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9月17日 Riemann

恐らく, 大学4年生のときのことだったと思います. 何かの本に

\begin{eqnarray}
1+1+1+\cdots = -\frac{1}{2}
\end{eqnarray}

と書かれていたのを見て, 「これは面白い!」と思い, 数学の先生に話をしましたら「バカなことを言うんじゃない!!」と怒られました. 数理科学科の学生のみなさん, これが毎日みなさんにエラソーにブーブー文句を言っている人の実態です(ブーブー文句を言われても気にしてはいけません.). しかし, 今の私もきっと当時の先生と同じことを言うと思います.

山口大学理学部数理科学の3年生前期の講義に「解析学」があります. この講義では, 複素数を変数とする微分積分を学びます. これは, 関数論とか複素解析と呼ばれています. 複素解析に「解析接続」という考え方があり, 上の怪しげな等式は解析接続の魅力を伝えようとしたものだと思います.

リーマンゼータ関数 \( \zeta(s) \) を \( {\rm Re\, } s >1\) である複素数 \(s\) に対して

\begin{eqnarray}\tag{1}
\zeta(s) :=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{s}} \quad ({\rm Re\, } s >1)
\end{eqnarray}

と定義します (収束については関数論の教科書を見てください.). そして, 微分積分か関数論の教科書にある部分和法を用います. 部分和法を用いると

\begin{eqnarray}
\sum_{n\leq x}\frac{1}{n^{s}}
&=& \frac{1}{x^{s}}\sum_{n\leq x}1+\int_{1}^{x}su^{-s-1}\sum_{n\leq u}1du \\
&=& \frac{[x]}{x^{s}} + s\int_{1}^{x}\frac{[u]}{u^{s+1}}du \\
&=& \frac{[x]}{x^{s}} +s\int_{1}^{x}\frac{[u]-u+u}{u^{s+1}}du\\
&=& \frac{[u]}{x^{s}} +s\int_{1}^{x} \frac{[u]-u}{u^{s+1}}du +s\int_{1}^{x}\frac{1}{u^{s}}du\\
&=& \frac{[x]}{x^{s}} +s\int_{1}^{x}\frac{[u]-u}{u^{s+1}}du
+s \left[\frac{u^{1-s}}{1-s}\right]_{1}^{x}\\
&=&\frac{[x]}{x^{s}}+s\int_{1}^{x}\frac{[u]-u}{u^{s+1}}du
+\frac{sx^{1-s}}{1-s} -\frac{s}{1-s}
\end{eqnarray}

となります. ここで, \( [\, ] \) はガウス記号です. そして, \( x \to \infty \) とすれば

\begin{eqnarray}
\zeta(s) = \frac{s}{s-1} +s\int_{1}^{\infty}\frac{[u]-u}{u^{s+1}}du
\end{eqnarray}

を得ます. 上の右辺の積分について, \(-1<[u]-u \leq 0 \) であるから, \({\rm Re\, }s>1\) としていましたが, \({\rm Re\,} s \geq \delta \) (ここで, \(\delta\) は任意に固定した \(\delta > 0\)) において, 積分は一様収束であり, この積分は \({\rm Re\,}s>0\) で正則関数です. 従って, \( \zeta (s) \) は \({\rm Re\, }s>1\) で定義しましたが, \(s=1\) を除いて, \({\rm Re\, }s>0\) に解析接続されます. もう少し変形します:

\begin{eqnarray}
\zeta(s) &=& \frac{s-1+1}{s-1}
+s\int_{1}^{\infty}\frac{[u]-u+\frac{1}{2}-\frac{1}{2}}{u^{s+1}}du\\
&=& 1+\frac{1}{s-1}+s\int_{1}^{\infty}\frac{[u]-u+\frac{1}{2}}{u^{s+1}}du
-\frac{s}{2}\int_{1}^{\infty}\frac{1}{u^{s+1}}du \\
&=& 1+\frac{1}{s-1} -s\int_{1}^{\infty}\frac{u-[u]-\frac{1}{2}}{u^{s+1}}du
-\frac{s}{2}\left[\frac{u^{-s}}{-s}\right]_{1}^{\infty}\\
&=& 1+\frac{1}{s-1} -s\int_{1}^{\infty}\frac{u-[u]-\frac{1}{2}}{u^{s+1}}du
-\frac{1}{2}\\
&=& \frac{1}{s-1} +\frac{1}{2}
-s\int_{1}^{\infty}\frac{u-[u]-\frac{1}{2}}{u^{s+1}}du.
\end{eqnarray}

(ここで, \(s\neq -1\), \({\rm Re\, }s>0\).) 右辺の積分を考えるために

\begin{eqnarray}
\psi (u):=u-[u]-\frac{1}{2}, \quad P(u):=\int_{1}^{u}\psi(v)dv
\end{eqnarray}

