国立大学法人 山口大学

本学への寄付

No.13 2022年7月発行


ジェンダーレス制服導入! 可能性は無限大!みんなで切り開くダイバーシティへの道!

国籍や性別、年齢、障がい、性的指向、個性、好み、価値観…私たちの社会にはさまざまな多様性があります。キーワードはダイバーシティ※1。みんなが最大限に活躍できる社会を目指して、藤山中学校の男女の区別のない制服導入からダイバーシティについて考えてみましょう。

YU-PRSS 山口大学広報学生スタッフ 松本 菜那

増える制服、増える選択肢

 2022年4月、山口県宇部市立藤山中学校が新しいスタイルの制服を導入しました。それまでは、男子生徒は詰襟の学生服、女子生徒はセーラー服でした。現在は、上着がブレザータイプに統一され、これにスラックスかスカートを自由に選択できます。さらに、ネクタイやリボンも選べます。
 今年4月に藤山中学校に入学した1年生の西野里萌さんは、「もともとスカートをはくのがいやだったので、スラックスが導入されてとても良かった」と喜んでいます。同じく1年生の中元彩文さんも、「スカートをはくと日焼けするのでいやだった。動きやすいので学校に行くのが楽になった」と語ります。制服の選択肢が増えることで、ジェンダー※2の平等や機能面での快適性など、多様な価値観を尊重することに結び付いているのです。

はじまりは生徒総会から

 新しい制服の導入は、「校則を見直そう」という生徒総会の議題からスタートしました。2021年6月、生徒総会で下着や靴下の色、髪型など、それまでの校則を見直していく中で、ジェンダーに配慮した制服に変えようという意見が盛り上がり、生徒へのアンケートが行われました。アンケートによると、9割近くの生徒がジェンダーレス制服の導入に賛成していたそうです。
 そこで、生徒の人権意識の高まりを尊重する形で、教職員や保護者、同窓会の代表など、多くの人が携わった結果、生徒たちの発案からわずか4カ月で自由に選択できる新たな制服が実現したのです。「制服を変えたい」と声を上げた生徒たち、そしてその思いをくみ取り動いた大人たち、多くの人の思いが詰め込まれた制服なのです。
 「ダイバーシティ推進において最も大事なのは、みなさんからのニーズを聞くことです」と山口大学のダイバーシティ推進担当副学長の鍋山祥子さんは語ります。「こうだったらいいな」「こうしたいな」という思いは、決してわがままではなく、ニーズであり、多様性を尊重する社会の実現において大切な声なのです。 

仲間をつくる、声を上げる ダイバーシティへの第一歩

 「お母さんや家族、周りの友達が『スラックスでもいいんじゃない?』と背中を押してくれたから着ることができた。同じようにスラックスをはいている女子がいて安心できた」と語る西野さん。「友達にもスラックスが似合っていると言われた。『私もはいてみたい』と言われたので、ぜひ友達にもはいてみてほしいと思った」と中元さんも語ります。周囲の理解があるからこそ、本人のニーズが実現され、より良い学校生活を送ることができる環境がつくり出されています。
 「友達や仲間と話してみる。全員ではなくても『わかるわかる』と言ってくれる人がいる。そうして盛り上がって仲間を増やしていくことが、私たちがダイバーシティを進めていく中で取り組めることです」と鍋山さんは語ります。これは、SNSやあらゆるコミュニティによって広げていける取り組みなので、加速できる可能性を持っています。
 藤山中学校校長の森田成寿さんは、「その人らしさや一人ひとりの人権が大切にされる世の中であってほしい。今回の取り組みは、多様性を認め合う社会について私たち大人も考えさせられる良いっかけになった」と振り返ります。

まだ終わりじゃない さらなる未来を求めて

 藤山中学校ではジェンダーレス制服が導入されて、自由な選択ができる状態となりました。男子生徒のなかにもスカートを選択したい人がいるかもしれません。しかし、「やはり周りの目が気になってはけない子がいると思う。希望する生徒は、周りの目を気にせず、男子でもスカートをはける環境にしていくことが課題」と藤山中学校3年生の金本柚月さんは語ります。
 ダイバーシティの追求はこれで終わりではありません。国籍や年齢、障がいの有無などに関係なく、一人ひとりが生きやすい社会をつくるための課題はたくさん残されています。実現することは簡単ではありませんが、試行錯誤を重ねながら取り組んでいく問題なのです。

※1 多様性を認める社会
※2 社会的な性別。「男性はこうあるべき」「女性はこうするべき」という社会の中で作られたイメージや役割分担


取材協力:山口県立宇部市立藤山中学校、山口大学ダイバーシティ推進担当副学長 鍋山 祥子 教授

 

白いビーチと黒いビーチの秘密!

