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2021年5月24日

 西日本は早くも梅雨入りしました。山口も先週は雨がよく降りました。
 休日、私は市内を自転車でぶらり一回りすることがあります。皆さんは今、自分が住んでいる地域が、どのような経緯で今のような街並みになったかを想像されたことはありますか。自転車で巡りながらそのようなことを考えます。
 今住んでいる地域の街並みは、過去のその時々でさまざまな事情が複雑に相互作用した結果による「準安定的な状態である」と言えると思います。その時々で「最安定な状態」(それが必ずしも最適解とは限らないのかもしれません)があったのでしょうけど、その状態にするには膨大なエネルギーが必要であり膨大な時間がかかります。そこで、とりあえずはその時々で「準安定な状態」を選んできた結果が今の姿なのでしょう。政治、外交、ビジネス、業務、日常生活、いろいろなところでも似たようなことはありますね。「そうなればよい(そうできればよい)のだけど、なかなかね。」というわけです。
 私の専門は高分子物理学という分野です。今現在行っている研究テーマの一つに、高分子の結晶の中で起きる準安定最安定相転移(相転移:大雑把に言えば状態の変化)の進行メカニズムというのがあります。物質が準安定状態から最安定状態に変化する現象はよくあります。その変化は、金属のような単原子から構成される物質や低分子物質では比較的容易に進行する場合が多いです。しかし、高分子の場合は、たくさんの原子が共有結合してできている巨大な分子ですので、相転移がすんなりとは進行しない場合が多々あります。「本当は変化したいのだけど、なかなかね。」というわけです。まあ、研究としてはそこが面白いのですが。
 私はこのような物事の見方や思考を他のところにもついつい適用してしまいます。最初の「街の今の姿」の話もその例です。職業病かもしれません。他の方々から見たら「へんな奴」かもしれませんが、その一方で「独創的」な感性を持っているなあとも思われるかもしれません。何か新しい仕事を遂行するときに、いろいろな「職業病」を持った多様な人が集まった方が多様なアイデアが出てきてよさそうですね。ただし、船頭役は必要です。これがダイバーシティーの考え方。
 国や自治体、その他さまざまなところでいろいろな方々が頑張って取り組んでおられる新型コロナウイルス感染症対策、「本当はこうしたいのだけど、なかなかね。」ばかりなのでしょうね。

市街地中心にある亀山公園から望む山口市内

 

太鼓谷稲荷神社から望む津和野の街並み(島根県です)

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