数理科学科3年生前期の講義に「現代数学展望」があります. 1回完結が15回,各教員が代わる代わる自分の好みの数学について講義を行います.
5月25日(月)の「現代数学展望」は私が担当でした. 全然, 「現代」ではありませんが, 私はエラトステネスの篩(ふるい)を講義しました:
\(x, z \ge 2\) を実数とし, \(\Phi(x,z)\) を\(x\) 以下の自然数 \(n\) で, 素因数分解したときの素因数 \(p\) がすべて \(z\) より大きいものの個数とします. ただし,\(n = 1\) もその個数の対象として含めることにします.
定理1 \(x \ge z \ge 2\) とする. \(x , z\) について一様に
\[ \Phi\left({x,z}\right) = x \prod_{p \le z} \left(1 – \frac{1}{p}\right) + O\left(x(\log z)\exp\!\left(- \frac{\log x}{\log z}\right)\right) \]
が成り立つ.
(ここで, \(O\) はランダウのオーです. )
この定理の証明にはメビウス関数を用います. メビウス関数 \(\mu(n)\) を次のように定義します. \(\mu(1) = 1\), \(n = p_1 p_2 \cdots p_k\)(\(k\) 個の相異なる素数の積)のとき, \(\mu(n) = (-1)^k\), それ以外の \(n\)(つまり, \(n\) はある素数の 2 乗で割り切られる. )のとき, \(\mu(n) = 0\) と定める. 高等学校の数学で学ぶ組み合わせや 2 項定理を用いて, 次の定理を示すことができます.
定理2 \[ \sum_{d \mid n} \mu(d) = \begin{cases} 1 & (n = 1) \\ 0 & (n > 1) \end{cases} \]
(ここで, 左辺は \(n\) の正であるすべての約数 \(d\) についての和をとることを意味します. )
5月25日の「現代数学展望」では, この定理2などを用いて定理1を証明しました.
定理2を少し変形してエラトステネスの篩を改めて考え直すブルンの純篩と呼ばれる手法があります. 何年か前の共通教育の講義「自然科学 I」で, 医学部の学生さんにそれを講義したことがあります. 医学部の学生向け講義なので, 数学の話ばかりではつまらないだろうと思い, ちょっとアブナイ話をしました:
「インドの人は毎日朝昼晩カレーを食べているのに全然お腹をこわさない. カレーの素になる香辛料から潰瘍性大腸炎の薬を作ることはできないか」
「タバコを吸うと潰瘍性大腸炎の症状がよくなるので, タバコから潰瘍性大腸炎の薬を作れないか」
「毎日ヨーグルトを食べると潰瘍性大腸炎が良くなる」
「医者の言うQOL, 患者の言うQOL, 患者の家族の言うQOL は一致しない」
バカなことを数学の講義中に真面目に言ったので, 一部の学生さんは私のことを覚えてくれたみたいで, 湯田温泉の食堂などでわざわざ声をかけてくれました. 私のバカ発言が将来の診察の時の雑談に活用されることをひそかに期待しています. (南出)
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参考文献
- Tenenbaum 著 `Introduction to Analytic and Probabilistic Number Theory’ AMS, 2015.
- 辛島 昇 著 大村次郷 写真 「インド・カレー紀行」, 岩波ジュニア新書629, 岩波書店, 2009 年.
- リジー・コリンガム 著 東郷えりか 訳 「インドカレー伝」, 河出文庫, 河出書房新社, 2016年.
- 笹井 亮平 著 「インドの食卓」, ハヤカワ新書, 早川書房, 2023年.


