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2019年4月23日

 いよいよ「平成」が終わり新しく「令和」の時代を迎えようとしております。過去の学部長のつぶやきに書きましたが、私にとって「昭和」は少年+学生時代の成長期、「平成」は就職してからの大人の成長期でした。「令和」は私にとってははたしてどんな時代になるのでしょうか。「どんな時代にする」という方がよいでしょうか。いずれにせよ「何らかの充実した成長期」になればいいなあと思います。

 休日には緩いジョギングをしていますが、走っているときもいろいろなことを考えます。先日は川沿いを走っていると中州の葦や対岸の竹林が気になりました。私の専門分野は高分子物理学、今までは特に鎖状の高分子の構造形成についての研究をしてきました。鎖状の分子は、低い温度では分子が一方向に伸びた構造をとり、たくさんの分子が自発的に互いに分子鎖を平行にそろえて秩序的に配列します。鎖状高分子の結晶が定型的なものです。このような秩序配列は単純にいえば自然法則に従ってそのようになるわけです。もう少し詳しくいえば分子同士(原子同士)が作用しあう(相互作用の)結果によります。

 竹や葦も自然界では集団になっていることが多いですね。さらに同じ方向に成長し、完成形では互いに平行に配列しています。もちろん植物学的には当然のことでしょう。高分子の秩序構造と竹や葦の集団の秩序構造、前者は私たちの目には見えないミクロな現象であり、後者は実際に人間の目で観察できるマクロな現象です。その起源も違います。しかし、「こじつけ」ではありますが類似した考え方を当てはめることもできます。竹や葦の集団も高分子もある意味でお互いに支え合い、集団での構造(凝集構造)を安定に保っています。(表現が正確ではないかもしれませんがご容赦ください。)竹や葦が一本だけ立っているとき、強い風が吹けば倒れてしましますが、集団で立っていればお互いに風除けになったり支え合ったりすることで倒れににくくなります。これは、鎖状高分子の場合も同じであり、凝集することで安定な状態になります。

 そうなると集団の端は少し様子が異なります。端(表面)には支え合う相手がおりません。この状況はある種の不安定性を生じさせます。その結果、例えば竹林では、画像のように端にある竹は倒れてしまいます。これは分子の凝集体である結晶の表面も同じことがいえます。内部と表面では性質の違いが生じます。

 以上のように「こじつけ」で竹や葦等の植物の集団と原子・分子の集団(凝集系)の類似性を無理やり議論してみました。とても正確な議論とはいえませんが、なんとなく理解できませんか。専門家集団からはお叱りを受けそうですが。結局のところ我々人間も集団社会ではお互いに支え合うことによって安定性を確保することで成り立っているわけですね。

竹林(集団)中ほどの竹は立っているが、端部の竹は倒れている
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