かなり暑くなってきました. 数理科学科の学生のみなさんはへばらずに授業を聞きに行っているでしょうか. もちろん, 聞いているだけではダメです. しっかり聞いて, しっかり考えて, しっかりノートに書く. 6月13日(土), 14日(日), 暑い中, 私は授業の予習をした後に, Hardy-Wrightの本を手元において, 自分の論文の手稿をノートパソコンで TEX 原稿にしていましたが, 暑いし, 数式には添え字が多いし, タイプするとうるさいし, イライラして二日とも途中で断念しました. 数理科学科の学生にとってTEXは卒業論文を書くために必要ですから, 是非TEXを修得してください. 1年生の後期にTEXの授業が少しあると思います. 2年生, 3年生の授業でも TEX を使うことはあります. それでもやはり, 自分でキーボードをタイプする音がうるさいです. 自分が自分の論文をタイプして自分の気分を悪くさせます. 「パソコンのタイプ悪魔の笑い声」
気分転換に, 大学構内をほっつき歩いていましたら, 山口大学が誇る大賀ハス(オオガハス)が二つ, 三つ咲いていました. 紅白2種類あります. 平成二十一年に, 仁保下郷の源久寺さんから大賀ハスの株を譲り受けて, 山口大学で育て続けているそうです (正門に入ってすぐ左側, 小川のすぐ横). 昭和26年に大賀一郎が, 多くの協力者の力を借りて, 千葉県・件見川の東大農場の泥中から約二千年前のものと推定されるハスの種三つを見つけたそうです. そのうち一つの種が花を咲かせ, それが大賀ハスと呼ばれているそうです (栗田勇「花を旅する」参照).
桃色のハスは, 恐らくサンスクリットで, padma といい, 漢訳に蓮, 蓮華がありますが, 他に紅蓮, 赤蓮華があります. 梵英辞典を見ると, a lotus (esp. the flower of the lotus-plant Nelumbium Speciosum which closes towards evening; often cofounded with the water-lily or Nymphaea Alba) と説明され, 花の色については書かれていません. 辞典の編者にとっては, ハスはスイレンと違うことを強調したいようです. 一方, 白色のハスは, サンスクリットで pundariika といい, 分陀利華 (ふんだりけ) などと音写されます. 漢訳に, 蓮華もありますが, 白蓮, 白蓮華などもあり, やはり白色であることが肝心だと思われます. 梵英辞典には, a lotus-flower (esp. a white lotus; ifc. expressive of beauty) と説明されています. こちらは, 白色や美しさが強調されています.
白い蓮の花を見ていて, 親鸞の正信偈 (教行信証)に「是人名分陀利華」(ぜにんみょうふんだりけ)という言葉があったのを思い出しました. 智慧ある者が分陀利華と讃えられているのですが, 現実は, ほとんどの人にとって智慧を実践するのは難の難です. 「無量寿経」にお釈迦さんの人々への苦言が書かれています.
「しかるに世の人、薄俗にして、ともに不急の事を諍う。この劇悪極悪の(世の)中において、身を勤めて営務し、もってみずから救済す。尊となく卑となく、貧となく富となく、少長・男女、ともに銭財を憂う。(銭財の)あるものもなきものも、同燃にして、憂いの思いはまさに等し。屛営として愁苦して、念いをかさね、慮りをつみ、心のために走せ使われて、安き時のあることなし。」
(「浄土三部経 (上)」岩波文庫, p.202, p.203 より抜粋. 参照 p.98, p.99.)
お釈迦さんの苦言はまだまだ続きます. 耳がイタイ. 私はいつも学生に「黙って計算しろ. 文句を言うな!」とエラソーに言っています. 分陀利華からは程遠いです. パソコンにイライラしている場合ではありません. 分陀利華を見て, わたくしを聞く.
数理科学科の学生のみなさん, 数学の調子が良くても悪くても大学のハスを見に行ってください. 何か良いことに気が付くことがあるかもしれません. (南出)
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参考文献
- G.H. Hardy, E.M. Wright, An Introduction to the Theory of Numbers, 第6版,Oxford University Press, 2008.
- 栗田 勇 「花を旅する」岩波新書 722, 岩波書店, 2001. (p.85-87)
- Monier-Williams, A Sanskrit-English Dictionary, Oxford University Press, 1956.(p.584(padma), p.631(pundariika))
- 荻原雲来 編纂 辻直四郎 協力 「漢訳対照 梵和大辞典」増補改訂版 鈴木学術財団刊, 講談社, 1979. (p.733 (padma), p.790 (pundariika))
- 中村 元, 早島鏡正, 紀野一義 訳註 「浄土三部経 (上)」岩波文庫, 岩波書店, 1963. (p.202, p.203, p.98, p.99)

