国立大学法人 山口大学

本学への寄付

炭酸セシウム存在下銅触媒による立体特異的クロスカップリング法開発
光学活性第四級炭素中心合成が容易に

 

 2010年ノーベル化学賞は、パラジウム触媒によるクロスカップリング反応が対象分野でした。このクロスカップリング法は医農薬品や電子材料など様々な有用物質の合成に広く利用されており、これを用いないプロセスは無いと言っても過言ではありません。そのように優れたクロスカップリング法ですが、光学活性第四級炭素中心の合成は非常に難しく現在までに限られた方法しか報告例がありません。この原因は、炭素の周りには4つまで置換基を配置することが可能ですが、最後の4つ目の置換基の立体選択的配置が極めて難しいためです。そのため、医農薬品などの高機能性分子合成分野では、残された課題と認識されており、新しい反応方法論の開発が望まれていました。
 山口大学大学院創成科学研究科(工学系学域)応用化学分野 西形孝司 教授(若手先進)らは、銅触媒と炭酸セシウムを組み合わせることで、炭素周りの4つ目の置換基としてアルキニル基(炭素-炭素三重結合)を光学活性ハロゲン基質に対して立体特異的に導入することに成功しました。開発した立体特異的クロスカップリング反応により、医農薬品の合成中間体として有用な炭素-炭素三重結合を持つ第四級炭素中心を効率的に合成できるようになります。この研究成果は、アルキニル化研究分野に大きなブレークスルーを与えただけでなく、新しい光学活性有用物質の開発につながることが期待されます。
 本研究成果は、令和4年8月8日(月)午前8時00分(EDT/米国東部標準時)アメリカ化学会会誌『ACS Catalysis』に掲載されました。

図:開発したアルキニル化反応(Cu:銅触媒、Br:臭素)

 

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発表論文の情報

  • タイトル:Carboxamide-directed Stereospecific Couplings of Chiral tertiary Alkyl Halides with Terminal Alkynes
  • 著者名:Akagawa, Hiroki; Tsuchiya, Naoki; Morinaga, Asuka; Katayama, Yu; Sumimoto, Michinori; NISHIKATA, Takashi
  • 掲載誌:ACS Catalysis (IF=13.7)
  • 掲載日時:令和4年8月8日(月)午前8時00分(EDT/米国東部標準時)
  • DOI:10.1021/acscatal.2c02433

 

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