国立大学法人 山口大学

本学への寄付

湯田温泉の入浴効果を動物実験で科学的に証明

 

 山口大学大学院共同獣医学研究科3年の井中賢吾さんと指導教員の木村透教授は、「白狐が見つけた美肌の湯」の故事に倣い、温泉入浴効果をカピバラによる動物実験で、主として皮膚科学領域から証明しました。
 湯田温泉は、1,200年前から知られる非火山性温泉であり、肌によく馴染むやわらかい湯が特徴と謳われています。非火山性温泉でありながら、湧出時の温度は72-76℃と高温であることも湯田温泉の特徴であり、加熱など手を加えることなくそのままのフレッシュな温泉水として利用できます。
 動物園動物として人気の高いカピバラは、温度湿度の高い南米アマゾン川流域の湿原に生息するげっ歯類です。日本の冬期には、寒さを和らげるためにお湯に入浴させることがイベントとして行われていましたが、湿度の低下により皮膚が乾燥して肌荒れを起す現象も認められていました。本研究では、この乾燥した皮膚の状態を温泉入浴により改善できるかに着目し、カピバラを21日間温泉入浴させ、皮膚性状、リラクゼーション効果および保温効果を調べ、肌荒れ改善を検証しました。
 温泉療法の科学的裏付けは乏しく、ヒトへの健康増進・未病に結びつく動物実験による実証データはこれまで得られていませんでした。動物で確認される温泉の効果はヒトにも適用できると考えられ、温泉の効果を科学的に解明することで、健康維持・増進や今後の長寿社会への貢献が期待されます。
 この研究成果はネイチャー社の『Scientific Reports』に2021年12月9日に掲載されました。

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図. 温泉入浴前後のカピバラの表情・行動の比較
  1. カピバラの寛ぎ状態(リラクゼーション効果)のスコア化。眼と耳の状態で評価。
  2. 目の評価。温泉入浴後にリラクゼーション効果が増している。
  3. 耳の評価。温泉入浴後にリラクゼーション効果が増す傾向にある。
      

発表のポイント

  1. 美肌の湯と謳われる湯田温泉の入浴効果を動物実験で科学的に証明しました。
  2. 動物園動物カピバラが冬期に示す肌荒れ状態の改善を皮膚パラメータの変化により明らかにしました。
  3. 温泉入浴によるリラクゼーション効果を動物の表情からすスコア化し、皮膚性状の改善に寄与することを提起しました。

謝辞

本研究は山口市受託研究「研究課題名:湯田温泉の入浴効果解明および温泉観光・療養機能向上に関する研究」によるものです。
地元の山口市内湯田温泉配給協同組合および湯田温泉旅館協同組合の協力並びに秋吉台サファリランドの支援に深く感謝いたします。

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