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ツバメの子安貝

毎年, 理学部14番教室の入り口の上あたりにツバメの巣ができますが, 残念ながら今年はありません. 総合図書館の方にはツバメの巣がありました.

 中学校の時に国語の授業で「竹取物語」を聞いた事を思い出しました. 詳細を思い出そうと, 総合図書館で岩波文庫7202「竹取物語」を見つけ出しました.

かぐや姫に, ツバメの巣にあると言われる伝説の子安貝を持って来てほしいと言われた石上(いそのかみ)中納言は, ツバメの巣ができるという米炊き場に家来を派遣してツバメの巣を見張らせます. 米炊き場の人も大迷惑だったと思います. 大の大人たちの大騒動の末, 最後は, 中納言自ら, 吊り籠に乗って, ツバメの巣に手を伸ばします. 子安貝を手に入れたと思ったのも束の間, 吊り籠の綱が切れて, 中納言は米を炊く大きな釜に落ちます. 釜から助け出された中納言の手中には, 我が命より大事な伝説の子安貝があるはずでしたが, 握りしめていたのはツバメの糞でした. 果敢に伝説に挑んだ中納言, 努力の甲斐なし(貝もなし). かぐや姫からは

 

 年をへて浪たちよらぬ住の江の

  松かひなしときくはまことか

 

と歌を詠まれる始末. 松かひなし(待つ甲斐()なし).

 このような言葉遊びが「竹取物語」にたくさんあるとは中学生の私は気が付いていなかったと思います. 物語の最後に出てくる, 富士山の名前の由来 ((つわもの)に富むと不死) は覚えているのですが, それ以外の言葉遊びを覚えていないのは, ちゃんと授業を聞いていなかったのだと思います. 担当の国語の先生からすれば, 授業する甲斐なし.

高校の国語の授業で, 担当の先生から, あなたたち理系クラスでも国語をしっかり勉強してもらいます, 古文くらい読めないと困ります, と言われたのは覚えています. 未だに国語は全然ダメですが, エラソーに数理科学科の卒業研究の指導学生に, 卒業論文の日本語をしっかり書きなさい, と言っています. 日々の数学の勉強でも, 丁寧な日本語を書くように心掛けることは大切なことだと思います. もちろん, 定理の証明もしっかりと書く. 心地良い巧言によって, 数学の肝心な部分を見失わないようにしてほしいと思います. 証明は大切です.

  南方熊楠の「燕石考」に「竹取物語」の由来を仏典の「広大宝楼閣善住秘密陀羅尼経」などに求められる, とありましたので総合図書館で「国訳一切経」を調べてみましたが, 私の力では見つけられませんでした(一切経が蔵書されているとはさすが大学の図書館です). 上に挙げた岩波文庫の p.91に「竹取物語」を伝える文献で, 最古のものと思われるものは室町中期より前のもので, たった9行ほどのものだと紹介されています. それは京都の山科の毘沙門堂に所蔵されていると書かれています. 山科の毘沙門堂は, 私が幼稚園や小学校のときに遠足で行った場所なのでとても驚きました. 京都府立洛東高等学校の近くです. JR山科駅から歩いて行けます. 毘沙門堂から3分くらい歩くと, ガネーシャ(象頭人身の歓喜天)もいます.

 かぐや姫曰く,

 すこしうれしき事をば、「かひある」

 (同書, p.39).  (南出)

  

参考文献

  • 阪倉篤義 校訂 「竹取物語」, 岩波文庫7202, 岩波書店, 昭和45. (特に, p.91)
  • 岩村忍 編 「南方熊楠文集 2, 東洋文庫 354, 平凡社, 1979.(特に, p.354-p.378, p.359)
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