国立大学法人 山口大学

本学への寄付

文部科学省「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」最終評価で最高の「S」評価
-革新的医療技術の創出で地域に貢献-

 

 山口大学と山口県は、平成29(2017)年に、文部科学省「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム(※1)」事業に「革新的コア医療技術に基づく潜在的アンメット・メディカル・ニーズ市場の開拓および創造(※2)」を共同提案し、採択され、事業を進めてまいりました。
 この度、5年間の事業期間終了に際し最終評価があり、これまでの取り組みが評価され、最高の「S」評価を受けました。

【評価された事業化プロジェクトの概要】

 がんに対する最先端医療技術の中で、免疫細胞(T細胞)に遺伝子改変技術を加えたChimeric Antigen Receptor(CAR)-T細胞療法は、近年特に高い期待を受けています。従前からのがんの主要な治療法である、外科手術、化学療法、放射線療法で効果が得られない患者にとっての新たな治療法として大きな希望となります。一方で、既存のCAR-T細胞療法では、血液がんに対しては効果を示すものの、固形がんに対しては効果が乏しいという課題がありました。
 本学の大学院医学系研究科の玉田耕治教授はこの課題を克服し、難治性固形がんに対して有効な「Proliferation-inducing and migration-enhancing(PRIME) CAR-T細胞」を新たに開発してきました。「PRIME CAR-T細胞」の特長は、サイトカインやケモカインを産生することによりがん細胞を攻撃するCAR-T細胞の機能を高めるだけでなく、がん患者さん自身の体内にある免疫細胞の活性化によりがんへの攻撃を引き起こす技術にあります。玉田教授を中心にバイオベンチャーや製薬企業との「PRIME CAR-T細胞」の開発がすすめられ、2020年度に1件、2021年度に2件の「PRIME CAR-T細胞」の人への投与を伴う臨床試験が開始しています。
 また、患者本人ではなく健康なドナーからT細胞を採取して「PRIME CAR-T細胞」を作製し、投与する療法の確立にも取り組んできました。この技術が確立しストックを作ることができれば、より多くの患者さんへの迅速な対応が可能となります。
 さらに、実用化に向けた「PRIME CAR-T細胞」の大量培養のための自動化システムの開発、再生医療・細胞療法を担う人材育成も進めています。
 引き続き、この革新的医療技術の実用化を進めることで医療を通じて世界に貢献するとともに、山口県や宇部市などの自治体の強い支援や企業との連携により、山口地域に新たな医療産業クラスターが形成されることが期待されます。

 

地域イノベーション・エコシステム形成プログラム終了評価結果

令和3年度地域イノベーション・エコシステム形成プログラム終了評価の結果について(文部科学省webページ) https://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/chiiki/program/1413865_00009.html

 

玉田耕治教授のPRIME CAR-T細胞療法の説明資料

 

参考

※1:「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」について
 大学に事業プロデュースチームを創設し、大学が保有する「コア技術等」を核に、地域内外の人材や技術を取り込み、事業化計画を策定し、事業化プロジェクトを推進する取組を支援するもの。
 ○主な支援内容:設備整備費、人件費、研究開発費 等 ※約7億円
 ○補助期間:5年間 ※採択:H29.9.1~R4.3.31

※2:「革新的コア医療技術に基づく潜在的アンメット・メディカル・ニーズ市場の開拓および創造」について
 研究開発が活発化し、市場の拡大が予測される、治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズ市場に対し、山口大学の有する革新的医療シーズを基に、山口地域に集積する医療関連の企業群と連携し、CAR-T細胞療法等の革新的な治療法の事業化を目指す。

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