国立大学法人 山口大学

本学への寄付

卒業式・修了式式辞

 

 本日、晴れて卒業、修了の日を迎えられた2,286名の皆さんに、心からお祝いを申し上げます。これまで物心両面にわたり卒業生を支えていただいた保護者の皆様、関係の皆様、お慶びもひとしおのことと存じます。誠におめでとうございます。

 皆さんが本学において研鑽を積まれたこの数年は、世界が大きく揺れ動く時代でした。感染症の拡大、国際情勢の緊張、急速な技術革新、そして価値観の多様化―。私たちは今、かつてないほどの不確実性と向き合う時代に生きています。このような時代においては、確かな道筋があらかじめ用意されていることは、もはや稀であると言わざるを得ません。むしろ、自ら問い、思索し、自らの責任において進むべき道を選び取る力こそが、これまでにも増して求められています。

 本学に多大なる足跡を遺され、先日、惜しまれつつご逝去された、第10代山口大学長であり、数学のノーベル賞とも言われるフィールズ賞を受賞された世界的な数学者、廣中平祐先生は、かつてこのように述べておられます。
「最も大切なことは、自ら心より好むものを見出し、それを信じて歩み続けることである」
この言葉は、時代のいかんを問わず、私たちに進むべき道を静かに、しかし確かに指し示すものであります。

 廣中先生ご自身、決して順風満帆な道のりを歩まれたわけではありません。しかし、自らの関心を信じ、ひたむきに探究を続けられた結果、世界的な業績へと至られました。先生はまた、本学の理念「発見し・はぐくみ・かたちにする 知の広場」の策定を主導されました。そこには、「若き人々に語りかけたい」との深き思いが込められております。夢を発見し、それを育み、社会の中で具体的な「かたち」へと結実させる。この営みこそが、学びの本義にして人生の本質であるという教えです。

 さらに先生は、その理念を実践する場として「おもしろプロジェクト」を創設されました。学生の自由闊達な発想を尊び、「失敗を恐れず、思う存分に試みよ」との精神を体現されたのです。この精神に基づき、仲間とともに挑戦し、確かな「かたち」を残した方も、ここにおられることでしょう。これらの教えと実践は、皆さんのこれからの人生にもきっと参考になるはずです。

 さて、ここで改めて皆さんに問いたいと思います。皆さんは、この山口大学において、何を発見し、何をはぐくみ、そして何をかたちにしてこられたでしょうか。学問の中に真理を見出したこと、生涯の友や導きとなる師に出会ったこと、あるいは自らの人生について深く思索したこと。それらはすべて、皆さんが本学で得たかけがえのない「発見」であり、財産です。

 ここで、もう一つ、皆さんの記憶に刻まれているであろう風景に触れておきたいと思います。大学会館前の小高い丘に立つ、一本の大きな樹です。この丘は、つい先ごろ、学生・教職員からの公募により、「希望の丘」と名付けられました。この場で皆さんにもお披露目いたします。「学生も教職員も移り変わっていく中で、ただ一本どっしりと構えて立つその樹が、私たちすべてに希望を抱かせる存在である」という願いが込められています。

 時の流れの中で人は移りゆきますが、変わらずそこに在り続けるものが、私たちに進む力を与えてくれます。卒業後も折に触れてこの「希望の丘」を訪れてください。そして、学生時代を懐かしむとともに、新たな志と希望を、心の中に育んでいただきたいと願っています。

 皆さんは今日、2026年3月24日に山口大学を卒業する同窓生です。山口大学は創基211年を迎える誇りある大学です。皆さんは、みんな繋がっています。友人と、先生と、お世話になった職員の皆さんと、そして山口大学と繋がっています。いつまでも繋がっていましょう。折に触れ、帰ってきてください。お待ちしています。

 不確実な時代とは、新たな可能性が開かれている時代でもあります。自らの内に芽生えた問いと関心を信じ、本学での学びを礎として、それぞれの人生を力強く切り拓いていってください。

 結びに、皆さんの前途に幸多からんことを祈念し、先人たちが育み、受け継いできた伝統が、今後も皆さんの手によって輝き続けることを願い、式辞といたします。

 本日は、誠におめでとうございます。

令和8年3月24日
山口大学長 谷澤 幸生

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