山口県にはたくさんの海水浴場があります。
それぞれの砂浜を比べてみると、少しずつ色が違うことに気づきます。

YU-PRSS 山口大学広報学生スタッフ 岩見 丞

色違いの砂浜

 本格的な夏がやってきました。こんな暑いときには海水浴に出かけたくなりますね。山口県は、日本海や瀬戸内海に囲まれており、たくさんの海水浴場があります。どのビーチもきれいで、どこに行くのか悩ましいところです。ビーチによって景観に違いがありますが、その中でも大きく異なるのが砂浜の色です。下にある写真は、山口県内の2つのビーチです。防府市の富海海岸の砂浜は白色なのに対して、長門市の青海島の砂浜は黒っぽい色をしています。どうしてこんなにも対照的な色合いになっているのでしょうか?


白い砂浜の富海海岸(上)と、黒っぽい砂浜の青海島(下)

ビーチを彩る砂つぶ

 海水浴に行ったとき、サンダルにたくさん砂のつぶが入りますよね。この砂つぶが砂浜を構成しています。つまり、ビーチの色の違いは砂つぶの色の違いによって生まれているのです。では、どうして砂つぶの色が違うのでしょうか?
 これは、砂がどのようにして生まれたのかが関係しています。砂はもともと大きくて硬い岩石でした。この岩石が、長い時間をかけてもろくなり、バラバラに崩れることで、細かい砂つぶになるのです。つまり、もととなる岩石の色が、砂に反映されているわけですね。 

イロイロな岩石の色

 岩石にはたくさんの種類があり、色も違います。富海海岸の白い砂浜は、もともとどのような岩石だったのでしょうか?答えは、防府市に多く分布する「花崗岩(かこうがん)」という岩石です。この花崗岩は、白っぽい色をしているため、この岩石をもとにした砂浜も白っぽくなるのです。一方、長門市の砂浜は、主に「デイサイト」という岩石が砂のもとになっています。このあたりのデイサイトは、灰色や黒っぽい色合いをしています。そのため、砂浜も黒っぽくなるのです。岩石の研究者である山口大学理学部教授の大和田正明さんは、デイサイトはマグマが急速に冷えて固まった岩石であり、このような岩石には黒色以外にも赤や緑といった様々な色があると語ります。

サラサラの砂とゴロゴロの砂

 砂浜の景観の違いは色だけではありません。砂つぶの大きさにも違いが見られます。富海海岸の砂は、サラサラとした細かいつぶであるのに対して、青海島の砂はゴロゴロと大きなつぶをしています。砂というよりは砂利と言った方がピッタリかもしれません。この砂つぶのサイズにも、もととなる岩石が関係しています。
 富海海岸の砂のもとである花崗岩は、大きな鉱物で構成されています。例えると、米つぶが集まったおにぎりのような岩石です。もろくて崩れやすいため、どんどん細かくなっていきます。一方、青海島の砂のもととなったデイサイトという岩石は、とても小さな鉱物で構成されています。例えるなら、きめの細かいお餅のようなものです。デイサイトは崩れにくく、時々割れて、擦られることで小さくなっていくため、比較的大きな砂つぶとなるのです。
 では、どうして粗い鉱物でできた岩石と、きめ細かい鉱物でできた岩石があるのでしょうか? 大和田さんによると、マグマから岩石ができるときの冷えて固まるスピードに関係があるそうです。花崗岩のように地下の深いところでゆっくりと冷えて固まると、鉱物が時間をかけて成長することができるため、大きな鉱物で構成された岩石になります。一方、デイサイトは地表の浅いところで、マグマが急速に冷えて固まるため、鉱物が大きく成長することができずに、きめの細かい岩石となります。サラサラの砂浜とゴロゴロの砂浜の違いは、岩石の誕生までさかのぼることでわかるのですね。


富海海岸の白くてサラサラの砂(上)と、青海島の黒くてゴロゴロの砂(下)

世界のカラフルビーチ

 今回は、山口県内の砂浜を例に説明しましたが、世界にはもっと変わった色をした砂浜があります。アメリカ合衆国のハワイ島には緑色や赤色の砂浜があるそうです。これらも砂になる前の岩石の色が関係しています。
 みなさんも夏休みに浜辺を訪れた際には、砂の色や大きさからその生い立ちを想像してみると面白いかもしれません。ぜひ夏休みに調べてみてはいかがでしょうか。


取材協力:山口大学理学部 大和田 正明 教授
写真提供:白い砂浜/ 防府市おもてなし観光課、黒い砂浜/ 長門市観光政策課

 

青空に白いライン―ひこうき雲、見つけた!―

青空を見上げると、きらりと光る飛行機の機体。その後ろに白く細い線状の雲がのびています。

ひこうき雲はどうしてできるの?

