国立大学法人 山口大学

本学への寄付

遠紫外線照射により細胞へのプラスミドの導入に成功

 

発表のポイント

  • 遠紫外線を照射した細胞にGreen Fluorescent Protein(GFP)プラスミドを含む溶液を添加すると遺伝子導入され(図1)、緑の蛍光を示す細胞が認められることを発見しました(図2)。
  • 遠紫外線の照射エネルギーを非常に低く抑えており、細胞への傷害性はほとんど認められません。
  • 本研究の成果により、遠紫外線照射による新規遺伝子導入法の開発を促進することが期待されます。

概 要

 山口大学大学院医学系研究科(保健学専攻)基礎検査学講座の西川 潤 教授らは、大学院医学系研究科(医学専攻)臨床検査・腫瘍学講座およびウシオ電機株式会社(本社:東京都)との共同研究により、遠紫外線照射により細胞へのプラスミドの導入が可能であると報告しました。
 一般的に紫外線というと、水銀ランプから放射する波長260nmの光を思い浮かべます。この紫外線はDNAを構成する4つの塩基に非常に良く吸収され、DNA傷害を起こすため、プラスミドの導入には使用できません。近年、これよりさらに波長が短い、222nmの遠紫外線を放射する光源が開発され、DNA傷害が少なく人体への安全性が高いため、大きな注目を集めています。この遠紫外線が細胞膜のタンパク質に作用し、細胞膜に小さな孔が開くことでプラスミドが導入できるのではないか、と考え実験を行いました。
 研究グループは2種類の哺乳類の細胞 、COS-7及びCHO-K1を用い、GFP遺伝子がマーカーとして入っているプラスミドを使用しました。ピーク波長222nmの遠紫外線照射には、ウシオ電機株式会社製のCare222を用いました。細胞を調整し洗浄した後に低エネルギー量の遠紫外線を照射しました。その後にプラスミドを含む無血清培地を添加し、1時間後に通常の培養液を追加し、24時間培養後に蛍光顕微鏡観察を行いました(図1)。COS-7細胞では0.5mJ/cm2、CHO-K1細胞では1mJ/cm2の遠紫外線照射で緑の蛍光を示す細胞が明瞭に観察できました(図2)。また、このエネルギー量の遠紫外線照射では細胞傷害性がほとんどないこと、緑の蛍光を発する細胞がDNA傷害を起こしていないことを確認しました。
 新型コロナウイルスのmRNAワクチンをはじめ、さまざまな核酸治療が開発されてきています。今回の遠紫外線を用いた新規遺伝子導入法の開発はプラスミドの導入のみならず、核酸治療のためのドラッグデリバリーシステムに発展する可能性を秘めた重要な発見です。         
 本研究成果は、2025年5月14日付で「Scientific Reports(IF 4.3)」に掲載されました。


図1.遠紫外線照射による遺伝子導入法


図2.GFPプラスミドが導入され、緑の蛍光を発するCOS-7細胞

発表論文の情報

  • タイトル:Transient transfection using 222 nm far UV-C irradiation
  • 著 者:Mane Nishimura, Yuki Shimizu, Tomohiro Fujii, Yu Okada, Takeshi Yamamoto, Yoshimasa Ogawa, Toru Koi, Yutaka Suehiro, Takahiro Yamasaki & Jun Nishikawa
  • 掲載誌:Scientific Reports
  • 掲載日:2025年5月14日(2025) 15:16787.
  • D O I:https://doi.org/10.1038/s41598-025-00477-6

謝辞

 本研究は、ウシオ電機株式会社の支援を受けて行われました。

 

問い合わせ先

  • <研究に関すること>
    山口大学大学院医学系研究科(保健学専攻)基礎検査学講座
    教授 西川 潤
    E-mail:junnis@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp )
  • <報道に関すること>
    山口大学医学部総務課広報・国際係
    TEL:0836-22-2009
    E-mail:me268@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp )
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