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レアアース含む新種鉱物発見

永嶌 真理子 (地球圏システム科 地球科学分野)

 

1.プレスリリース

山口大学大学院理工学研究科の永嶌真理子准教授,東京大学物性研究所の浜根大輔博士,愛媛大学理学研究科の皆川鉄雄教授と冨田宣光,稲葉幸郎(鉱物研究家)らのグループが共同で,レアアースのランタンを含む褐簾石(かつれんせき)の新種「ランタンバナジウム褐簾石 / Vanadoallanite-(La)」を三重県伊勢市矢持町の山中から発見し,国際鉱物学連合の新鉱物・命名・分類委員会により新鉱物として2013 年3 月1 日に承認された。
(レアアースは高度な産業技術を支える重要な元素で、ランタンはハイテク製品に多く使われている。)

2.経緯

鉱物研究科の稲葉幸郎氏が,伊勢市矢持町山中の旧マンガン鉱山の鉱石中より珍しい鉱物を2011年4月に発見、浜根大輔博士、皆川鉄雄教授らに調査依頼したのが学術的なきっかけ。
調査・分析の結果,同地域から2種類の珍しい鉱物が発見された。一つは既に2012年6月4日モリブデンとマンガンの酸化物(Mn2Mo3O8)である新鉱物「伊勢鉱」として認められた。
もう一つを長年褐簾石の研究をしている永嶌真理子准教授に共同研究の持ちかけがあり、永嶌真理子准教授がプロジェクトリーダーとして研究を進めることになった。

発見した方は凄いです。非常に鑑定眼のすぐれた方だと思います。私が今回、研究に関われたことはラッキーでした。(永嶌先生談)

3.ランタンバナジウム褐簾石

新鉱物として認められるには詳細な化学分析結晶構造の解析と どこにどのような元素がどれだけあるかといったことを明らかにする必要があります。岩石は鉱物の集まりで、岩石全体にレアアースが入っているわけではありません。今回の岩石ではこの中の褐簾石にレアアースが濃集しています。褐簾石はレアアースを取り込みやすい結晶構造をしているのです。構造を解析し、どこにどの元素がどれだけ入っているかを今回明らかにしました。
この三重県で見つかったランタンバナジウム褐簾石は南鳥島近くの海底で発見されたレアアースを含む泥の数億年後の姿かもしれません。大昔海底に存在したレアアースが、プレートで運ばれて陸地に上がってきたとみられます。数億年後には今回のような形になるのかもしれません。

山口大学所有のサンプル

結晶構造
(VESTAソフトウェアで作成.Momma & Izumi 2011)

 

黒い部分がランタンバナジウム褐簾石

4.今後

産業技術総合研究所が行った研究(2007年)で、かつて日本で採掘されていた鉄に富むマンガン鉱石に多くのレアアースが含まれていることがわかりました。昔はマンガンを採っており、レアアースの存在が知られていなかったところに実はレアアースがあると分かってきているのです。今回もそれと似ていて、新しい鉱物が見つかった三重県伊勢市矢持町の試料採集場所も今は閉山していますが、かつてマンガン鉱山だった所です。

分析技術の向上と地道な研究の積み重ねで、レアアースの濃度が高いものが国内にもあることが分かってきました。今後もこの地域のマンガン鉱石に含まれる鉱物の研究を継続する予定です。
今回のレアアースを含む鉱物「ランタンバナジウム褐簾石」の発見量はごくわずかで、現状では資源としての利用は期待できませんが、遠い存在に感じるレアアースが、実は身近にこっそり宝物のように潜んでいるというこを知ってもらえればと思います。身近な自然に目を向けてもらえば意外な発見があるかもしれません。 
日本だけではなく世界に目を向けて、例えばアフリカなどの規模な大きなマンガン鉱山といった所で同じような地質で同じような現象が起こっていれば、こういった研究成果が生かせるかもしれません。
基礎データの蓄積が大事なのです。地球という単位で考える地球科学の面白さです。

 

 

 

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