国立大学法人 山口大学

本学への寄付

車輪細胞見つけた! 〜新しい細胞移動のメカニズム〜

 

 車輪はエネルギー効率の最も高い移動様式のひとつです。そして生命現象は機械に比べエネルギー効率が高いといわれています。それにもかかわらず、移動器官として車輪を利用する例は見つかっていませんでした。
 山口大学理学部の沖村千夏技術補佐員と岩楯好昭准教授のグループは基礎生物学研究所の野中茂紀准教授と谷口篤史研究員のグループと共同で、魚の傷修復に関わる移動性の表皮細胞の内部に車輪構造があることを発見し、それを回転させることで細胞が移動している様子の観察に成功しました。生命が車輪を利用して移動することを示した初めての例です。
 魚の皮膚が創傷すると、ケラトサイトという細胞が移動してきて傷口を修復します。ケラトサイトは私たち哺乳類の一般的な移動細胞の10倍以上のスピードで移動するユニークな細胞です。発表者のグループは、このケラトサイトの移動様式に着目して、光シート顕微鏡という特殊な顕微鏡で、内部の車輪が回転している様子の撮影に成功しました。ケラトサイトは車輪を使って皮膚の表面を移動するのです。
 この発見は、創傷の治癒メカニズムの理解を深めるもので、創傷の全く新しい治療方法や、がん細胞、免疫細胞といった他の移動細胞の移動制御法の開発にも発展するかもしれません。また、これまで生命は車輪を利用しないと信じられてきた先入観を壊すものであり、私たちの生命の概念を広げる発見と言えるでしょう。太古の生命や地球外生命等において車輪をもつものがいるかもしれない、と想像が膨らみます。

 この研究成果はネイチャー社の『Scientific Reports』に7月17日(火)掲載されました。

   DOI: 10.1038/s41598-018-28875-z
  LINK:http://www.nature.com/articles/s41598-018-28875-z

 研究成果の詳細はこちら(437KB; PDFファイル)をご覧ください。

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