国立大学法人 山口大学

本学への寄付

フッ化セシウムをフッ素源とする立体特異的フッ素化有機分子の合成法の開発に成功:医農薬品合成への応用に期待

 

 大学院創成科学研究科(工学系学域)応用科学分野の西形孝司教授(若手先進教授※)らの研究グループは、銅触媒存在下、キラル第三級アルキルハロゲン化物とフッ化セシウムを反応させると、原料である第三級アルキルハロゲン化物の立体を保持したフッ素化生成物が得られる“立体特異的フッ素化反応”という新しい有機合成法を発見しました。
 一般的に、基質に含まれる立体中心をそのまま生成物に反映させる立体特異的反応を行う場合、100年程度前より求核置換反応(SN2反応)が用いられてきました。しかし、このSN2反応は反応の前後で立体が反転してしまう点、そして、高い求核性を有する反応剤が必要であり、フッ素のような弱い求核剤によるフッ素化反応、特に立体的に込み入ったかさ高い部位を有するような低反応性基質との反応には不向きでした。本反応は、反応性が低く扱い易いフッ化セシウムをフッ素反応剤として使用しても、銅触媒でこれを活性化することで、光学活性炭素を有するかさ高い第三級アルキルハロゲン化物との立体特異的反応に成功しました。反応中にフッ化セシウムと銅触媒から生じるフッ化銅種が対象基質に、特定の方向から反応させられたことが本反応の画期的な点です。
 本手法を用いてフッ素を含む光学活性炭素を持つ様々な有機分子を効率的に合成できるようになります。
 この研究成果は化学系のトップジャーナルである『Angewandte Chemie, International Edition』(IF=15.336)に掲載されました。

 

 

論文情報

  • 論文名:Interaction between Divalent Copper Fluoride and Carboxamide Group Enabling Stereoretentive Fluorination of Tertiary Alkyl Halides
  • 著 者:Naoki Tsuchiya, Tetsuhiro Yamamoto, Hiroki Akagawa, and Takashi Nishikata*
  • 掲載誌:Angewandte Chemie, International Edition, 2023, Early View. DOI: 10.1002/anie.202301343
  • U R L:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.202301343

 

※若手先進教授(Young Advanced Professor)とは、山口大学が旗手として期待する研究者に付与する名称です。
山口大学が注力する「研究拠点群」である「生命分子インターネットワークセンター」の西形孝司センター長もそのひとりです。

TOP