とおきます. \(P(u)\) は有界であり, 部分積分より

\begin{eqnarray}
\int_{1}^{\infty}\frac{\psi(u)}{u^{s+1}}du
&=&\left[\frac{P(u)}{u^{s+1}}\right]_{1}^{\infty} +(s+1)\int_{1}^{\infty}\frac{P(u)}{u^{s+2}}du\\
&=&(s+1)\int_{1}^{\infty}\frac{P(u)}{u^{s+2}}du
\end{eqnarray}

であることがわかります. そして, 右辺の積分は \({\rm Re\, }s>-1\) で正則です. 従って, \(s=1\) を除いて, \({\rm Re\, } s >-1\) において

\begin{eqnarray}\tag{2}
\zeta(s) = \frac{1}{s-1} +\frac{1}{2} -s(s+1)\int_{1}^{\infty}\frac{P(u)}{u^{s+2}}du
\end{eqnarray}

であることがわかります. つまり, \(\zeta(s)\) は \(s=1\) を除いて, \({\rm Re\, } s >-1\) に解析接続されます.

ここで, \(s=0\) とすると

\begin{eqnarray}
\zeta(0) = -1 +\frac{1}{2} =-\frac{1}{2}
\end{eqnarray}

が得られます. \(\displaystyle \zeta(s)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{s}}\) (\({\rm Re\,}s>1\)) であったので,

\begin{eqnarray}
1+1+1+\cdots =-\frac{1}{2}
\end{eqnarray}

が成り立つと思ってしまうかも知れませんが, そんなことはありません. 左辺は発散です. \({\rm Re\,}s>1\) で成り立つ級数表示 (1) を \(\zeta(s)\) の定義としましたが, これを上手に変形して \(s=0\) でも成り立つ形 (2) にしてから \(s=0\) としたのです. 級数表示 (1) で \(s=0\) としたのではありません. 級数の収束, 部分和法, 正則関数, 積分の収束, 有理型関数, 解析接続などけっこう大変です.

リーマンゼータ関数は複素関数なので, 3年生前期の講義「解析学」に出て来るかも知れません. 私自身も大学3年生のときに関数論の講義を受けました. 解析接続を難しく感じた覚えがあります(今でも難しいです. どうすれば収束が良くなるのか.). また, そのとき, コーシーの積分定理の証明は全然理解できませんでしたが, 留数定理に感動した覚えがあります. 今年の前期に, 数理科学科の学生が廊下で「留数定理スゲェ!」と言っているのを見て, 昔の自分と「同じこと言っている」と思い微笑みました. 感動すると数学は楽しくなります. 実際に取り組むと, しんどいことが多いですが.

数理科学科では, 3年生後期に「数理科学発展セミナー」があります. これは4年生の卒業研究の一歩手前のような科目です. 以前私が担当したクラスでは, リーマンゼータ関数に少し触れました. 複素解析は大切ですし, そのためには微分積分をしっかり勉強するのが大切です.

\({\rm Re\, }s>1\) として, \(\zeta(s)\) の2乗を考えると, 次のように, 自然数 \(n\) の正の約数の個数 \(\displaystyle \tau(n):=\sum_{d|n}1\) が現れます.

\begin{eqnarray}
\zeta^{2}(s) = \sum_{n=1}^{\infty}\frac{\tau(n)}{n^{s}} \quad ({\rm Re\, } s >1).
\end{eqnarray}

それで, 約数関数 \(\tau(n)\) を研究するために \( \zeta^{2}(s) \) を調べます. 他にもリーマンゼータ関数を用いて, 興味深い数論的関数が生み出されます. 私もよくリーマンゼータ関数を用いますし, 昨年度の大学院生も用いました.

複素関数 \(\zeta(s)\) を考えたのは偉大な数学者リーマンです. 1826年9月17日, リーマン (Georg Friedrich Bernhard Riemann)はハノーファー王国のブレゼンツという小さな村に生まれたそうです. 生誕200年. (南出)

参考文献

  • 竜沢周雄, 「関数論」, 共立全書 233, 共立出版, 昭和55年.

  • A. Ivic, `The Riemann Zeta-Function’, Dover, 2003.
    (私はこの本の著者A. Ivic さんにお願いして, 私の持っているこの本にサインしてもらいました. これはお宝です! そのとき, 写真を一緒に撮ってもらった覚えがあるのですが, 写真が見つかりません.)
  • H. Weber 編, `The Collected Works of BERNHARD RIEMANN’, Dover, 1953(?) .
    (どこでこの本を貰って来たのか覚えていないのですが, 私の持っているこの本の内側に青字で編者の H. Weber らしきサインが入っています. これはお宝かも? )
  • 足立恒雄, 杉浦光夫, 長岡亮介 編訳, 「リーマン論文集」, 朝倉書店, 2004.
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