数理科学科では, 週一回, 90分程度, 「教科書を読む会」が開かれています. 中学・高校の数学の教員免許(教諭一種)取得を目指す数理科学科の学生たちがこの会に参加し, 中学, 高校の数学の教科書の内容や授業の方法について, 自分たちで模擬授業を行うことを通して, 自分たちで検討しています.
7月2日の「教科書を読む会」では, 山口大学・教職センターの河村先生にお越し頂き, 教員採用試験合格に向けて, 会に参加している数理科学科の学生に, 様々なアドバイスを頂きました.
今回の「教科書を読む会」の模擬授業の内容は, 高等学校の「数学 C, 平面上のベクトル」でした. 一人の学生が, 平面上のベクトルの実数倍やベクトルの平行について模擬授業を行い, 残りの参加学生たちが授業を聞く生徒役を行いつつ, 授業の黒板の内容をノートに取りながら, 教科書の内容, どのように授業すべきかを一人一人考え, 模擬授業の後に, 全員で検討しました. 参加学生たちが, 数理科学科で学んでいる日常の大学の数学を礎に, 高校生の数学の理解の度合い, 数学の経験, 成長の段階を考慮して, 高等学校の「数学C」 をどのように, 高校生に教えるとわかりやすいか, しっかり考察している様子に私はとても感心しました.
「黒板の字がきれい」, 「筆記体で l とb が紛らわしい」,「行動が先生らしい」, 「ベクトルの性質について, 図に頼らずに説明するにはどうすればよいか」, 「定規を使って, 平行な関係にあるベクトルを説明する」, 「授業はじめの導入部分で, どのように生徒をベクトルに引き付けるか」, 「生徒がベクトルの性質を確認する作業が必要」などなど.
私自身, 模擬授業を見ていて, 学生の黒板の字は私が書く字よりもきれいですし, チョークでガンガン黒板を叩かないので立派な授業だと思いました. 私がエラソーにケチをつけたのは, 命題の主張を黒板に書くだけでなく, 読み上げることもした方が良い, です. 命題の意味は誰でもすぐに理解できませんので, 見る, 書く, に加えて, 聞く, というのも理解の助けになるかと思います. しかし, 現実の授業には時間の制約がありますので, 命題の主張をいちいち読み上げる時間が取れないこともあります. また, 模擬授業を聞いていた学生が意見を述べるときに, とても丁寧な言葉使いだったので, それも立派だと思いました. 私も見習う必要があります.
教職センターの河村先生からは授業を行うことについて, 「今日の授業のポイントはどこか」を意識して授業を行うことが大切であると話がありました. そのポイントに対して, 高校生が理解するときのハードルを教える側が意識し, どのように工夫して教えるか. 授業始めの, 前回の復習を行うところが, 今日の授業全体のポイントにつながるような工夫があるとなお良い.
河村先生が, 学生の今回の模擬授業の進め方について, 学生が「ベクトルの平行とは何か」を生徒間で議論する時間を設けたことについて褒めておられました. その生徒間の議論の内容が, 今日の授業のポイントに関連しているのが良い. 生徒が今日の授業のポイントが何であるか, 生徒自ら考えられるような発問を教員ができるように. 生徒への発問は, 教員と一人の生徒との対話ではなく, クラス全体の生徒がその対話を聞けるような形で, クラス全体との対話である方が良い. そのためには, 教員が具体的で身近な問題を挙げて, 今日の授業のポイントに繋がると良い. 考え方や概念を説明する前に, 中身のある具体的なことを考える. 具体的な問題は大切であると, 私も授業をしていてそのように思います. 学生は命題の証明は理解したかもしれないけど, 具体的な問題を定期テストに出題するとできないことはよくあります. 具体的で身近な問題について, 参加した学生たちがいろいろ自分の意見を述べていたのでそれについても私は感心しました. また, 河村先生は, 授業内容を欲張らずに, 今日のポイントを決めて, その説明に専念することが大切だともいわれました. 肝心な部分をちゃんと説明すれば, 残りの部分はある程度, 生徒が自分の力で勉強する.
私自身は, 今日の授業のポイントをあまり気にせずに好き勝手に講義をしていますので, 来週の講義からは, それを気にしながら講義しないといけないと思いました. 河村先生は, 最後に, 教員採用試験に合格することだけを考えて模擬授業をするのではなく, いい先生になれるように意識して模擬授業を行うのが良いとも話されていました.
昨今, 日本社会では, 「教職はブラック」などと揶揄されていますが, このような発言は獅子身中の虫だと私は思います. 誰しも, 少なからず教育を受けた恩恵を受けていると思います. 教職は尊い職業だと私は思いますので, 参加学生のみなさんには, 挫けず努力を続けて, いい先生になってほしいと思います. (南出)
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