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花のまち神戸 10×10=20×5

9月2日3日に, かねてより行きたいと思っていた, 花のまち神戸に行きました. 3日に, 昨年度の大学院生との研究を日本数学会(於 神戸大学)で発表するためです. 昨年9月(於 名古屋大学), 今年の1月(於 愛媛大学), 3月(於 東京理科大学)と, 大学院生2名との研究を日本数学会で発表して, 今回は残りの一つの研究の発表です. 昨年度, 私は大学院生に「ぼーっとしているんじゃない!」, 「わけのわかんないこと言ってないで, さっさと計算しろ!」などなど怒ってばかりでしたが, 大学院生と一緒に研究できたのは極めて稀なことでとても嬉しかったです. 数学の研究は時間がかかります. 研究するためには, 数学の土台が必要です. 修士課程2年間という限られた時間の中で(実際には, 共通教育や就職活動, 修論執筆があるので2年も数学を勉強する時間はありません.), 数学の土台を作りながら, いい問題に出会えるかどうかは運も大きく影響します(天才・秀才は別でしょうけど.). 事実, 私は指導学生全員とは一緒に研究できていません. 一緒に研究できたことはとても稀で幸せなことで, それで得られた定理は可能な限り発表して, 論文として出版したいと思っています. 2日に神戸のホテルに到着して, ホテルの人に神戸大学の「ツルコー(鶴甲)キャンパス」への行き方を教えてもらいましたが, 神戸から山口に帰る間際になって鶴甲は「ツルコー」ではなく「ツルカブト」と読むと知りました. ホテルの人は, 私がウキウキしていたので「傷つけてはいけない」と訂正できなかったのだと思います. 3日は, 社会人となった一緒に研究した修了生が私の講演を聞きに来てくれて, 研究の話もできて嬉しかったです.

私は小学校1, 2年生のときに毎日「あのね帳」を書いていました. 神戸の小学校の先生・鹿島和夫先生が実践されたもので, 小学生に毎日ノートに, 日常の出来事を書かせて提出させる, 先生はコメントを付けて, その日のうちにノートを返す, 提出されたたくさんのノートから一部分を抜き取って, プリントにしてクラス全員に配る, このような教育方法です. 文章を書くことで, 物事をしっかり考えられるようにさせる, そのような狙いだと思います. そのノートの名前が「あのね帳」です. 私は神戸ではなく, 京都の小学校に通っていましたが, 私たちの担任の先生がそれを実践されました. 小学校1, 2年生が毎日, その日の出来事を書くのはかなり大変です. 当時, 私は「今日は書きたくない」と思ったことが何度かあります(母は怒っていました「早く書け」と.). 担任の先生はクラス全員分の「あのね帳」を読んで, 赤ペンでコメントを付けて(先生が使う赤ペンのインクカートリッジに入っている玉を貰ったような気もする.), さらに, いくつかを選んで書き写して学級通信にする. 毎日です. 幼心に, 「先生はスゴイ!!」と思いました. 今でも, 先生は一体いつ学級通信を書いていたのだろうかと不思議に思います. 私が現在, 自分の文章の出来の悪さを省みることなく, 卒業研究のセミナーの4年生たちや大学院生たちに, 卒業論文や修士論文について, ブーブー文句を言って, 文章を直させるのは幼い頃の「あのね帳」の経験があるからだと思います. 私の研究室に配属されている学生さんは諦めてください. 南出先生は文句が多いです. みなさんの卒業論文, 修士論文に文句ばかり言います.

私が小学校2年生に上がるときに, 近所の同級生が京都から神戸に引っ越して行きました. 毎日一緒に学校に行っていたので, ショックでした. 小学2年生の私には神戸がどこにあるのかわかりません. 「もう, 宿題を見せてくれる人がいない…どうすんのこれから」

算数の授業の思い出です. 先生が, 折り紙ぐらいの大きさに切ったわら半紙をたくさん配って, 10枚一組にして, クルっと巻いて輪ゴムで括るように言われました. それを10本各班で作りなさいと. 恐らく, 三桁の数の授業だったのだと思います. 私たちの班(5, 6名)は, それを10本作るのに苦戦しました. 全員ぶきっちょだったのかも知れません. 先生が「みなさんできましたか」と声をかけ始めたとき, 我々は出来ていませんでした. 私たちは焦りますが, 私の横にいたその同級生, 悠然と構えていました. そして「10本も作らんでいい. 20枚ずつを5本作ったらいいんや」と言い出して, 私はぽかんとなりました. コイツ何を言い出すのかと思いました. 10×10=20×5 など私は当時理解できていません. まだ九九もやっていなかったと思います. 10枚一組を10本作るのも, 20枚一組を5本作るのも労力は大して変わらなかったと今では思いますが, 「5本やったらすぐ作れるわ」とみんな思ったのだと思います. それで, 意味も解らずに20枚一組を5本作りました. 先生は10枚一組10本が出来上がっていると思い授業をされていましたが, 私たちの班だけ20枚一組5本なので, 先生の説明と合致しません. しばらくして先生が事態に気が付いて, 「それはそれで正しいんやけど」と言いながら, 私たちの班の5本を10枚一組の10本に作り直されました. この出来事は私が数学者を志す一つの縁だったのかも知れません.

数理科学科の学生のみなさん, 自分が気が付かないアイデアを横に座っている人が持っているかも知れません. 数学について, 些細なことでも, 同級生といろいろ議論するとイイコトあるかも知れませんよ. 今の私も, 指導学生とのセミナーで, 自分が気が付いていなかったことに気が付かされることがあります. 9月3日に神戸大学で講演した定理についてのアイデアは, 学生が気が付いたものです. 最初, 私はかなり疑いましたが, 一生懸命考える人は何かいいアイデアに気が付くものだと思いました. 昨年9月の名古屋大学での研究発表も同様で, 学生が気が付いたことが定理になりました.

神戸のまちで, いろいろ思い出しながらコーヒーを飲んでから山口に戻りました. 次の学会も神戸でやってほしいです. 神戸のインドカレーもコーヒーもうまいし. (南出)

参考文献

  • 鹿島和夫 著 むかいさとこ 監修
    「せんせいあのね 一年一組かしま教室 ① ひみつやで」西日本出版社, 2024年.
    (この本は大学の前にあった文栄堂さんで買いました. 本屋さんが少ないのは困る. 山口大学の生協favoで, 松本清張ばかり買うのは恥ずかしい. 生協の人に, 殺人事件ばかり買う人だと思われる. 「殺人事件を買う男」)

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