国立大学法人 山口大学

本学への寄付

約2.5億年前の海洋生態系崩壊を示す化石の発見

 

 5大大量絶滅の3回目にあたる約2億5千万年前のペルム紀末の大量絶滅を境に、それまで繁栄していた三葉虫や腕足類、フズリナ等が絶滅し、二枚貝や巻貝が多様化していきました。ペルム紀末大量絶滅直後の時代である前期三畳紀は、古生物学者から最も退屈な時代と言われるほど化石の産出が少なく、大量絶滅の余波により生態系がどん底にある時代でした。
 ペルム紀末大量絶滅の原因は、超大陸パンゲアの北東、現在のシベリアで発生した大規模火山活動であると考えられています(図1)。しかし、この絶滅イベントからの回復過程は異様に遅く、なぜ生態系の回復が遅いのかは不明でした。また、化石記録が乏しいために、前期三畳紀の火山活動がどのように当時の生態系に影響を与えていたか不明でした。
 山口大学大学院創成科学研究科理学系学域の齊藤諒介助教らの研究グループは、ペルム紀末大量絶滅直後の時代である前期三畳紀の堆積岩に含まれる有機分子を分析し、海洋生態系崩壊を示す分子化石が含まれることを明らかにしました(図1)。さらに、前期三畳紀における大規模火山活動の記録と照らし合わせることで、これら海洋生態系崩壊を示す分子化石が、大規模火山活動と同時に発生していることを発見し、海洋生態系の崩壊が火山活動と関連があることを推定しました:

  • 大規模火山活動による大量の温室効果ガス放出が温暖化を引き起こし、大陸風化を促進することで、大量の栄養塩を海洋へもたらした。
  • 海洋における栄養塩の増大により一次生産性が増大し、その分解のために大量の酸素が消費された。
  • 一連の環境悪化が海洋生態系崩壊を引き起こし、海洋生態系崩壊を示す化石の起源生物が繁殖した。

 本研究の成果は、国際誌 「Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology」に掲載されるのに先立ち、5月24日付電子版に掲載されました。

研究の詳細はこちら

 

図1:約2.5億年前の古地理図と海洋生態系崩壊を示す化石の産出時代及び産出位置。南中国は本研究、スピッツベルゲン、グリーンランド、オーストラリアは先行研究に基づく。チャンシ.はチャンシンジアンの略。チャンシンジアンはペルム紀のサブステージ、インドゥアンとオレネキアンは前期三畳紀のサブステージ。古地理図上の数字は、下段の各地域の数字に対応する(©️Ryosuke Saito)

 

発表のポイント

  • 海洋生態系崩壊を示す分子化石を約2.5億年前の堆積岩から発見
  • 海洋生態系崩壊と大規模火山活動が同時期に発生
  • 多量の二酸化炭素ガス放出による温暖化と、温暖化による海洋無酸素化が海洋生態系崩壊を引き起こした?

発表論文の情報

  • 雑 誌 名:Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
  • 論文タイトル:Biomarker evidence for the prolongation of multiple phytoplankton blooms in the aftermath of the end-Permian mass extinction
  • 著 者:Ryosuke Saito*1,2,3, Li Tian4, Kunio Kaiho3, Satoshi Takahashi3,5 (*責任著者, 1山口大学, 2JST, 3東北大学, 4中国地質大学, 5名古屋大学)
  • U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0031018222002474
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