特別セミナーを開催しました
2024年度 山口大学 中高温微生物研究センター
ー中高温微生物を活用するSDGs人材育成のための国際的な研究拠点形成ー
特別セミナー
【日時】 令和6年6月28日(金) 16:00~17:00
【場所】 山口大学 中高温微生物研究センター コホート室
【参加費】 無料
【申込】 不要
加藤創一郎(産業技術総合研究所)
「光合成に依存しないバイオCO2資源化プロセスの構築に向けて」
現在のバイオ物質生産は、植物(現在はほぼ栽培作物)が光合成によりCO2から合成した有機物を原料としている。私たちは電力そのもの、あるいは電力をエネルギー源として非生物的に高速合成可能な化合物(水素、有機酸・アルコール、糖など)を微生物に供給することで、光合成に依存しない、さらには光合成よりも効率の良いバイオ物質生産プロセスの構築を目指している。
上野嘉之(株式会社アルケミックラボ)
「高温メタン発酵の菌叢とバイオリアクター」
メタン発酵反応を利用した有機性廃棄物のバイオガス化技術について、基本的な知見を説明するとともに、高温メタン発酵バイオリアクターに特徴的な菌叢について解析結果を紹介する。また、バイオリアクターの設計など、技術の社会実装に向けた工学的なアプローチについて紹介する。
加藤創一郎(産業技術総合研究所)
「伝統的藍染め発酵に関わる微生物」
藍染めは日本人にはなじみ深い伝統的な染色技術であるが、そこで微生物が活躍していることはほぼ知られていない。微生物が医療(抗生物質生産)、食品(発酵食品)、環境(環境浄化、廃水処理)などの分野で活躍することはよく知られるようになってきたが、藍染め発酵に関わる微生物はファッション・アートの分野とバイオ技術の融合可能性を秘めた新しいトピックになると私たちは期待している。
【問合先】
藥師寿治 Tel:083-933-5858,E-mail:juji@yamaguchi-u.ac.jp
開催報告
2024年6月28日(金)に、山口大学中高温微生物研究センター・コホート室にて、産業技術総合研究所の加藤創一郎博士と(株)アルテミックラボの上野嘉之博士をお招きして,特別セミナーを開催しました。

加藤博士からは「光合成に依存しないバイオCO2資源化プロセスの構築に向けて」と「伝統的藍染め発酵に関わる微生物」という2つのご講演をいただきました。
サステナブルだと思っていることが実はサステナブルではない,から始まり,二酸化炭素をいかにして資源化するのか。化学と生物の両輪で克服していくというお話でした。
発酵と言えば,食品のイメージが強いですが,藍染料づくりにも発酵は欠かせません。人類が古くから利用している発酵プロセスですが,関与する微生物は案外知られていないとのことです。
まだまだ私たちが知らない微生物やプロセスが関わっていそうです。

上野博士からは「高温メタン発酵の菌叢とバイオリアクター」と題したご講演をいただきました。
排水処理技術の主要な部分を担うメタン発酵ですが,菌叢解析から見えたアーキアのニッチやバクテリアとの棲み分けは,複合微生物系ならではの興味深いお話でした。扱う量が桁違いに大きいこともあり,いかに安定で堅牢(丈夫)な仕組みに仕上げるのか,微生物学だけでなく,流体科学などの様々な科学分野の知の結晶です。
実機で年単位で安定に運転できると伺ったときは,まさに「新プロジェクトX」の世界,頭の中で「地上の星」がリフレインしていました。
セミナーにはオンサイトで学生、教員を含むセンターの内外21名の参加,オンラインでは32名の参加があり,活発な研究交流の機会となりました。
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