国立大学法人 山口大学

本学への寄付

ステロイドパルス療法が循環動態に与える影響を解明

 

発表のポイント

  • ステロイドパルス療法によって、心臓負荷の血液マーカーである脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)と心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)が上昇し、心臓超音波検査所見においても心負荷の出現が示唆されました。
  • 心疾患の既往などのリスクを有する患者さんに対してステロイドパルス療法を施行する際には、十分な注意や対策を行う必要性が示唆されました。

研究の背景と概要

 山口大学医学部附属病院 第二内科の名和田 隆司 助教、村川 香里 大学院生(大学院医学系研究科 器官病態内科学講座)、小室 あゆみ 助教、大学院医学系研究科 器官病態内科学講座の佐野 元昭 教授、病態検査学講座の奥田 真一 教授らのグループは、ステロイドパルス療法が患者の循環動態に与える影響について、新たな知見を報告しました。
 ステロイドパルス療法は、大量のステロイド(グルココルチコイド)を体内に点滴するという治療法であり、難治性・重症の自己免疫性疾患をはじめとした様々な疾患の治療に広く用いられています。ステロイドを内服している患者さんには、ステロイドの持つミネラルコルチコイド作用によって血圧上昇などの循環動態変化を認めることがあり、日常診療においてしばしば問題となります。ステロイドパルス療法は内服と比較して非常に大量のステロイドを体内に投与するため、循環動態変化が生じやすいと考えられますが、その詳細な評価についてはこれまで行われていませんでした。
 今回、8名の自己免疫疾患患者さんを対象として、ステロイドパルス直前と直後の循環動態変化を、血液検査マーカー(脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)・心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP))および心臓超音波検査を用いて評価しました。その結果、ステロイドパルス直後には8名全員においてBNP・ANPが有意に上昇していました(それぞれp<0.001)。さらに、左房の容積を示す左房容積係数(LAVI)がステロイドパルス後に有意に増加し(p<0.05)、左房の大きさを示す左室拡張末期径(LVDd)も増加傾向を示しました(p=0.055)(図1)。これらの結果から、ステロイドパルス療法による循環動態変化によって心臓に負荷を来す可能性があることが示唆され、心疾患の既往などのリスクを有する患者さんに対してステロイドパルス療法を施行する際には、十分な注意や対策(例:利尿薬の投与)を行う必要性が示されました。
 本研究成果は、2025年12月28日付で国際学術雑誌「Immunological Medicine」にオンライン掲載されました。


図1.ステロイドパルス前後での血液マーカー・心臓超音波検査の変化

 これまで、多くの臨床医はステロイドパルス療法が循環動態に影響を与えることを、経験上、認識していると思われますが、本研究によってステロイドパルス療法の副作用として生じる循環動態変化・心臓への負荷の存在を明確化できました。本研究は少人数の研究参加者による検討であるため、どのような患者さんに循環動態変化が生じやすいかといった詳細な解析には至っていませんが、本研究をきっかけに、ステロイドパルス療法に伴う循環動態変化が注目されることによって、ステロイドパルス療法をより安全に行うための管理体制が進むことが期待されます。
 山口大学医学部附属病院 第二内科は、膠原病内科、循環器内科、腎臓・高血圧内科の3つの領域をカバーする全国的にも珍しい診療科です。3領域の専門家が集っている長所を活かして、今後も患者さんのさらなる予後改善を目指します。

論文情報

  • 論文名:Acute changes in indices of cardiac filling and function induced by high-dose intravenous methylprednisolone pulse therapy: a single-center prospective study
  • 掲載誌:Immunological Medicine
  • 著者:Takashi Nawata, Kaori Murakawa, Kohei Goda, Chika Kayabe Kuroda, Junya Nawata, Hironori Ishiguchi, Ayumi Omuro, Takeshi Suetomi, Hitoshi Uchinoumi, Shinichi Okuda, Mototsugu Shimokawa, Hiroshi Nakamura, Motoaki Sano
  • 掲載日:2025年12月28日
  • URL:https://doi.org/10.1080/25785826.2025.2608493

 

お問い合わせ先

  • <研究に関すること>
    山口大学医学部附属病院 第二内科
    助教 名和田 隆司(ナワタ タカシ)
    TEL:0836-22-2248
    E-mail:tnawata@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)

  • <報道に関すること>
    山口大学医学部総務課広報・国際係
    TEL:0836-22-2009
    E-mail:me268@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)

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