国立大学法人 山口大学

本学への寄付

犬のがんに対する免疫チェックポイント分子阻害抗体医薬(抗PD-1犬化抗体)の適応拡大が期待~犬の扁平上皮癌と未分化肉腫に治療が奏効した初報告~

 

 山口大学共同獣医学部の水野拓也教授・伊賀瀬雅也助教の研究グループは、日本全薬工業株式会社と共同で、犬の悪性腫瘍に対する抗犬PD-1犬化抗体薬ca-4F12-E6を開発し、2020年10月に犬の口腔内メラノーマ症例に対する有効性を示す臨床試験結果を米国科学誌Scientific Reportsに報告しました。(https://www.yamaguchi-u.ac.jp/weekly/20091/index.html)しかし、そのほかの腫瘍に対する治療効果は不明であったため、今回組入れ腫瘍種を拡大し、動物医療センターにて臨床試験を実施しました。本臨床試験には、ほかの治療法が適応にならないほど進行した悪性腫瘍に罹患した犬38例が組み入れられ、そのうち安全性と治療効果が評価可能であった37例について解析を実施しました。その結果、扁平上皮癌と未分化肉腫の犬それぞれ1例で完全奏効が認められました。また、肺癌の症例においても一部の腫瘍の縮小効果が認められており、口腔内メラノーマ以外の犬の腫瘍においても本抗体が新たな治療オプションとなることが期待されます。
 本研究成果は、2024年1月11日に、韓国獣医学雑誌Journal of Veterinary Scienceに早期公開されました。

研究の詳細はこちら

 

発表のポイント

  • 山口大学共同獣医学部では、日本全薬工業株式会社とともに抗犬PD-1モノクローナル抗体ca-4F12-E6を開発し、犬のさまざまな腫瘍に対して獣医師主導臨床試験を実施中であり、今回、口腔内メラノーマ以外の腫瘍に対する治療効果を世界で初めて報告しました。
  • 本臨床試験により、扁平上皮癌と未分化肉腫の症例において治療効果が認められました。また、肺癌や尿路上皮癌の症例においても免疫チェックポイント阻害薬に特徴的な治療効果が認められており、これらの腫瘍は新たに抗犬PD-1モノクローナル抗体の治療対象になることが期待されます。

図1 抗犬PD-1抗体を投与した犬18例における腫瘍の大きさの最大変化量
X軸の番号は症例番号を表す

 

図2 治療効果の代表症例
治療前と比較して治療開始後に症例6および症例14のどちらも腫瘍が退縮した。

 

論文情報

  • タイトル:“Proof-of-concept study of the caninized anti-canine programmed death 1 antibody in dogs with advanced non-oral malignant melanoma solid tumors”
  • 著者名:Masaya Igase, Sakuya Inanaga, Shoma Nishibori, Kazuhito Itamoto, Hiroshi Sunahara, Yuki Nemoto, Kenji Tani, Hiro Horikirizono, Munekazu Nakaichi, Kenji Baba, Satoshi Kambayashi, Masaru Okuda, Yusuke Sakai, Masashi Sakurai, Masahiro Kato, Toshihiro Tsukui, Takuya Mizuno.
  • 掲載紙:Journal of Veterinary Science
  • 公表日:2024年1月11日(オンライン公開)
  • DOI:doi.org/10.4142/jvs.23144
TOP