生殖ヘルスを管理する「小児アンドロロジー(Pediatric Andrology)」の概念を提唱し、世界的に浸透しています。本研究成果は、将来の男性不妊症予防に向けた国際的なガイドライン改訂や、臨床現場での適切な手術決定に大きく貢献することが期待されます。
論文情報
- 論文タイトル:Long-Term Outcomes of Varicocelectomy in Children and Adolescents: Impact of Timing on Testicular Growth and Spermatogenesis
(日本語訳:小児・思春期における精索静脈瘤手術の長期予後:手術時期が精巣の発達および造精機能に与える影響) - 著者名:Koji Shiraishi, Satoshi Tokitaka, Yoshimasa Ban, and Shintaro Oka
- 掲載誌:Journal of Urology
- 掲載日:2026年5月1日
- DOI:10.1097/JU.0000000000004934
お問い合わせ先
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<研究に関すること>
山口大学大学院医学系研究科 泌尿器科学講座
教授 白石 晃司
E-mail:shirak@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp) -
<報道に関すること>
山口大学医学部総務課広報・国際係
TEL:0836-22-2009
E-mail:me268@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)

