数理科学科の2年生前期の科目に「数理科学基礎セミナー」(2単位)があります. 2年生前期には, 「線型代数学I」, 「微分積分学II」, 「集合と位相I」(それぞれ4単位)の講義がありますが, そのうち「線型代数学I」と「微分積分学II」の内容に関する問題演習を「数理科学基礎セミナー」で行います. 履修者は5つのクラスに分かれて, 各クラスで, 履修者は一人ずつ事前に解いた問題について黒板を使って発表を行います. 1クラス教員1名, 学生12名ほどです. 1人の学生の発表を, 教員や他の学生は, その解法や説明をしっかり聞いて, その内容について質問したり, 補足したりします. 先日 (5月19日) の「数理科学基礎セミナー」では, 学生たちが, 私が考えていなかった解法ばかり披露するので, 私はその場で慌ててしまいましたが, 聞いていて面白かったです. 私は概念にばかり目を向けて, 問題固有のものを見ていなかったので慌てる羽目になったと思います. 学生の方がよく勉強しています.
ナーラーヤナの「ヒトーパデーシャ」に白鳥とカラスの話があります. 一本の大きな木に, 白鳥一匹とカラス一匹が住んでいました. ある夏の暑い日, 一人の旅人が疲れてその木の陰で休みます. 旅人はそのまま寝てしまいますが, 時がたち太陽の位置も変わり, 旅人の顔に日光が刺さります. インドの暑い夏です. 白鳥は, 旅人を気の毒に思い, 己の翼を拡げて, 旅人に日光が当たらないようにします. さすが, インドの白鳥です. 人間に慈悲を実践する. 気持ちよく寝ていた旅人があくびをした瞬間, カラスが旅人の口の中に糞をして飛び去ります. このカラス, 暑い中, 機会を狙っていたのでしょうか. どうもクサイです. カラスの糞で目を覚ました旅人が見たのは翼を拡げている白鳥です. 旅人は白鳥の仕業だと思い, 白鳥を殺してしまいます. 旅人がこの糞の味は, 白鳥ではないと冷静に判断できていればこんなことは起きなかったと思います. たくさんの演習問題を解くことで, 問題の状況や問われていることは一体何であるか, 何を確認すれば良いのかを判断できるようになると思います. そうなると, 数学の勉強はより楽しくなると思います. (南出)
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参考文献
- ナーラーヤナ 著 金倉円照・北側秀則 訳 「ヒトーパデーシャ」, 岩波文庫 赤 61-1, 岩波書店, 1968. (特に, p.163)


