国立大学法人 山口大学

本学への寄付

情報誌「Academi-Q」

 

「学び」の楽しさを見つける 「Academi-Q [アカデミック]」

 山口大学情報誌「Academi-Q」は、平成30年4月より、山口県内の児童・生徒・その家庭・先生方に配布しています。
 本誌は生徒の皆さんに学問のおもしろさを知ってもらうために創刊しました。おもしろい研究をしている方を取材し、それを読者の立場からわかりやすく解説します。
 世の中には、わからない事がたくさんあります。本誌のタイトル「Academi-Q」は学術(Academic)の不思議(Question)が、高品質(Quality)で、すぐに(Quick)わかることを目指して付けました。

ご意見・ご感想はこちらの アンケートフォーム 宛にお寄せください。

皆さまからお寄せいただいたご意見等は、誌面で紹介させていただく場合があります。 あらかじめご了承ください。

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最新号

No.17 12月号(2023年12月発行)

<特集>

「Academi-Q」タブロイド版は、山口大学総合図書館(吉田キャンパス)、医学部図書館(小串キャンパス)、工学部図書館(常盤キャンパス)、医学部附属病院外来診療棟入口(小串キャンパス)で入手いただけます。


史上最年少のふぐ処理師、山口にて誕生! -「好き」から始まる「夢」への一歩-

山口県を代表する魚といえば「ふぐ」。山口では「ふく」という愛称で呼ばれています。ふぐ食が解禁されて今年で135周年を迎えました。記念すべきこの年に宇部市で史上最年少のふぐ処理師が誕生したのです! 今回は、ふぐ処理師となった宇部市立西岐波小学校の中村 智弥さん(12歳)にインタビューを行い、彼の歩みを追いました。

YU-PRSS 山口大学広報学生スタッフ 別府 桜羽子

ふぐ処理師を目指した理由 -ふぐ処理師ってどんな免許?-

 ふぐには人体にとって危険な毒があります。でも、その毒のある部位を取り除きさえすれば安心して食べられます。その技術を持つ人こそが「ふぐ処理師」です。
 今回紹介する中村智弥さんは、史上最年少でふぐ処理師に合格した小学生です。
 中村さんがふぐ処理師について知ったのは、中村さんの親戚でもある海鮮料理店の大将さんから教えてもらったのがきっかけでした。中村さんは幼少期から特に魚を食べることが好きで、「料理人となって、主に生魚を使って美味しい料理を作りたい」という夢を持っており、その夢を大将さんに語ったところ、ふぐ処理師のことを教えてもらったそうです。そして「できるだけ早いうちに、将来につながる免許は取っておきたい」との思いから、免許取得に向けた努力の日々が始まりました。

免許取得までの道のり

 ふぐ処理師の免許を取るためには、学科試験と実技試験という2つの難関を突破しなければなりません。中村さんは、周囲の人々の協力を得ながらそれらを乗り越えていきました。学科試験に向けては、過去問を毎日繰り返し解くとともに、海鮮料理店の女将さんにも手伝ってもらい関連法律などを覚え、無事に合格できました。
 学科試験に合格したら、次は実技試験です。大将さんに魚のさばき方を基礎から学び、ふぐだけでなく、いさきなどの骨の硬い魚をさばく練習を積む中で、徐々に感覚をつかんでいきました。また、包丁は魚の種類によって細いもの(柳葉包丁)・太いもの(出刃包丁)の使い分けを学び、効率よくきれいにさばく方法を体得しました。
 練習は楽しく、次々と知識と技術を身につけていったそうです。昨年は実技試験を制限時間内に終えられず、免許取得は持ち越しとなりましたが、2度目の挑戦でようやく合格することができました! 実技試験では、ふぐの内臓を身から引きはがしたり、目玉を取り外したりする工程が最も難しかったと語ってくれました。

画像提供:テレビ山口(株)

夢の実現につながる一歩

 中村さんはふぐ処理師免許の取得によって、料理人になるという夢に一歩近づくことができました。今年11月には、大阪で開催された「第二回全日本ふぐ処理・調理技術大会」において、ふぐのとげを除いて食べられる状態にする「ふぐ処理部門」に参加しました。惜しくも制限時間内に仕上げることはできませんでしたが、同じ部門で圧倒的なスピードでさばき切り、日本一となった大将さんと一緒の舞台に立てたことは、貴重な体験となったようです。将来的には、調理師の免許も取りたいと語ってくれました。料理人となる未来に向かって、着実に歩みを進めているようですね。

