国立大学法人 山口大学

本学への寄付

ネコの胸はねじれやすい ~ネコひねり問題を考えるための新しいデータ~

 

概要

 ネコは高い所から落ちたとき、空中で体勢を立て直し、足から安全に着地することができます。この行動はネコひねり、学術的には「立ち直り反射」と呼ばれます(図1)。立ち直り反射の能力はすべての動物に備わっているわけではなく、たとえば、イヌが立ち直り反射をするという話を耳にすることはありません。
 立ち直り反射の際に、ネコはどのように体を使っているのか?
 この「ネコひねり問題」について、これまでにさまざまな考えが提唱されてきたものの、十分な解決にはいたっていませんでした。
 山口大学共同獣医学部の日暮泰男助教と学部6年生(当時)の戒能靖史大学生らの研究グループは、ネコの脊椎(背骨)の一部である胸椎と腰椎がどのくらいの力でどのくらいねじれるのかを測定し、ネコの胸椎が非常にねじれやすいことを発見しました。この結果は、ネコひねり問題を考えるための新しいデータとなります。
 本研究成果は、2026年2月24日に学術誌「The Anatomical Record」に掲載されました。

図1.ネコひねりの連続写真

研究の背景

 ネコひねり問題にはさまざまな研究者が取り組んできましたが、ネコの体が実際にどのくらいねじれるのかはあまり知られないまま議論がなされていました。そこで本研究では、ネコの検体から胸椎と腰椎を採材し、力学的手法によりどのくらいの力でどのくらいねじれるのかを測定し、胸椎と腰椎の間で比較しました。

 研究の内容

 病理解剖のために山口大学に寄贈された5匹の遺体から胸椎と腰椎を採取し、荷重試験機に取り付けて、壊れるまで一方向にねじり、ねじる力とねじれた角度の関係を明らかにしました(図2)。胸椎には片側47度(左右両側では94度と推定)まで、ほとんど抵抗力が発生しないニュートラルゾーンが存在しました。しかし、腰椎にはニュートラルゾーンはほぼ存在せず、強い抵抗力が生じました。胸椎は最大で片側171度までねじれましたが、腰椎は片側57度までしかねじれませんでした。以上の結果から、ネコの胸椎は腰椎よりも非常にねじれやすいことがわかりました。
 また、2匹の生きているネコの立ち直り反射を撮影しました(図1)。頭部を含む上半身の反転が下半身の反転よりも先に完了することが確認できました。
 これらの結果から、ねじれやすいネコの胸椎が立ち直り反射を行う上で役に立っていると考えられます。

図2.ある1匹のネコの脊椎における、ねじる力とねじれた角度の関係

本研究成果の意義

 本研究成果により、ネコの胸椎は非常にねじれやすく、立ち直り反射に有利に働く可能性が示されました。本研究は、ニュートラルゾーンなどの力学的手法で得られたデータに基づいて、ネコの胸椎と腰椎のねじれやすさを比較した初めての研究です。ただし、本研究により「ネコひねり問題」が完全に解決されたわけではありません。今後は、今回明らかとなった実際のネコの体の柔軟性を正確に反映した数理モデルを構築していくことが、この難問を解くために必要です。

掲載誌情報

  • 掲載誌:The Anatomical Record
  • タイトル:Torsional flexibility of the thoracic spine is superior to that of the lumbar spine in cats: Implications for the falling cat problem
  • 著者:Yasuo Higurashi, Yasufumi Kaino, Makoto Habara, Shiki Okamoto, Kyoko Yoshizaki, Masashi Sakurai, and Masahiro Morimoto
  • 掲載日:2026年2月24日
  • DOI:10.1002/ar.70165
  • Link:https://doi.org/10.1002/ar.70165

メディア掲載

 

お問い合わせ先

  • <研究に関すること>
    山口大学共同獣医学部 獣医生理学・生化学研究室
    助教 日暮 泰男(ヒグラシ ヤスオ)
    TEL:083-933-5884
    E-mail:higu@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)

  • <報道に関すること>
    山口大学総務部総務課 広報室
    Tel:083-933-5007
    E-mail:sh011@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)

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