山口大学経済学部・経済学研究科 経済学部
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本学への寄付

カーボンプライシング研究会を実施しました

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915日、早稲田大学の研究チーム、山口県庁の勢登様をお招きし、経済学部棟第一会議室にてカーボンプライシング研究会を実施した。
当日は本学教員や他大学の教員にも多数ご参加いただき、会場参加が20名程度、オンライン参加が6名であった。

以下では各報告の概要をごく簡単に紹介させていただく。
(敬称略)

 1報告(報告者:勢登俊明)
山口県のコンビナートにおけるカーボンニュートラルに対する取り組みについて紹介いただいた。本県では石炭火力を用いた自家発電を行う製造業が多く,二酸化炭素の排出が多い傾向がある。それに対して、次世代の発電技術として考えられている「水素・アンモニア発電」や二酸化炭素を再利用する「カーボンリサイクル」を用いることで、本県全体から排出される二酸化炭素を減らしていく将来構想をご紹介いただいた。

 2報告(報告者:加藤真也)
日本は2050年においてカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする)達成を目標としているが、その目標を実現した場合に、日本経済はどのように変化するのかについてマクロ計量モデルを用いたシミュレーション結果を報告した。太陽光発電や洋上風力発電など再生可能エネルギー(再エネ)の発電コストが下がることで、再エネが今後さらに普及していくことが定量的に示された。

 3報告(報告者:呂冠宇)
埼玉県で実施されている排出量取引制度(以下、埼玉ETS)に関する定量分析が報告された。企業が埼玉ETSに参加することにより、二酸化炭素排出を減らすインセンティブが高まり、研究開発(R&D)を促進させることを明らかにした。

 4報告(報告者:楊心悦)
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)に関する定量分析が報告された。太陽光発電によって生み出された電気に対する買取価格が上昇することで、電気の自家消費が減り(節電)、家庭が電気を売る量(売電量)が多くなることが示された。

 5報告(報告者:森村将平)
排出量取引制度が日本の鉄鋼産業に与える影響について数値シミュレーションをした報告がされた。生産物に対していかに価格転嫁ができるかが、鉄鋼産業の利益を大きく左右することが示された。

 当日は活発な質疑応答があり、参加者のカーボンプライシング(二酸化炭素に価格付けをすること)に対する理解が進んだ研究会であった。当日ご参加いただいた皆様、研究会を盛り上げてくださり誠にありがとうございました。

文責:加藤真也(観光政策学科 准教授)

[当日のプログラム]
有村俊秀(早稲田大学): 開会の挨拶
勢登 俊明(山口県庁): 山口県のコンビナートにおけるカーボンニュートラルの実現に向けた取組について
加藤 真也(山口大学): 日本の2030年温室効果ガス削減目標及び電源計画達成を前提とした2050年カーボンニュートラルの経済・産業に与える影響分析-E3MEマクロ計量経済モデルによる分析-
呂 冠宇(早稲田大学): Does Emissions Trading Scheme Induce Innovation and Carbon Leakage? Evidence from Japan
楊 心悦(早稲田大学): 固定価格買取制度による家庭エネルギー消費への影響-太陽光発電と売電行動の分析に基づいて-
森村 将平(早稲田大学): カーボンプライシングによる産業競争力への影響-日本の鉄鋼産業におけるシミュレーション-
鷲津 明由(早稲田大学): 閉会の挨拶

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