 山口県の小学生がふぐ処理師の資格を取ったなんて、本当に驚きですよね。中村さんは今回、努力を積み重ねて少しずつ夢の実現に近づいていくことの素晴らしさを教えてくれました。

 


取材協力:宇部市立西岐波小学校 中村 智弥さん

 

できることから一歩ずつ 支援のスタートライン

「支援」とは、「他人の活動などに対して、自分の力を貸してそれを支えること」という意味です。 日頃のお手伝い、応援、声かけ、手助けと「支援」とは別ものなのでしょうか。
支援について、知ることから始めてみませんか?

YU-PRSS 山口大学広報学生スタッフ 松本 菜那

「支援」って難しい?

 私たちが暮らす社会では、様々な個性や背景を持った人が一緒に生活しています。一人ひとり年齢も違えば、性別、出身地、性格なども人それぞれです。障がいのある人もおり、もしかしたら支援を必要としているかもしれません。
 「支援」と聞くと何やら固い感じがしますが、難しく考える必要はありません。山口大学学生支援センター学生特別支援室准教授の岡田菜穂子さんは「支援を受ける人と行う人とが無理なくできたら良いと思う」と語ります。

やり方はひとつじゃない

 支援といっても方法はひとつではありません。例えば、聴覚に障がいのある人に対して、手話や要約筆記、音声認識ソフトを使った支援などがあります。どんな支援方法が良いのかは、もちろん障がいのある人の希望、そして支援が求められる環境とすり合わせて調整します。岡田さんは、支援を受ける人と一緒に支援のやり方を見つけていくことを大切にしているそうです。そうすることで、支援を受ける人や状況に合った方法を見つけたり、支援を行う人も「書いて伝えてみようか」など、自分にできそうな方法から提案したりすることができます。支援の方法は必ずしもひとつではないのです。

応援や声かけだって

 特別な支援のやり方を知らない、学んだことがないという読者の皆さんも、安心してください。皆さんの中には困っている人を見つけたとき「何かお困りですか、お手伝いしましょうか」と声をかけたことがある人もいるでしょう。まさにその声かけこそ支援の第一歩なのです。皆さんが日々何気なく行っているお手伝いや手助け、応援、声かけも、「支援」と同じように相手に寄り添い、一緒に困難や壁を乗り越える立派な方法のひとつです。

まずは知ることから

 岡田さんは「色々な人がいることを知っておくことも支援につながる」と語ります。例えば、「〇〇さんにはこんなしんどさがある」「〇〇さんは体調面に困りごとがある」といった感じです。人によってしんどさや困りごと、ニーズは異なるし、苦手なことがあっても得意なこともあるはずです。そしてしんどさや困りごとは、状況によっては誰でも当てはまることかもしれません。
 「知ること」の積み重ねは、自分の中にある勝手な思い込みや決めつけをなくすことにもつながります。まずは色々な人がいることをわかっておく、想像することから始めてみましょう。

多様な支援の動き

案内標識調査:教室の案内標識の見えやすさを調査する様子。様々な色覚特性を持つ人の見え方を疑似体験して、改善点を探る。

 山口大学でも支援の動きがあります。SSR(Student special Support Room:学生特別支援室)の学生スタッフは、障がいなどのある学生が学生生活を送りやすくするために活動しています。教室の標識の調査に携わっている福原さんは、「教室の案内標識の見えやすさを色々な視点から調査して、改善点があるかを他のスタッフや先生と相談している」と語ります。また、補聴システムや支援で使う道具の使い方の動画作成に携わっている藤井さんは、「支援機器の使い方を学んだり、どうやったらわかりやすく説明できるのかを考えたりするので、学ぶことが多い」と語ります。学内バリアフリー調査に携わる稲村さんは、「車いすに乗る調査の際は、車いす利用者の漕ぐ速さを推測しながら取り組んでいる」と語ります。同じく学内バリアフリー調査に携わる浅田さんは、「調査をどう支援につなげていくのかを意識している。車いす利用者に配慮して、負担がかからないように想定している」と語ります。
 他の人と相談や意見交換をしたり、支援について学んだり、支援の形は様々で、当事者と直接関わる支援にとどまりません。考えること・学ぶこと・思うこと・想像すること……どれも大切な支援の要素なのです。

