国立大学法人 山口大学

本学への寄付

COPD患者におけるフレイル合併が心血管イベントリスクを約2.6倍に高めることを明らかに—10年間にわたる長期間データで検証

 

 山口大学医学部附属病院 呼吸器・感染症内科の濱田和希助教、大学院医学系研究科呼吸器・感染症内科学講座の松永和人教授、AIシステム医学・医療研究教育センターの浅井義之教授らの研究グループは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において「フレイル(虚弱)」の程度が、将来の重大な心血管イベント(心筋梗塞、心不全、脳卒中など)の発生率と強く関連することを、日本の地域医療データを用いた10年間にわたる追跡調査で明らかにしました。

 COPDは主に喫煙など有害物質への長期暴露によって肺に炎症が生じ、気管支が狭くなったり、酸素を取りこむ肺胞が破壊されることで、呼吸機能が低下する疾患です。COPD患者は労作時の呼吸困難、咳、痰などの症状を呈し、生活の質(Quality of Life: QOL)を損ないます。COPD患者では肺過膨張や血管内皮機能障害、低酸素血症、全身炎症などを背景に、心不全、狭心症、心筋梗塞などの心血管疾患を高頻度に合併します。これによって、COPDそのものの進行だけでなく、合併する心血管疾患によっても健康寿命の短縮につながることが知られています。一方、「フレイル」は加齢や慢性疾患により身体機能や認知機能が低下した状態を指し、COPD増悪や入院、QOL低下、生命予後の悪化につながります。しかし、COPD患者においてフレイルの重症度が心血管イベント発生にどのように影響するか、長期的に追った研究はほとんどありませんでした。

 この研究では、2013年から2023年にかけて、新潟県佐渡市の地域電子カルテネットワーク(Electronic Health Record: EHR)である「さどひまわりネット」を通じて登録された1,527人のCOPD患者を対象とし、病院フレイルリスクスコア(Hospital Frailty Risk Score: HFRS)に基づき、フレイル重症度で「無フレイル」「低」「中等度」「重度」の四段階に層別化しました。年齢・性別・吸入治療や併存疾患などを調整したのち、各グループで重大な心血管イベント(Major Adverse Cardiovascular Events: MACE)の発生リスクを比較しました。その結果、フレイル重症度が高いほど、MACE発生率が有意に高くなり、「無フレイル」グループに対して、「中等度」グループでは約2倍、「重度」グループでは約2.6倍のリスク増が認められました。これにより、COPD重症度だけでなく、フレイル重症度が心血管疾患の強力な予測因子であることが裏付けられました。

 この成果の意義は、COPDの病状のみでなく、患者のフレイルを評価することが、心血管リスクの予測・予防において実用的な指標となり得ることを示した点にあります。診療現場や地域保健で、フレイル予防や介入(運動・栄養など)を含めた包括的ケアを強化すれば、COPD患者の心血管合併症を減らし、ひいては健康寿命の延伸やQOLのさらなる向上に寄与できる可能性があります。

 山口大学では、本研究を契機に、COPD患者ケアにおけるフレイル評価の促進や、心血管疾患予防につながる早期介入などの推進に向けて取り組んでいきたいと考えています。

論文情報

  • 論文名:Impact of Frailty on Major Adverse Cardiovascular Events in Chronic Obstructive Pulmonary Disease
  • 掲載誌:International Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease
  • 著者:Kazuki Hamada, Keiji Oishi, Tasuku Yamamoto, Yoriyuki Murata, Maki Asami-Noyama, Nobutaka Edakuni, Tsunahiko Hirano, Takeshi Abe, Masahiko Nakatsui, Yoshiyuki Asai, Kazuto Matsunaga
  • 掲載日:2025年9月4日
  • URL:https://doi.org/10.2147/COPD.S538054

 

お問い合わせ先

  • <研究に関すること>
    山口大学大学院医学系研究科呼吸器・感染症内科学講座
    教授 松永 和人(マツナガ カズト)
    TEL:0836-22-3123
    E-mail:kazmatsu@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)

  • <報道に関すること>
    山口大学医学部総務課広報・国際係
    TEL:0836-22-2009
    E-mail:me268@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)

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