国立大学法人 山口大学

本学への寄付

ブラックホールとダークエネルギー(1)を結びつける世界初の観測的証拠

 

 山口大学大学院創成科学研究科(理学系学域)物理学分野の坂井 伸之教授らの国際研究チーム(アメリカ、カナダ、ポルトガル、イギリス、オランダ、キプロス、ドイツ、デンマーク、日本の15研究機関)は、90億光年先まで広がる約600個の銀河データから、ブラックホールとダークエネルギーを結びつける世界初の観測的証拠を発見しました。
 宇宙膨張とブラックホールの存在は、どちらもアインシュタイン方程式によって予言され、観測的に検証されていますが、2 つはスケールが全く異なるため、独立な現象と考えられていました。そして、ブラックホールの質量は、物質が流入しない限り一定と考えられています。
本研究ではまず、約600 個の銀河データから、太陽の10 万倍以上の質量を持つ巨大質量ブラックホールの質量が一定ではなく、時間的に増加することを発見しました。次に、質量と宇宙膨張の関係を明らかにするため、宇宙膨張のスケール因子α, 巨大質量ブラックホールの質量Μの間に、Μ∝ ακという関係を仮定し、κの値を調べました。その結果、κについて下図の確率分布が得られ、(90%信頼区間)という値が求められました。この結果は、ブラックホール同士の合体等他の原因では説明できず、宇宙膨張がブラックホール質量に影響を与えていることを示唆しています。

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図1. 定数κの推定。
5つの銀河サーベイデータから推定されるκの確率分布(上の3つの枠)と、それらを総合して得られたkの確率分布(下図)。
κ≒ 3にピークを持つ。

 

発表論文の概要

  • 掲載誌:The Astrophysical Journal Letters
  • タイトル:Observational Evidence for Cosmological Coupling of Black Holes and its Implications for an Astrophysical Source of Dark Energy
  • 著者:Duncan Farrah, Kevin S. Croker, Michael Zevin, Gregory Tarlé, Valerio Faraoni, Sara Petty, Jose Afonso, Nicolas Fernandez, Kurtis A. Nishimura, Chris Pearson, Lingyu Wang, David L Clements, Andreas Efstathiou, Evanthia Hatziminaoglou, Mark Lacy, Conor McPartland, Lura K Pitchford, Nobuyuki Sakai, Joel Weiner
  • 公表日:2023年2月15日
  • DOI:10.3847/2041-8213/acb704
  • LINK:https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/acb704

 

用語解説

  • (1)ダークエネルギー:重力は「万有引力」と呼ばれるように、我々が知っているあらゆる物体は重力によって引きつけ合います。一方、現在の宇宙が加速膨張していることから、宇宙は「斥力を及ぼし合う何か」で満たされていると考えられます。この正体不明の「何か」を「ダークエネルギー」といいます。
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