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就職活動と卒業研究

このところ, 4年生の卒業研究の時間に3名の学生全員がそろいません. 見学者も合わせて6人でのセミナーですが, 卒業研究が本業である4年生よりも本業でない見学者の方が多くなることもあります. 原因は4年生の就職活動です. 卒業するための卒業研究と就職するための就職活動が重なって, 4年生は肉体的にも精神的にも大変だとは思いますが, 困難を乗り超えてほしいと思います. 就職は本人の能力とは無関係に, 運や境遇に依るところが大きいと思いますが, 仕事に就けないと生活が不安定になり, 苦しい人生になります. 私は就職氷河期の最後の方で, 同級生たちが就職活動に苦しんでいる姿を見ていましたので, 数理科学科の学生のみなさんがなるべく苦しまずに, そして心腐らず安定した生活ができる職業に就けることを願っています. 私はたまたま幸運に恵まれ, 標準よりもかなり長く勉強できる機会が得られ, 現在の職業に就くことができました. それを意識して働いているつもりです. 数理科学科の学生のみなさんには, 幸運は大切に, 悪運には善処してほしいと思います. たまたまの不遇にはやけをおこさないようお願いします.

4年生の卒業研究は, 学生がそろわないので, セミナーはゆっくり進むしかありません. 7月3日のセミナーもそうでした. さらに, セミナーで輪読しているテキストの英文がたまたま難しく, 黒板の前で説明していた学生が読み進められず中断してしまいました. セミナー室は気まずい沈黙状態となりました. このとき, 一人の学生がセミナー中断の原因になっている英文について「これは, 同格のコンマですね」と沈黙を破り, 見学者もそれに応じて英文法の話を始め, 数学のセミナーのはずが, 英語の勉強会みたいになりました. これはこれで面白いセミナーでした. 私の手元にある高校生用の英語の参考書から, 英文を書き抜きます.

`It is easiest to teach mathematics to very young children, for they have inquiring minds and they are self-reliant and they want to understand things for themselves.

It is much harder to teach adults, because so many adults have had their confidence shaken by bad teaching. They feel they are failures at mathematics, and we all shrink from attempting something at which are likely to fail.’
(伊藤和夫 著「英文解釈教室」p.29 より抜粋)

この英文について, 私自身の講義についていろいろ考えさせられますが, 私に都合の悪いことはさておき,この本の初版は50年ほど前の1977年で, 上の英文はインターネットのない時代のものであることに注目してほしいと思います. 一行目の最後の部分, `they want to understand things for themselves.’ は現代のデジタル社会に生きる私たちにとって, とても大切なことだと思います. 自分自身が物事を理解する. みなさんが, 講義を受けるときに, 講義で出題されたレポート課題に取り組むときに, 卒業研究で発表するときに, 卒業論文を書くときに, 修士論文を書くときに, 自分が理解するということを目指してほしいと思います. 自分が理解できたとき, 勉強は楽しくなると思います. 自分が理解する過程で, 失敗することは日常だと思います. 失敗したときに, 何故失敗するのかを考えると, 理解するヒントが自ずから生じると思います. まぁ, 常に上手く行かないこともありますけど. この場合はかなり辛い.

ところで, 何故, この高校生用の英語の本が私の手元にあるのでしょうか? 実は, 私もセミナーのテキストの英文がときどきわからずに, この本で英文法をチェックしていました. セミナー中は学生に対してエラソーにしていますが, 学生の見えないところでこっそり英語の勉強をしています. (南出)

 

参考文献

  • 伊藤和夫 「英文解釈教室」新装版, 研究社, 2017. (p.29), (この本は山口大学の総合図書館にあります.)
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