国立大学法人 山口大学

本学への寄付

世界初!タンパク質修復のための遺伝子誘導メカニズムを解明
~神経変性疾患やがんの治療法開発に期待~

 

 わたしたちは加齢とともに様々な病気に罹患しやすくなります。細胞レベルでも、加齢は細胞機能の低下を導き、多様な異常に適応できなくなります。細胞内の構成成分のうち最も多いタンパク質は、加齢とともに異常な立体構造を持つタンパク質が蓄積するようになり、アルツハイマー病などの神経変性疾患を罹患しやすくなります。
 この度、山口大学大学院医学系研究科医化学講座の中井彰教授、瀧井良祐助教らを中心とした研究グループが、細胞内の異常タンパク質を修復するための遺伝子誘導メカニズムを世界で初めて発見しました。さらに、熱ショック転写因子1(HSF1)とシュゴシン2(SGO2)の複合体が形成できない条件下では、異常タンパク質の蓄積の亢進とそれによる細胞死の増加が引き起こされました。この複合体の発見は、加齢と関連する神経変性疾患などの治療薬の開発に結びつく可能性があります。

 本研究成果は、分子生物学領域で権威あるヨーロッパの科学雑誌『EMBO Journal』の電子版に10月28日掲載されました。

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  • (1)HSF1転写複合体の同定
  • (2)染色体DNAとシュゴシンの役割
(1)HSF1転写複合体の同定

(A)HSF1転写複合体に含まれる構成因子群を明らかにするために、HSF1欠損マウス線維芽細胞 (MEF)に、数種の変異型HSF1を高発現した細胞を用意し、その細胞に42度 30分の熱処理を加えた後に細胞抽出液を用意し、ヒトHSP70プロモーターDNAに結合するタンパク質群を網羅的に解析した。 (B)その結果、全体で1,870の因子群が同定でき、HSF1の活性と関係があったのは179因子であった。

(2)染色体DNAとシュゴシンの役割

複製された染色体DNAは分裂期に均等に娘細胞に分配される。その過程において、シュゴシンはセントロメアでのコヒーシンの分解を抑制する。哺乳動物では、細胞分裂のM期にシュゴシン1(Shugoshin1 : SGO1)が、生殖細胞での減数分裂期にシュゴシン2(Shugoshin2 : SGO2)がコヒーシンの制御因子として働くと知られている。 (Marston AL, Mol. Cell. Biol. 2015 を改変)

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