  • 動画作成:補聴システムや支援で使う道具の使い方の動画を作成している様子。
  • 学内バリアフリー調査:学内のバリアフリー調査を行う学生スタッフ。教室から教室までの移動のしやすさや教室内に車いすが入るスペースがあるかなどの調査を行っている。

自分なりの「支援」との関わりを見つける

 「支援」へのハードルが少しでも低くなったでしょうか。「知ること」のような一見関わりがなさそうなことが「支援」に結び付いています。お手伝い、手助け、応援、声かけ、知ること、考えること。「支援」のスタートラインは人それぞれで大丈夫なのです。

 


取材協力:山口大学学生支援センター 岡田 菜穂子 准教授/イラスト:YU-PRSS 山口大学広報学生スタッフ 村田 一樹

 

こんなに違うの!? イギリスの教育

日本ではどこに住んでいても学校で学ぶ内容はほぼ同じです。小学校は6年間、中学・高校は3年間。教育年数は国が定めています。
では、他の国はどうなのでしょうか?イギリスの小学校教育に焦点を当ててみます。

YU-PRSS 山口大学広報学生スタッフ 江藤 由喜

地域によって異なるイギリスの教育

 イギリスは、5歳から16歳までの11年間を義務教育として定めています。しかし、小学校や中学校の年数は地方によってバラバラです。各地方が独自の教育方法を定めているのです。
 生まれてから23歳までをイギリスで過ごした山口大学教育学部講師のセネック・アンドリューさんは言います。「私は父の仕事の都合で、11歳までに違う地域へ2回引っ越ししました。イギリスの小学校は地域が変われば教育方法も変わり、学ぶ内容にも大きな違いがありました」

一律の教科書がない!?

 何より日本の学校と違うのは一律の教科書がないことです。小学校ではそれぞれの学校、それぞれの先生が、子どものニーズや理解度に応じたプリントやワークを用意するなど、独自の方法で教えています。日本の学校のように黒板に向かって座るスタイルでもありません。皆さんはグループ活動を行うとき机を囲みますよね。イギリスでは常にこの形です。そしてあるグループは文章題、あるグループは九九の復習など、それぞれに応じた学習を行います。個人の理解度が重視された授業だからこそ教科書がないというわけです。

1つの学校へ30カ国から!?

 もうひとつ、一律の教科書がない背景として、イギリスにはヨーロッパのみならず世界各地から人が集まっていることが挙げられます。生徒たちのルーツもさまざまです。とある学校では、およそ30カ国から集まった生徒が学んでいるとのこと。教科書が一律に定まっていないことで、様々な言語や理解度の生徒に合わせた教育を行うことができるのです。
 国によって教育方法が異なるなんて驚きですよね。他の国ではどんな教育が行われているか、調べてみると面白いかもしれません。


取材協力:山口大学教育学部 セネック・ アンドリュー 講師

 

南極観測隊員に選ばれました!

 第65次南極地域観測隊として南極に出かけることになりました。今年の11月から来年の3月まで、4か月間の長旅です。
 南極大陸には、南極氷床と呼ばれる地球で一番大きな氷の塊があります。そこには地球上にある淡水の60%以上が閉じ込められています。そのためこれが溶け出すと、海面が上昇したり海の水の巡りが変化したりと、地球の環境や生物に大きな影響を与えてしまいます。
 この南極氷床を溶かす原因のひとつが“温かい”海水のようです。南極の海の深い場所には、周極深層水という周りに比べて水温の高い海水があり、これが大陸から海面に張り出した氷の下に潜り込むことにより、南極氷床を溶かしているのではないかと考えられています。
 わたしたちは周極深層水などの影響により南極氷床が過去から現在にかけてどのように変化してきたのか、そしてその変化が生物たちにどのような影響を与えてきたのかを調べます。無人潜水機を使って海底面の撮影をしたり、さまざまな採泥器を使って海底の泥を採取したり、ハンマーやシャベルを使って陸上の堆積物を採取したりして、そこに含まれる化石や生物などを調べることを計画しています。
 山口大学では、これまでに多くの教員が南極観測に参加しています。わたしにとっては初めての南極です。今までに見たこともない景色や発見と出会えるかと思うと、とてもワクワクします。もちろん、可愛らしいペンギンたちとの出会いも楽しみです。

 

 

お菓子な科学実験 ぷるぷるプリンをつくってみよう!