 飛行機が通り過ぎたあとにできる人工的な雲のことを「ひこうき雲」といいます。
 ひこうき雲はエンジンから出る排気ガスのけむりではありません。自然現象の雲ではありませんが、水てきや小さな氷のつぶが集まってできる、れっきとした雲の仲間です。
 飛行機が飛ぶときにエンジンから出る排気ガスには水蒸気がたくさん含まれています。空の高いところを飛んでいる飛行機から出る水蒸気は、周りの冷たい空気にふれて急に冷やされると小さな氷のつぶになります。この氷のつぶの集まりが地上から見ると白い雲に見えるのです。
 山口県の上空にはたくさんの飛行機が飛んでいます。空を見上げると、ひこうき雲を見つけることができるかもしれません。

ひこうき雲で天気予報

 山口大学教育学部教授の重松宏武さんは、「上空を飛ぶ飛行機を見つけたら、ひこうき雲の様子にも注目してみてください」と話します。ひこうき雲は、できてすぐに消えるときと長く残っているときがあります。
 上空の気温がとても低く、しめった空気が流れ込んでいるときには、ひこうき雲は成長しやすく、なかなか消えないので、雨が近づいているサインです。一方、上空の空気が乾いているときは、氷のつぶがどんどん蒸発してしまうので、ひこうき雲はすぐに消えてしまいます。これは、晴れが続くことを意味しています。
 ひこうき雲を見れば、「あした天気にな~れ!」と、くつを飛ばす天気占いより、はるかに当たる天気予報ができそうです。
 今日のひこうき雲がすぐ消えたら、明日も晴れかもしれませんね。


取材協力:山口大学教育学部 重松 宏武 教授

 

金属のビタミン剤!?レアメタルって何?

「レアメタル」は日本語で「希少金属」とよばれる金属です。
レアメタルがなければ、自動車もテレビも携帯電話も今のような形には進化していなかったでしょう。

YU-PRSS 山口大学広報学生スタッフ 山内 彩華

私たちの生活を支えるレアメタル

 現在、レアメタルに指定されているのは31種類の元素です。地球上に存在する量が少ない上に、特定の地域でしか採掘できなかったり、純粋な金属にするのにたくさんのお金がかかったりするため、とても希少とされています。
 レアメタルは、電気や熱を通しやすく、特別な磁力を持っています。山口大学工学部教授の新苗正和さんは、「レアメタルは、ほかの金属に加えることで、もともとの金属の働きをさらに良くする、人間にとってのビタミン剤のような存在です」と語ります。
 レアメタルは、テレビやデジタルカメラ、スマートフォンなど、私たちの身近なものに使われています。スマートフォンの中には、「ネオジム磁石」というレアメタルを使った磁力が非常に強い磁石が入っています。このネオジム磁石によって、スピーカーや振動モーターを小さくすることができたので、昔は肩から下げないと持ち運べないくらい大きかった携帯電話が、現在のように薄くてコンパクトな形になったのです。

取りだせレアメタル!進め再利用

 レアメタルは私たちの生活になくてはならない金属です。しかし、便利なだけではなくデメリットもあります。一つは、供給の不安定さです。レアメタルの中には、特定の国でしか採掘できないものがあり、国同士の関係の悪化などにより、輸入できなくなってしまうことがあります。もう一つは、環境破壊です。レアメタルは周りの岩石と一緒に採掘されるため、手に入れたいレアメタルの量以上に環境を破壊してしまうのです。例えば、モバイルバッテリーなどに使われる「リチウム」というレアメタルを1トン手に入れるためには、1,500トン分の岩石を破壊してしまうことになります。
 このようなデメリットを解消するためにレアメタルのリサイクルが進められています。総合支所などの施設の中に携帯電話等小型家電の回収ボックスが設置されているので、使わなくなった携帯電話がある人はぜひ持って行ってみてください。


取材協力:山口大学工学部 新苗 正和 教授
写真提供:防府市青少年科学館 ソラール

 

酸っぱいレモンは酸性?アルカリ性?

