国立大学法人 山口大学

本学への寄付

入学式式辞

令和6年4月3日

学長式辞
谷澤 幸生

 新入生の皆さん、山口大学ご入学、おめでとうございます。
 保護者の皆様のお慶び、ご安心もひとしおと思います。教職員を代表して心からお祝い申し上げます。

 今年は寒暖差大きな日を繰り返し、3月には季節に不似合いな寒い日がありましたが、おかげで桜の開花が遅れ、入学式を桜満開の中で迎えることができました。今日はあいにくの雨になりましたが、ここ数日の急速な桜の開花と春の訪れは、季節の変化の勢いを感じると同時に、皆さんの入学を祝っているようでした。
 過去数年、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、従来の形での入学式が挙行できませんでした。昨年は、全入学生が一堂に介しての入学式を執り行うことができましたが、保護者の皆様には会場でのご参加をご遠慮いただいておりました。今回ようやく、5年ぶりに保護者の皆様にもご参加いただく形で入学式を挙行できることになったことは大きな喜びです。

 皆さんは、新たに大きな希望や期待と少しの不安を胸に抱いて、山口大学に入学して来られたことと思います。
 皆さんが入学した山口大学は、1815年に「山口講堂」という私塾として山口市中央部の一の坂川のほとりに開校されて以来、今年で209年目を迎えており、日本で最も古い歴史を持つ大学のひとつです。その長い歴史の中で、山口大学は着実に進歩・発展してきました。現在では9学部、8研究科を擁する基幹総合大学で、約10,000人の学生が学んでいます。約4,000人の教職員が様々な分野、領域の研究に従事する傍ら、皆さんの教育や学生生活のサポートを行っています。来年春には「ひと・まち未来共創学環」という新しい教育組織や、人文・社会科学融合系の新しい大学院も開設されます(※ 設置計画は予定であり、変更する場合があります)。山口大学は絶え間なく、未来に向けて進歩を続けています。

 2023年1月、「明日の山口大学ビジョン2030」を制定し、公表しました。ホームページにも掲載されており、国際総合科学部の学生が描いてくれたグラフィック・レコーディングによるイラストも付いているので、是非、一度ご覧になってください。このビジョンでは、2030年に向けて、「知の創造としなやかな人材の育成により、地域に・世界に貢献する山口大学」を中心的な目標として定めています。
 「知の創造」は大学の重要な使命です。山口大学では、総合大学の知を集め、新しい知を創造しています。例えば、不老長寿は人類の夢です。かつて、「がん」は死を意味しました。しかしながら、最近20年、30年の間の医学の進歩は、がんを克服可能な疾患にしました。最近では、免疫療法が注目されていますが、山口大学では世界最先端をゆくがん免疫治療の開発・推進などを展開しています。このがん免疫治療や、ゲノム編集の臨床応用に向けた研究をさらに強力に進めるために、「細胞デザイン医科学研究所」を昨年秋に設置しました。また、地球規模の気候変動に対して、カーボンニュートラルの達成は全人類に課された課題です。山口大学では「山口大学グリーン社会推進研究会」を組織し、8つの部門でグリーンエネルギーや水素関連技術の開発など、様々な取組を行っています。これらはごく一部の例ですが、「山口学研究」などに代表される人文・社会科学融合系分野での研究も加えて、これらの活動による「知の創造」の結果は、皆さんの授業にいち早く取り入れられ、かつ、実習・研究などを通して、皆さんもこの「知の創造」に参加することになります。高等学校までの教育ではすでに確立された「知」について学んできましたが、大学ではそこへ更に新しい「知」を加え、イノベーションを導き、次の時代の先導に参画するのです。
 「しなやかな人材育成」も先に述べた「知の創造」と密接に関係するものです。世の中は絶え間なく進歩し、大きく変化しています。高度に情報化された世界ではすべてのもの、更には人までがインターネットに繫がり、デジタルトランスフォーメーションによって社会が高度に効率化されようとしています。仮想空間と現実社会を融合させるメタバースやChatGPTなどの生成AIは身近なものになりつつあり、それらの活用は皆さんの生活や学びをも大きく変化させ始めています。情報化された社会が、どのように人の生活を豊かにしてゆくのか、こうした課題に応えるためには、高い専門性を持ちながら、文系・理系を問わず幅広い教養としなやかな思考力を合わせ持つ人材が必要です。皆さんにはこのような時代をしなやかに切り拓き、創造してゆく人材になってもらいたいと考えています。

 ICTが発達し、情報化された社会においても、対面でのコミュニケーションの重要性は変わらず、従来以上に、一層高まります。今日、皆さんはたくさんの仲間を得ることができました。その中から生涯の友に出会うことと思います。相手をよりよく知るためには、直接の会話以上に重要なものはない、と私は思います。自分自身を知ってもらうためにも、直接のコミュニケーションは大事です。皆さんはこれまでの人生ですでに気づいていると思いますが、人を知り、自分を知ってもらうことが社会を形成するスタートになります。その際には、相手を理解しようとする態度や、相手を思いやる気持ちが大切です。また、自分を理解してもらうためには、言葉に限りませんが、自分を表現する能力を磨く必要があります。これらは皆さんが生涯にわたって必要なものです。大学生活で、友人、先生、社会の人との交流の中で、これらを伸ばしてください。

 さて、最後に、皆さんはどのような夢を描いて山口大学に入学したでしょうか? どのような大人になりたいですか? 若い皆さんには夢を実現するための時間と、機会がたくさんあります。若者らしく、大きな夢を持って、果敢にチャレンジしてください。少々現実離れした夢も大いに結構だと思います。夢は求めなければ実現しません。求めれば実現する夢はたくさんあります。Be ambitious!
山口大学の理念は、「発見し・はぐくみ・かたちにする 知の広場」です。皆さんが山口大学で多くのことを、多くの友を、多くの夢を発見し、はぐくみ、かたちにできることを心から願っています。

 山口大学を卒業するとき、自分自身の成長が実感できること、それが私たちの目標であり、皆さんへの期待です。
 山口大学のキャンパスで、一人ひとりが輝いてください。

 皆さんを心から歓迎します。

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