一度かたまったら戻らない!? タンパク質の不思議な性質「変性」

YU-PRSS 山口大学広報学生スタッフ 堀井 皇誠

 生卵を加熱するとかたまります。同様に、卵と牛乳でできたプリン液を加熱するとかたまります。当たり前のことですが、よくよく考えてみると不思議な現象ですよね。これには卵に含まれているタンパク質が関係しています。山口大学教育学部准教授の森永八江さんは、「加熱や凍結、酸や塩などの影響によって、タンパク質の分子や立体構造が変化し、食品の見た目や性質が変わる」と説明します。これを「タンパク質の変性」といいます。
 つまり、プリンがかたまるのは、卵に含まれているタンパク質が、熱を加えることで構造を変えるからなのです。一度熱でかたまったプリンは、冷やしても元に戻ることはありません。これはタンパク質の構造が変化しているためで、このことを不可逆性といいます。
 プリンのかたさは、卵の量によって自在に変えることができます。卵の量を増やすとかためのプリンに、減らすとやわらかいプリンに仕上がります。また、砂糖や牛乳の分量、加熱時間、加熱方法などの条件もかたさに関わります。ぜひいろいろ試してみてくださいね。

 

◆ぷるぷるプリンの作り方

【材料:1人分】

  • 卵 25g(1/2個)
  • 砂糖 15g
  • 牛乳 60g
  • バニラエッセンス 少々
  • バター 少々
  • カラメルソース(砂糖 10g、水 10g)

 

【事前準備】

  • プリン型に薄くバターを塗る。
  • 鍋に砂糖と水を入れ火にかけてカラメルソースを作る。できたソースはプリン型に注ぐ。
  • 蒸し器の用意をする。

 

【作り方】

  • (1)
    ボウルに卵と砂糖を入れてよく混ぜる。
  • (2)
    牛乳を温めて(1)に加え、混ぜ合わせたら、裏ごしして、バニラエッセンスを加える。
  • (3)
    準備したプリン型に(2)を注ぐ。
  • (4)
    蒸し器で10~15分蒸す。この際、水滴がプリンに垂れないよう蒸し器のフタに布巾などを巻き、フタを少しずらして蒸す。
  • (5)少し冷めたら周囲に竹串を入れ、皿に移す。
    ※画像はカラメル抜きで作ったものです。

 


取材協力:山口大学教育学部 森永 八江 准教授

 

ヤマミィ4コマ『年末はやっぱり、ね』


企画:YU-PRSS 山口大学広報学生スタッフ
清水 聡乃、田村 千夏

 

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YU-PRSS 広報学生スタッフ紹介

 

編集後記

 冬は寒いですが、空気が澄んでいます。おかげで星がきれいです。冬の空にはシリウス、リゲル、ベテルギウスなど1等級以上の明るい星がオリオン座周辺に集まっていて見事です。
 ところで、人工的に星空を楽しめるプラネタリウムは、日進月歩で進化しており、最新の設備では天の川など暗い星の表現が著しく向上しました。天の川が小さな星の集合体であることがちゃんとわかります。
 その一方で、明るい星の表現はまだまだです。実際の星のように、漆黒の宇宙を背景に、小さな点がキラリと輝く様子は表現できていません。
 冬の夜は寒いですが、本物の星の鋭いキラリ感を楽しめる季節でもあるのです。


発行人 山口大学長 谷澤 幸生 / 編集長 山口大学教授 坂口 有人
デザイン・企画 株式会社無限 / 発行 山口大学総務企画部総務課広報室
〒753-8511 山口市吉田1677-1
TEL: 083-933-5007 FAX: 083-933-5013
E-MAIL: yu-info@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)

総発行部数155,000部 / 山口県内の教育委員会・学校等を通じて、児童、生徒、保護者、先生方に配布します。次回2024年4月発行予定。

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