しばらく雨が続いていましたが, 6月28日は少し晴れました. 雨の日は, 道路に溜まった雨水の上を車が躊躇わずに走り私にバシャバシャと汚い道路の雨水を浴びせるので困ります. まさに荘子の言う「機心」の現れだと思います.
孔子の弟子の子貢が農村を歩いていて, 農作業をしている御老人に出会ったときの話です. その御老人は, 切通しを掘って井戸に入り, 甕(かめ)に水を汲んで, 甕を抱えて上がってきて, 畑に水をやる(井戸への切通しとは一体どんなものでしょうか?). その作業を見た子貢は「何を無駄なことをやっているんだこのジジイは」と思い, 御老人に撥釣瓶(はねつるべ)を使ったらどうですか, と声をかけます. 「撥釣瓶を使った方が, 業務負担削減できますよ. とっても楽ですし, 農作業の能率も上がりますよ」と子貢は御老人に言います. 御老人は, 子貢の言葉に動じることはなく, 笑顔で応えます.
「わしの師匠に聞いた話だがね、仕掛けがあれば、必ず仕掛けで仕事をするし、仕掛けで仕事をすれば、必ず仕掛けへの依存心を持つものだ。仕掛けへの依存心が胸に生ずれば、純真無垢な心が損なわれ、純真無垢な心が損なわれれば、霊妙な生のいとなみは不安定になる。霊妙な生のいとなみが不安定になれば、もはや道に見放されてしまう。わしはその仕掛けを知らないわけじゃないが、恥ずかしくてとても使えないのさ」
(福永光司, 興膳 宏 訳「荘子 外篇」(ちくま学芸文庫), p.149, 150 から抜粋. )
「仕掛けへの依存心」のあたりの原文は「必有機心 機心存於胸中 則純白不備」です. 人間が機械を使うことで機械に依存してしまう人間の心理を荘子は「機心」と言っています. 新幹線の中でノートパソコンをパチパチやるのも機心の現れだと思います. 「パソコンのタイプ悪魔の笑い声」です. 車が雨水を歩行者に浴びせるのも機心が生まれているのだと思います. 車が歩行者に汚い雨水を一回浴びせるたびに, 即刻, 車から自動的に警察に通報されるような車を作ってほしいです. もちろん, 車に乗る人がこの機能を停止することはできない仕組みです. 罰金もたくさん取った方が良いです.
私自身, 論文を書くとき, 数式以外の文章については直接パソコンにタイプするととても楽だと感じるのですが, 「これでは機心が育つ」と思い, 先ずはノートに手書きで論文の文章を何度も練るようにしています. それでも英語がヘタクソであることには変わりませんが, 少しは英語が上手くなることを期待しています. また, そうすることで少しでも他人が読みやすい論文になることを期待しています. 数式をタイプするときはいつもイライラしています. 自分のことはさておき, 私はエラソーに指導学生に, 卒業論文, 修士論文の執筆について文句ばかり言っています. 「これを直せ」, 「この文章はよくわからない」などなど. 卒業論文, 修士論文の執筆は早めに始めた方が良いです. もっとも, 書く内容については指導教員とのセミナーをしっかりやることが大切です.
連日の雨で, 痛んでしまった花もたくさんあるとは思いますが, 構内にはきれいに咲いている花もたくさんありました. 数理科学科の学生のみなさん, 中間試験の結果で心傷つかずに, 数学を続けましょう. (南出)
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参考文献
- 福永光司 興膳 宏 訳 「荘子 外篇」ちくま学芸文庫, 筑摩書房, 2013. (p.148, 149, p.150)
- (鈴木大拙が荘子の「機心」について書いていたので, それを思い出して「荘子」を探してきましたが, 鈴木大拙の本が出てきません.)


