国立大学法人 山口大学

本学への寄付

卒業式・修了式式辞

令和6年3月22日

学長式辞
谷澤 幸生

 本日、晴れて山口大学を卒業、修了の日を迎えられた2,320名の皆さんに心からお祝いを申し上げます。
 これまで物心ともに卒業生を支えていただいた保護者の皆様、関係の皆様、お慶びもひとしおのことと存じます。おめでとうございます。

 振り返ると、皆さんが入学された令和2年は、前年12月に中国・武漢で原因不明の肺炎が報告され、明けて1月には日本で第1例の新型コロナウイルス、COVID-19の感染患者が報告された年でした。COVID-19の脅威のため、その年は、対面形式の卒業式、入学式は中止せざるを得なくなり、卒業生や入学生に対しオンラインで学長式辞やエールを届けるという不規則な形となりました。授業も、当初はオンラインで、次いでオンラインと対面を組み合わせた形式での実施となり、後期になってようやく原則として対面授業が実施されるようになりました。加えて、課外活動も大きな制限を受けました。大学での授業や課外活動などがほぼ旧来通りに実施出来るようになったのは、昨年5月にCOVID-19が2類相当から5類に変更されてからのことでした。入学式・卒業式については、一時は中止を余儀なくされたものの、令和2年度の卒業式以降は対面で開催できました。しかし、初めの2年間は午前、午後の2部構成での開催、令和4年度の卒業式からは全卒業生が一堂に会して開催できましたが、いずれも保護者の方の来場はご遠慮いただき、オンライン中継のみのご参加の形式とさせていただいておりました。そして、今回、5年ぶりに従来通りの開催となり、このようにたくさんの保護者の皆様にもご参加いただき、卒業生の門出を皆でお祝いできるようになったことをとても嬉しく思っています。
 晴れて本日の卒業を迎えるまでには、このウイルス感染症の影響に限らず、多くの困難に遭遇し、それを乗り越えてこられたことと思います。それらは今となっては全て良い思い出となり、また、将来への自信につながってゆくと確信しています。

 COVID-19がもたらしたものは、負のものばかりではありませんでした。オンライン授業では当初、戸惑いもありましたが、一方で、便利さも享受できるようになりました。インフラの整備が進み、ICTが身近なものになり、インターネットを介した遠隔地にいる人との会話や会議がとても簡便にできるようになっていることを実感します。今後さらに、メタバースと呼ばれる、インターネット上での仮想空間の実社会での活用や、ChatGPTに代表される生成AIの進歩は、社会のあり方そのものを大きく変えてゆく可能性があります。一方で、私たちは、人と人とが直接対面してコミュニケーションすることの重要性や、直接の対面コミュニケーションでしか伝わらない事があることを、また改めて認識することができました。

 世の中は絶え間なく変化し、進化し続けています。山口大学では昨年1月、2030年に向けての指針、「明日の山口大学ビジョン2030」を策定しました。この中で、「知の創造としなやかな人材の育成により、地域に、世界に貢献する」ことを目標に定めています。「しなやかな人材」は、「絶え間ない変化、進歩に柔軟に、力強く対応し、その時代を切り開いて行ける人材」を意味しています。皆さん一人ひとりがそのような人材として、自身と家族の未来を、地域、日本、そして世界の未来を担い、切り開いていってくれることを期待しています。変化を続ける社会を切り開いてゆくためには、研ぎ澄ました専門性に加えて、自然科学、人文・社会科学を問わない幅広い教養が必要であることも、山口大学での学びを通して、皆さんは理解し、身に付けていることと思います。

 目の前には多くの解決すべき課題が山積しています。例えば、地球温暖化は地球規模の人類への脅威であり、近年の気候変動はそのことを実感させます。カーボンニュートラルの実現が求められていますが、そのためには、多くの社会構造の変革が必要です。生活様式の変更も必要になるでしょうし、新たなエネルギー源や、産生技術の開発、エネルギー消費のあり方の見直しなど、生活・産業構造が変わってゆく必要があります。ICTやデジタル技術のさらなる活用などは、すでに現在進行形になっています。一方で、変化や困難の中には、多くのチャンスも生まれます。力強くチャレンジし、チャンスを呼び込んでください。

 未知の領域に踏み込んでゆく際には、当然、数多くの不安もあります。小説『赤毛のアン』の主人公は、 “I love bended roads. You never know what may be around the next bend in the roads.” と述べています。「私は曲がりくねった道が好きだ。曲がりくねった道の先にはどんな景色が見えるのか、どんなことが待っているのか、どんな人が待っているのか知る由もない。そのことが好きだし、ワクワクする」というような意味だと私は思います。この言葉のように、これくらいの余裕と胆力を持って立ち向かってゆきたいものです。
 そうはいっても、ともすれば重圧に押しつぶされそうになる時もあるかもしれません。そのような時、皆さんの周りには、家族や友人など、皆さんをサポートする多くの人がいます。山口大学で得た友人や恩師も大きく力になってくれることと思います。これからの人生の中で、人との繋がりはとても重要です。絆を大事にしてください。山口大学も卒業生一人ひとりを大切にサポートします。山口大学との絆も、時々に思い出し、頼りにしてもらえると嬉しいです。

 もう一つ、重要なことは、夢を持つこと。夢は困難を乗り越えさせてくれます。皆さんは、自己実現、ということを考えたことがあるでしょうか。私は、自己実現が、幸せの重要な要素の一つであると思っています。自己を実現することは、言い換えれば、夢を叶えること、ではないでしょうか。たとえ一部でも自己実現できれば、夢を叶えることができれば、そんなに幸せなことはありません。
 皆さんは夢を持っていますか? 実現したい未来は何でしょう? あまり意識していなくても、漠然とでも、夢はあるはずです。若者らしく、夢に向かって果敢にチャレンジしてください。夢を追いかけてください。私も、まだ、夢の実現に向けて、皆さんに負けないようにチャレンジをしてゆきます。ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテは、「夢を持たない人は、現実を超えることはできない」という言葉を残しています。「夢をみることができるなら、それを実現することもできる。If you can dream it, you can do it!!」とは、ウォルト・ディズニーの名言です。
 夢を持ち、夢を追いましょう。

 皆さんの輝かしい未来を心から願っています。そして山口大学は力の限り皆さんを応援します。

 令和5年度、山口大学卒業生、修了生の未来に栄光あれ!

 

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