酸っぱいレモンや梅干しは酸性ですが、アルカリ性食品です。
一体どういうことでしょう? 

酸性食品とアルカリ性食品

 酸性の水溶液はリトマス紙を赤くする。アルカリ性は青くする。理科の授業でそう習いましたよね。
 レモンを例にあげてみましょう。レモンに多く含まれるクエン酸は、酸っぱい味の成分です。リトマス紙にレモンの汁をたらすと酸性の赤色を示すため、レモン自体は明らかに酸性です。
 それとは別に、食品の分類法の一つに、酸性食品、アルカリ性食品という分け方があります。
なんとなく酸っぱい食品は、酸性食品とイメージしたくなりますよね。しかし、この分け方では酸っぱいレモンは、酸性食品ではなくアルカリ性食品に分類されます。酸っぱいからといって、酸性食品ではないのです。
 酸性食品かアルカリ性食品かを決めるのは、食品そのものではなく、体内で燃焼し、吸収された後の性質によります。レモンは、体内で燃焼されるとアルカリ性として作用するため、レモンはアルカリ性食品に分類されるのです。

バランスの良い食事で健康に

 私たちの体は、弱アルカリ性に保たれているのが健康な状態とされています。山口大学教育学部准教授の森永八江さんは、肉や魚、米、パンなどの食品は酸性食品に分類されます。酸性食品を食べると体が酸性に傾くと心配されるかもしれませんが、私たちの体には恒常性(こうじょうせい)という機能があり、酸性やアルカリ性の度合いを常に一定にしてくれているので心配はいりません」と語ります。
 アルカリ性食品に分類される野菜や果物には、私たちの健康を整えてくれる栄養がたくさん含まれているそうです。バランスの良い食事を取って、暑い夏を乗り切りましょう!

自宅でレモンスカッシュづくり

 酸っぱいレモンや梅干しなどに含まれるクエン酸は、疲労回復に役立ち、夏バテの予防や解消につながるといわれています。ドリンクだけでなく、輪切りレモンの砂糖やはちみつ漬けを作っておくのもおすすめです。

【作り方】
レモンを絞って、お好みでシロップやはちみつを加える。炭酸水を注いで完成!

【ポイント】
レモンは手で押さえて軽く転がしてから絞るとよく絞れます。斜め十文字に切ると、果肉の袋が全て切れるので汁がたっぷり絞れます。




取材協力:山口大学教育学部 森永 八江 准教授

ヤマミィ4コマ『夏の過ごし方』


企画・制作:YU-PRSS 山口大学広報学生スタッフ
江藤 由喜、清水 聡乃、三阪 明日香、三澤 朱里

Academi-Q 12号で募集したユニークな単位が集まりました

※Academi-Q 12号の記事「単位の始まり」はこちらから。

あなたのご意見・ご感想

Academi-Q のwebページにご意見ご感想等をお寄せください。
https://www.yamaguchi-u.ac.jp/info/academi-q/index.html
※皆さまからお寄せいただいたご意見等は、誌面で紹介させていただく場合があります。 あらかじめご了承ください。

 

YU-PRSS 広報学生スタッフ紹介

編集後記

 運動会、文化祭、修学旅行など楽しいイベントが少しずつ戻ってきました。部活や大会も再開されてきました。コロナ問題に終わりが近づいていると期待しています。
 私たちは、みんないろいろな事を失ったり、我慢したりしながら過ごしてきました。しかしこの体験も、そのうち昔話になってしまうでしょう。話題にも上がらなくなり、パンデミックを知らない世代が大きくなり、コロナ問題があった事すら忘れ去られる日が来るかもしれません。
 そんな未来のある日、新しい別の感染症が社会を襲うかもしれません。社会は大きく動揺するでしょう。しかし 私たちは何をすべきか知っています。この体験を忘れませんから。このコロナを体験した私たち自身が社会の中における、いわばワクチンになるのだと思います。


発行人 山口大学長 谷澤 幸生 / 編集長 山口大学教授 坂口 有人
デザイン・企画 株式会社無限 / 発行 山口大学総務企画部総務課広報室
〒753-8511 山口市吉田1677-1
TEL: 083-933-5007 FAX: 083-933-5013
E-MAIL: yu-info@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)

総発行部数160,000部 / 山口県内の教育委員会・学校等を通じて、児童、生徒、保護者、先生方に配布します。次回2022年12月発行予定。

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